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第5章 本当の気持ち
第8話
しおりを挟む「どんなにムカつく相手でも、こんなことするなんて、同じ京の女として恥ずかしいわよ!」
「何よ、おまさだって、生糸の買い占め、酷いって言っていたじゃない」
「そうよ、そうよ」
「ごちゃごちゃ煩いわね、それとこれとは別よ!」
言い訳の様に共犯者の名前を着せようとする5人組に、はっきりと喝を入れたその女の子は、胸を張って言葉を落とす。
「この菅原まさ、そんな陰湿な事は絶対にしない。裏でコソコソなんて、見苦しいのよ!!」
物陰から見守る傍観者にしかなれない私は、その台詞を吐いた菅原まさちゃんを、すごく格好良くて、ステキな人だと思った。
けれど、5人組は図星をさされ面白くなかったらしく、一人が桶を持ち上げた。
刹那。
「きゃ……っ!」
桶から零れ出る、生ごみが宙を舞う。けれど、それは狙った彼女にはかからずに。
「くっせぇなぁ、このゴミ」
瞬時に移動した左之さんの左腕にぶつかって地面に自由落下していた。
「えっ、……?」
きょとん顔の5人組とおまさちゃん、そして私。あの人はいつの間に移動したのだろうか。
今更出て行くわけにもいかない私は、ただボケっと塀の影に隠れていた。
「大丈夫か?」
そう言って振り返る左之さんに、おまさちゃんは腰が抜けたようにへたりとしゃがみ込む。
「ミブロよっ」
「嫌っ、近寄らないで!」
そう言って距離をとる女の子たちに、はぁ、とひとつ溜息を零した左之さんは、左手のゴミを払い落としながら、こう言った。
「あのなぁ、別に俺らの事を壬生狼とか呼ぶのはいいんだけどよ、腹いせにか分からんけど、生ゴミぶちまける女は、もてねぇぞ」
「う、うるさい、ミブロの癖に……、」
一人の女の子が左之さんを壬生狼、と罵ったその時。
「黙りなさい!」
「っ」
座り込んだまま、じっと5人を睨みつけて、おまさちゃんが一喝。
「生ゴミを人にかけようとする人よりは、壬生浪士組の人の方がずっと素敵だわ!」
その視線は凄い迫力で、武士ですら射殺せそうなほど強く凛としていた。
「……っ、い、行こ……っ!」
バタバタと5人組は真っ赤な顔をして、へたりと座り込んだおまさちゃんと、生ごみを払う左之さんの横をすり抜けるように走っていってしまった。
驚きで座ったまま固まっていたおまさちゃんは、ハッとしたように顔を上げて、背の高い左之さんを見上げる。
「あっ、あのっ」
「ん?」
「助けてもらって、ありがとうございました。折角助けてくれたのに、嫌な言葉をかけられてしまって、ごめんなさい、あの子たちも悪気があるわけじゃないの」
「いや、別に……、それよか、立てるか?」
あれ……いつもの左之さんと雰囲気が違う……?
いつもなら女と名の付く生物には全力でマシンガントークをかます左之さんだけれども、今日はなんだか歯切れが悪い。
右腕を貸しておまさちゃんを立たせる左之さんを、首を傾げてじっと見ていれば、ちょいちょい、とその手で手招きされた。
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