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第八章 新大陸でEになる!

第十三話 私達は明らかに無謀な戦いを挑んだんですよね…

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戦闘態勢とは言っても…。
こっちには装備品が欠けているのがつらい。
 特に火力ではパーティで一番のリジーの装備品がほとんど無いのがツラい。
 前衛にとってこれは致命的だ。

 「今回は役割を変えるわよ。前衛は私とリル、エイミアはバックアップに専念して。リジーは遊撃」

こんなもんだろうな。

 「…遊撃?」

 「隙を突いて斬り込むの。そして離脱…これの繰り返しで」

…本来なら私みたいなタイプが担当するんだけどね。今回は仕方ない。

 「ん…わかった」

 「リル、エイミア!迷宮喰らいダンジョンイーターを捕捉したら強力なヤツお見舞いしてやって!」

 「おーけーだ!」

 「わかりました!」

よし!準備万端!

 「みんな!生きて脱出するわよ!温泉が私達を待ってるわ!」

 「「おー!」」
 「…おー」


 「…このあたりです」

エイミアが止まる。

 「ここから約50mほど進んだ先の天井に強い静電気を感じます。丸い玉みたいなのがぶら下がってる感じです」

 目を凝らして見てみると…なぜか景色が歪んで見える。
…たぶん光学迷彩ね。

 「リル。エイミアが言ってる付近が妙に歪んでるのわかる?」

 「ああ…違和感ありありだな」

 「狙える?」

 「…うーん…当てられるが…ダメージを与えられるかは微妙だな」

 「やっぱりそうよね…ある程度大きいモノを射ち出せれば…」

バズーカとかがあればなあ…。

 「私のせいでんきは通じないでしょうか?」

 「…何とも言えないわね…何も効果がないばかりか相手に気づかれちゃ目も当てられないし」

せめて矢に電気を纏わせて射つ…とかできればなあ…。
 試してみてもいいけど高確率でリルが焦げて終わるわね。

 「…なんだよサーチ…」

…リルも意外と鋭いわね…。
まあ、一応聞いてみよ。

 「ムリだとは思うけどさ、リルの矢にエイミアの静電気を纏わせられないかなー…と思って」

 「どう考えても私が焦げて終わるだろ!」

 同意見だったー!

 「私もそんな細かいコントロールできる自信ありません」

 自覚もあったー!
つまり、手詰まりか。

 「サーチ姉、エイミア姉が何か武器にせいでんき?を纏わせて投げればよくない?」

リジーの提案も不可能。

 「言っとくけどね、エイミアは投げたモノが後ろへ飛んでいくような子よ?」

 「…エイミア姉すごい。真似できない」

 私も理解不能だったわよ。スプーンを投げてって頼んだら後ろにいたリルのスープにホールインワンしたんだから。

 「じゃあエイミア姉が直接飛んでいけば?」

あんたムチャクチャ言うわね! 
…ん?

 「リジーなら…いけるかな?」

 「…え?」

エイミアがすごくイヤそうな顔をした。


 「イヤです!離して!助けて!きゃーきゃーきゃー!」

 「エイミアうるさい!…リジーは大丈夫?」

 「無問題」

 「エイミアは」

 「問題ありまくりです!」

よし、サクッと無視。

 「リジー!教えたとおりにね」

 「おけ」

 「おーけーだよ!」

 何もやることがないリルのつっこみが冴え渡る。

 「じゃあ行きます」

リジーがエイミアの足を掴む。

 「やめてえええ!」

ロープでぐるぐる巻きにされたエイミアには為す術がない。

ぶんっ

「いやーーー!!!」

リジーが回転を始めた。

ぶんぶんぶんっ

「きいああああああああ!!!」

 「おい、今さらだけど大丈夫なのか?」

 「大丈夫よ。エイミアがちゃんと言ったことをしてくれれば…ね」

 一応私がフォローするし。

ぶーーーーんっ! 

 「いやああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁ…」

そろそろかな。

 「やっちゃえリジー!」

 「そーれぃ!」

ぎゅんっ!

 「ああああああああぁぁぁぁぁぁ……」

 「エイミア!≪雷壁の鎧≫サンダーブロックよ!!」

…バチ!バチバチ!

 間に合った!
 静電気を纏ったエイミアが迷宮喰らいダンジョンイーターの結界に直撃する!

ずどおおおおんっ!

クリーーンヒッット!

 「ナイスコントロールよリジー!」

 私はすぐに砂煙の中に突入する。
 半分目を回したエイミアを見つけてかっさらう。

バリバリ!

 「あだだだだ!!」

まだ静電気が残ってるのね~!痛い痛い!
そのまま引き摺って戦線離脱!

 「はあはあ…エイミア大丈夫?」

 「はみゃ~…回る回るぐるぐるぐる…」

…大丈夫みたいね。

 「リル!姿が見えたら迷宮喰らいダンジョンイーターに一発ぶち込んで!」

 「もう準備してる…!」

リルは弦を右足で踏んで右手で引っ張りあげる。
 限界まで張った弦に矢をつがえる。
やがて砂煙が霧散していき…黒い影が現れる!

 「≪身体弓術≫の強化版…≪全身弓術≫をくらいやがれ!」

ずぎゅんっ!

まるで銃で撃ったかのような音を響かせて矢が放たれた。
 真っ直ぐに矢は影に吸い込まれ…。

ギュイイイイイッッ!!

 何かが苦痛の悲鳴をあげた!
 命中!

 「リルもナイス!」

 「ないす…か。後で教えろよ!」

わかったわかった。

 「さあ!一気にたたみ込むわよ!」

 「よし!いくぜ!」

 磁石にはくっつかない銅でリングブレードを作りだす。
リルはいつものフィンガーリングを握る。
そのまま迷宮喰らいダンジョンイーターに攻撃を…。

ぶうんっ!

めこっ!
バキバキッ!

 「かはあっ!」


ロープをほどきながら起き上がると。

 「かはあっ!」

…触手みたいなものに脇腹を叩かれて吹き飛ぶサーチが目に入った。
そのままサーチは地面に叩きつけられる。

 「うぐ…ごほっ!」

 脇腹を抑えながらサーチは血を吐いた。

 「い、いやあああああ!」

 「サーチ!!く、クソ!」

リルはすぐにサーチのカバーにまわる…。

 「リル!前!」

 「え…きゃああ!」

 今度はリルを襲った。
ガードはしてたみたいだけどリルはそのまま壁に激しく衝突し。
…動かなくなった。

 「…リルゥゥゥゥゥ!」

 私の叫び声だけが虚しく響く。
 黒剣を握ったリジーが斬りかかろうとするけど…もう一本の触手に邪魔されてサーチやリルのところへたどり着けない。

 「く…ぐふ…」

その間にサーチが立ち上がり、歩きだすが。

 「…!…うぐっ」

 大怪我をしたサーチは逃げることもできずに触手に捕まる。
そして。

 「ぐああ!ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

めきめき…バキバキ…

サーチを触手が絞めあげる。私のところまでサーチの骨が折れる音が聞こえてきた。

 「やめて!やめてええええええ!!!」

 私の叫び声など全く無視してサーチを更に絞める。

 「うぐぅぅぅっ!!ぐああああああ!!!」

やめて!やめて!
サーチが…サーチが死んじゃう…!

 「うぐあ!ぅあああああああああ!」

サーチが…!サーチが…!

 「やめて…」

 私が…!

 「やめなさい…」

 私…が…! 

 「やめなさいって言ってるでしょう!!」

勇者わたしがサーチを助ける! 

その時。
サーチの魔法の袋マジックバッグから何かが飛び出して。

キィン!キンキンキィィン!

ザシュ!ザン!ザザザン!

サーチを捕えていた触手を細切れにする。

 「サーチ!」

 普段の私では考えられないスピードで走りだし。

がしっ 

落下してきたサーチを抱き止める。
そして素早く離れた。

 「サーチ!大丈夫!?サーチ!」

 「う……エイ…ミア?」

 良かった!生きてる。

 「ちょっと待ってて…≪修復≫リペア

 私の回復魔術・・・・がサーチの傷を癒す。

 「ぐ!…う…あ、あれ?痛みが…?」

 「これで命の危機は去ったわ。だけど完全には回復してないから…サーチはリルをお願い」

 「え?…エイミア…?」

 私は飛んできた“知識の聖剣”アカデミアを手にする。

 「…あとは任せて」

 私は。
 許さない。
仲間みんなを傷つけたコイツを。

 「さあ…私が相手よ」

…聖剣が再び空を駆ける。

 「勇者わたしを怒らせた罪は重いわよ!」
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