それは、恋ではなく

藍田ひびき

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番外編 愚かな王子の末路 side.ヴィジリオ

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 庭園から高らかな笑い声が聞こえ、ヴィジリオは小さな窓から顔を出した。

 目に入ったのは数人の男性と共に散策しているシェバト女王の姿。その手を取っているのは、最近彼女がお気に入りの側室だ。
 見目が良い上に美しい声を持つ彼は、夜ごとその唄で女王を楽しませているらしい。

 ヴィジリオがシェバト女王の側へ呼ばれることはない。だからこうやって、後宮の隅で日がな一日ぼんやりと過ごしている。
 
 嫁いだばかりのときは、数回閨へ呼ばれたこともあった。か正直不安だったが。女王は40代にしては若々しい美貌の持ち主で、ヴィジリオは何とか閨事を済ませることが出来た。
 しかしすぐに新しい側室が嫁いできて、女王はヴィジリオへの興味を失ったのだ。

 納得がいかなかった。自分はサアラムの高貴な血を引く男だ。
 それがこんな後宮の隅の、小さな部屋に押し込められるなんて。服はレラベールにいた頃はとは比べ物にならないくらい粗末だし、側仕えは二人だけ。
 
 ヴィジリオは知らなかったが、古くからいる側室でいまだに女王の寵愛を受けている者もいるのだ。
 彼らは皆、一芸に秀でている。武術や舞踊、絵画や詩……女王は才ある者を好む。
 王子と聞いて期待していたものの、何の特技も無いヴィジリオが見放されただけ。

 一度だけ、耐え切れなくなってこっそりアンジェリカへ手紙を出そうとした。
 助けて欲しいと書いたわけではない。ただ昔が懐かしくて寂しくて、その気持ちをしたためただけ。

 しかし、その後すぐにヴィジリオは女王の元へ引っ立てられた。

わらわは不忠者は要らぬ。そなたは側室から側仕えに格下げとする」

 あの手紙は女王の手元へ届けられていたのだ。
 後宮に入った人間が許可も無く外へ手紙を出せるわけがない。検閲されて当然。そんな事すら、彼は分かっていなかった。

 
 ヴィジリオは年若い側室の側仕えにさせられた。
 今までずっと他者に世話をされてきた彼にはキツい仕事だ。
 自分より年下の者に「この役立たず!」と怒鳴られ蔑まれられ、時には暴力を振るわれる日々。

「何でこうなったんだろう……。俺はアンジェリカと共にいられれば、それで良かったのに」
 
 この愚かな王子に、その答えが分かる日は来ない。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

クレサ
2026.01.05 クレサ

あらまあ、この王子は一緒に勉強していただろうに、王配の仕事を理解してなかったのかな。
側近たちが、まあ、悪いよね。1回目で渋々許されたのに反省しないのは、猿。

とてもおもしろかったです。



2026.01.05 藍田ひびき

ご感想ありがとうございます!

王配ならば嫁ぎ先の文化くらいは理解しておくべきでしたが、
王子は素直な子だったので頭の固い側近たちに毒されてしまいました。
彼がアンジェリカに恋をしていたのは本当なので、ちょっと可哀想ではありますね…。

解除

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