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2. 辛いだけの結婚生活
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「政略結婚なのだから最初はうまく行かないこともある。長い間共に過ごすうちに、信頼と愛情が芽生えるものだ。妻として誠心誠意リオンを支えれば、いずれ仲も深まるさ。どのみちリーヴィス公爵の娘であるお前をないがしろにすることなど出来ないのだから」
父はこうなることを予想していたようだった。聡い父は、彼の本意などとっくに見抜いていたらしい。
ヘイワード伯爵領には鉱山があり、そこから産出される鉱石やそれを使用した武具や機材が主な財源だ。
実家のリーヴィス公爵家が手がける事業のひとつに転移魔法を使った運輸事業があり、王国中に張り巡らせた輸送網を持っている。それを利用できるのはリーヴィス公爵家と提携した貴族や商家のみ。そしてヘイワード伯爵家は公爵家の縁戚として、輸送料を大幅に減額されていた。
輸送料が安ければ、その分は商品の品質向上に力を入れられる。さらにリーヴィス公爵家の伝手で取引先が増え、ヘイワード家の事業はどんどん拡大した。
ヘイワード伯爵家からすれば、私は金の成る木だ。
それをよく理解している義両親は私に気を遣い、リオンの態度を叱った。だが夫は変わらない。むしろ、より意固地になっていった。
大嫌いな女の実家の恩恵を受けているという事実が、気に食わなかったのかもしれない。
私は常に彼の意に沿うように、彼を怒らせないように気を遣った。それが父の言う通り、夫婦仲を改善できる道だと信じて。
伯爵家の侍従や使用人に聞いて、彼の好みに合う女性へなろうとした事もある。髪型を変え、服も淡い色合いのものに変え落ち着いて見えるように。人気デザイナーに頼み込んで彼へ最高級のスーツをしつらえたり、リオン好みのお茶や煙草を他国から取り寄せたりもした。だがどんな努力も、夫は「無駄なことを」と鼻で笑うだけだった。
夜会に夫婦で出席する事もあるが、共にいる時間はほとんどない。リオンは入り口まで私をエスコートすると、すぐに離れていってしまうのだ。当然、私たちの不仲は社交界中に知れ渡ることになった。
既婚者となっても彼は女性に人気がある。妻との隙間に入り込もうする女たちに、リオンはいつも囲まれていた。
父の力を使えば、彼女たちなど家ごと潰すことも可能だったろう。だが私はそうしなかった。そんなことをしたら、またリオンに軽蔑されてしまうからだ。それが余計に女たちを、そして夫を増長させたのだと思う。
ある夜会で、リオンを取り巻く女の一人が夫の浮気を暴露した。勿論親切心ではない。彼女たニヤニヤと笑いながら「リオン様の今のお相手はファロン伯爵夫人ですわ。やはりお相手が公女様では、リオン様も委縮なさって満足できないのかしら」と言ってきたからだ。
「浮気をなさっているというのは本当ですの!?」
帰宅した後、私はリオンを問い詰めた。向けられたのは夫の冷めた瞳。
「だから何だ?」
「それは妻に対する重大な侮辱です!」
「妻を愛せないのだから、外で調達するのは当然だろう。俺に期待するなと言ったはずだぞ」
わなわなと震える私に、リオンは事も無げにそう答えた。
その後も彼は浮気を続けた。何度も口論になり、飛び出して実家へ戻ったこともある。だけど両親は私を諫めた。
「お前が彼と結婚すると言い張ったんだろう。そのくらい、我慢できなくてどうする」
「ちょっとした浮気でしょ。貴方は正妻なのだから、どっしり構えていればいいのよ。子供が出来れば彼も変わるわ」
子供は出来なかった。閨事は月に一回、義務的に行われるだけ。それで授かるわけがないだろう。しかも夫は「子供が出来ないのは妻のせい」と口外していたらしい。
こんなに夫を愛しているのに。どれだけ手を伸ばしても、彼は応えてくれない。
私の心は少しずつ少しずつ、疲弊していった。
そうして10年近くが経過した頃、私と夫の仲を決定的に決裂させる出来事が起きた。
グレンダ・エアリー元子爵令嬢が戻ってきたのである。
彼女の夫が病で亡くなり、前妻の息子が跡を継いだ。グレンダは継子と折り合いが悪く、籍を抜かれ実家に戻ってきたそうだ。
再会したグレンダとリオンはあっという間に恋仲となった。その仲睦まじさは人々の噂に上るほどだ。ひと目もはばからず、身体を寄せ合う姿を度々目撃されていたらしい。
今までのリオンは、一人の女性に長期間入れ込むことはなかった。遊びなのだと私も必死で割り切ろうとした。だけど今の夫は――明らかにグレンダへ入れ込んでいる。
浮気には目を瞑るからせめてもう少し控えてくれと頼み込んだが、無駄だった。このまま続けるようなら離縁すると脅しをかけるも、夫は「お前が離縁なんて出来るわけがない」と相手にしない。
悔しいけれど確かにその通りだった。そのときの私は、まだ彼を愛していたのだから。
「おや、ヘイワード伯爵夫人。伯爵はご一緒ではないのですかな?」
アルドリッジ侯爵家で開かれたパーティに参加していた私は、侯爵に声を掛けられた。夫はいつも通り、私を放置してどこかに行ってしまっている。
「え……ええ。友人と話し込んでいる様子でしたので」
「そうですか。久しぶりにお話したかったのですがね」
「まあ、申し訳ございません。探してきますわ」
会場を探し回ってようやく見つけたリオンは、カーテンに隠れた椅子でグレンダと身体を寄せ合い囁き合っていた。嫉妬と怒りでカッとなり、私はつかつかと歩み寄る。
「リオン!主催者にご挨拶もせず、そんなところで何をなさってますの!?」
「ああ……アルドリッジ侯爵には後で挨拶しにいく。お前は向こうへ行ってろ」
いかにも鬱陶しいという顔でシッシッと手で払う仕草をするリオン。
「リオン様、貴方を探して下さった奥様に対してそのような言い方は失礼ですわ」
「優しいね、グレンダは。こいつのことは気にしなくていい。お前を隣国へ追い払った張本人なのだから」
「またそのような昔のことを……。ごめんなさいね、ナタリア様」
申し訳なさそうな顔で謝罪しているグレンダだが、その口角は愉快そうに上がっていた。頭に血が上る。
「このっ、薄汚い泥棒猫の分際で!」
気が付けば私は彼女へ掴みかかり、頬を叩いていた。リオンに突き飛ばされ、倒れ伏した私を見て二人はせせら笑う。
「夜会の場で騒ぎを起こすとは、恥ずかしいやつだ。お前のような妻を娶った俺は本当に不幸だよ」
「浮気を繰り返すのは、恥ずかしいことではないのですか!?」
「最初に宣言した通り、俺は夫としての義務は果たしている筈だ。文句を言われる筋合いはない」
グレンダと寄り添って去っていくリオンは、去り際に「明日は抱いてやるつもりだったが止めた。罰としてしばらく房事は無しだ」と言い捨てた。
『抱いてやる』という言葉に、私は茫然とする。
月に一回、淡々と済ませられる閨事は、私にとって苦痛の時間でしかなかった。
なのに彼は、それが私に対する褒美だと思っているのだ。
私の中で、何かがぷつんと切れた。
「もう、疲れたのです。貴方を愛することも。……貴方の妻でいることにも」
「勝手なことを言うな!お前のせいで、俺とグレンダがどれだけ辛い思いをしたか」
リオンは私を睨みつけながら怒鳴った。こんな時まで彼女なのね。
「それについては申し訳ないと思っているわ。だから離縁して頂戴。私がいなくなったら、好きなだけ彼女と添い遂げればいいでしょう」
「ふん。それで気を引いているつもりか?」
「そんなつもりはありません。良いじゃありませんか。これで大嫌いな女と離れられるのだから。貴方もせいせいするでしょう?」
「……後悔するなよ。後から土下座して謝ってきても許さないからな」
リオンが殴り書きのようにサインした離縁届を持って、私はその日のうちにヘイワード伯爵邸から去った。
父はこうなることを予想していたようだった。聡い父は、彼の本意などとっくに見抜いていたらしい。
ヘイワード伯爵領には鉱山があり、そこから産出される鉱石やそれを使用した武具や機材が主な財源だ。
実家のリーヴィス公爵家が手がける事業のひとつに転移魔法を使った運輸事業があり、王国中に張り巡らせた輸送網を持っている。それを利用できるのはリーヴィス公爵家と提携した貴族や商家のみ。そしてヘイワード伯爵家は公爵家の縁戚として、輸送料を大幅に減額されていた。
輸送料が安ければ、その分は商品の品質向上に力を入れられる。さらにリーヴィス公爵家の伝手で取引先が増え、ヘイワード家の事業はどんどん拡大した。
ヘイワード伯爵家からすれば、私は金の成る木だ。
それをよく理解している義両親は私に気を遣い、リオンの態度を叱った。だが夫は変わらない。むしろ、より意固地になっていった。
大嫌いな女の実家の恩恵を受けているという事実が、気に食わなかったのかもしれない。
私は常に彼の意に沿うように、彼を怒らせないように気を遣った。それが父の言う通り、夫婦仲を改善できる道だと信じて。
伯爵家の侍従や使用人に聞いて、彼の好みに合う女性へなろうとした事もある。髪型を変え、服も淡い色合いのものに変え落ち着いて見えるように。人気デザイナーに頼み込んで彼へ最高級のスーツをしつらえたり、リオン好みのお茶や煙草を他国から取り寄せたりもした。だがどんな努力も、夫は「無駄なことを」と鼻で笑うだけだった。
夜会に夫婦で出席する事もあるが、共にいる時間はほとんどない。リオンは入り口まで私をエスコートすると、すぐに離れていってしまうのだ。当然、私たちの不仲は社交界中に知れ渡ることになった。
既婚者となっても彼は女性に人気がある。妻との隙間に入り込もうする女たちに、リオンはいつも囲まれていた。
父の力を使えば、彼女たちなど家ごと潰すことも可能だったろう。だが私はそうしなかった。そんなことをしたら、またリオンに軽蔑されてしまうからだ。それが余計に女たちを、そして夫を増長させたのだと思う。
ある夜会で、リオンを取り巻く女の一人が夫の浮気を暴露した。勿論親切心ではない。彼女たニヤニヤと笑いながら「リオン様の今のお相手はファロン伯爵夫人ですわ。やはりお相手が公女様では、リオン様も委縮なさって満足できないのかしら」と言ってきたからだ。
「浮気をなさっているというのは本当ですの!?」
帰宅した後、私はリオンを問い詰めた。向けられたのは夫の冷めた瞳。
「だから何だ?」
「それは妻に対する重大な侮辱です!」
「妻を愛せないのだから、外で調達するのは当然だろう。俺に期待するなと言ったはずだぞ」
わなわなと震える私に、リオンは事も無げにそう答えた。
その後も彼は浮気を続けた。何度も口論になり、飛び出して実家へ戻ったこともある。だけど両親は私を諫めた。
「お前が彼と結婚すると言い張ったんだろう。そのくらい、我慢できなくてどうする」
「ちょっとした浮気でしょ。貴方は正妻なのだから、どっしり構えていればいいのよ。子供が出来れば彼も変わるわ」
子供は出来なかった。閨事は月に一回、義務的に行われるだけ。それで授かるわけがないだろう。しかも夫は「子供が出来ないのは妻のせい」と口外していたらしい。
こんなに夫を愛しているのに。どれだけ手を伸ばしても、彼は応えてくれない。
私の心は少しずつ少しずつ、疲弊していった。
そうして10年近くが経過した頃、私と夫の仲を決定的に決裂させる出来事が起きた。
グレンダ・エアリー元子爵令嬢が戻ってきたのである。
彼女の夫が病で亡くなり、前妻の息子が跡を継いだ。グレンダは継子と折り合いが悪く、籍を抜かれ実家に戻ってきたそうだ。
再会したグレンダとリオンはあっという間に恋仲となった。その仲睦まじさは人々の噂に上るほどだ。ひと目もはばからず、身体を寄せ合う姿を度々目撃されていたらしい。
今までのリオンは、一人の女性に長期間入れ込むことはなかった。遊びなのだと私も必死で割り切ろうとした。だけど今の夫は――明らかにグレンダへ入れ込んでいる。
浮気には目を瞑るからせめてもう少し控えてくれと頼み込んだが、無駄だった。このまま続けるようなら離縁すると脅しをかけるも、夫は「お前が離縁なんて出来るわけがない」と相手にしない。
悔しいけれど確かにその通りだった。そのときの私は、まだ彼を愛していたのだから。
「おや、ヘイワード伯爵夫人。伯爵はご一緒ではないのですかな?」
アルドリッジ侯爵家で開かれたパーティに参加していた私は、侯爵に声を掛けられた。夫はいつも通り、私を放置してどこかに行ってしまっている。
「え……ええ。友人と話し込んでいる様子でしたので」
「そうですか。久しぶりにお話したかったのですがね」
「まあ、申し訳ございません。探してきますわ」
会場を探し回ってようやく見つけたリオンは、カーテンに隠れた椅子でグレンダと身体を寄せ合い囁き合っていた。嫉妬と怒りでカッとなり、私はつかつかと歩み寄る。
「リオン!主催者にご挨拶もせず、そんなところで何をなさってますの!?」
「ああ……アルドリッジ侯爵には後で挨拶しにいく。お前は向こうへ行ってろ」
いかにも鬱陶しいという顔でシッシッと手で払う仕草をするリオン。
「リオン様、貴方を探して下さった奥様に対してそのような言い方は失礼ですわ」
「優しいね、グレンダは。こいつのことは気にしなくていい。お前を隣国へ追い払った張本人なのだから」
「またそのような昔のことを……。ごめんなさいね、ナタリア様」
申し訳なさそうな顔で謝罪しているグレンダだが、その口角は愉快そうに上がっていた。頭に血が上る。
「このっ、薄汚い泥棒猫の分際で!」
気が付けば私は彼女へ掴みかかり、頬を叩いていた。リオンに突き飛ばされ、倒れ伏した私を見て二人はせせら笑う。
「夜会の場で騒ぎを起こすとは、恥ずかしいやつだ。お前のような妻を娶った俺は本当に不幸だよ」
「浮気を繰り返すのは、恥ずかしいことではないのですか!?」
「最初に宣言した通り、俺は夫としての義務は果たしている筈だ。文句を言われる筋合いはない」
グレンダと寄り添って去っていくリオンは、去り際に「明日は抱いてやるつもりだったが止めた。罰としてしばらく房事は無しだ」と言い捨てた。
『抱いてやる』という言葉に、私は茫然とする。
月に一回、淡々と済ませられる閨事は、私にとって苦痛の時間でしかなかった。
なのに彼は、それが私に対する褒美だと思っているのだ。
私の中で、何かがぷつんと切れた。
「もう、疲れたのです。貴方を愛することも。……貴方の妻でいることにも」
「勝手なことを言うな!お前のせいで、俺とグレンダがどれだけ辛い思いをしたか」
リオンは私を睨みつけながら怒鳴った。こんな時まで彼女なのね。
「それについては申し訳ないと思っているわ。だから離縁して頂戴。私がいなくなったら、好きなだけ彼女と添い遂げればいいでしょう」
「ふん。それで気を引いているつもりか?」
「そんなつもりはありません。良いじゃありませんか。これで大嫌いな女と離れられるのだから。貴方もせいせいするでしょう?」
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