神様の気遣いで転生したら聖女のペットに……。明日からは自立のため頑張って働こうと思う。

太陽クレハ

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十三話 赤に染まる空。マチルダサイド

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 マチルダサイド。



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 私はマチルダ・ファン・シルベス。

 シルベス侯爵の長女として生を受けました。

 そこら辺の有象無象とは異なって、私には生まれつき素晴らしき才能があります。

 その才能と言うのが聖属性の魔法が使え、マナの保有量が非常に高いことです。

 私が暮らすクリスト王国では聖属性の魔法適正があって、マナの保有量が高いものが聖人や聖女と呼ばれ崇められるのです。

 聖人や聖女は教会に属すことが求められのですが、その代わりに給金が支給されます。

 それはそこらの弱小貴族以上に高給金となっています。

 給金をもらうからと言って特に普段は特にやることはないのですが。ただ、非常時に強制徴用されることを義務づけられています。

 そんな義務があるのも聖人や聖女に見合う能力を持った人間は五万人に一人と言われているほどに尊い存在だからなのです。

 更に私は聖属性の魔法の適性、大量のマナを保有している量ともに聖人・聖女の中で言っても、高レベルでクリスト王国に居る聖人・聖女の全二十人の中で第五位の実力を有しているのですから。

 すごいでしょ?

 それを知った多くの貴族は競うように私をパーティーやお茶会に招待しようとし、両親も甘やかしてくれて、なんでも望むようにしてくれました。

 ただ、私の栄光の時間は長くは続きませんでした。

 六年後……私では比べものにならない才能を持った忌々しいアリアという小娘が表れたのです……。

 最初、新たな聖女が見つかったと聞いた時、私はその小娘に興味などありませんでした。

 なんせ、私のほどに才能がある者などそんな生まれるものではないのですから。

 それに、アリアの家は伯爵家の癖に、王都外の村や街を回って下々の者を治療して回る善行祭に参加していたのですよ?

 確かに、その善行祭に聖女が参加すれば、その分給金が出ると聞きますが。

 なぜ、尊き私がわざわざ下々の者達のところにまで出向いて治癒を施してやらねばならないのですか? そもそも下々の者に触れるのも私が穢れてしまうので御免です。

 実際に善行祭へ参加する聖人・聖女はごくわずか。

 おそらくですが、お金に困っている貧乏な連中が参加しているのでしょう。

 本来なら、そんな連中と私が同じように聖人・聖女と言われたくないのですが、こればかりは天が授けた才能なので仕方ないのです。

 そんな、アリアは興味も持てなかった存在だったのに……。

 アリアはクリスト王国の聖人・聖女の中で第一位の実力を有するフランダル・ファン・トラースド様すら治癒できなかった、クリスト王国の第一王子の病気を治癒魔法によって完治させてしまったのです。

 その話題は瞬く間に世間に流れてアリアは第二のフランダル様と呼ばれるようになってしまったのですよ?

 そこからよ!

 そこから、私が貴族のパーティーやお茶会に招待されることも減って、両親からの賛辞の言葉が減ったのわ!

 クソガキ……クソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキィィィィィ!!!!!!!!

 アリアが本性を現して以降、私の苛立ちは募らせる日々でした。

 そんな……ある日のこと。

 たまたま立ち寄った教会の図書室でとある古びた本を見つけたのです。

 その本にはなんと……悪魔を召喚して契約を結ぶ禁忌とされる魔法の記載があったのです。

 思わず自宅に持ち帰ったのですが、最初は怖くて私の机の棚の奥に仕舞っていました。

 それでも、忌々しいアリアの名声と実力が上がっていくのを日々感じていたこと、聖獣や精霊との【聖約】が期限の十五歳までにうまく結べなかったこともあり、焦っていた私は……。

 何かにとりつかれたように古びた本を開いていました。その古びた本を寝る間を惜しんで読み耽っていました。

 悪魔の召喚は普段から魔法に触れて学んでいる私に取っては簡単でした。

 ただ、問題だったのは悪魔との契約でした。

 悪魔との契約は聖獣や聖霊と結ぶ【聖約】と同様に彼ら悪魔の願いを聞くことで契約を結ぶことができるのですが。

 やっぱり悪魔との契約という言葉には二の足を踏みました。何を要求されるかわかったものではありません。

 そんな、不安はありましたが、とりあえずどんな要求をされるのか聞いてみてから判断しようと思ったのです。

 今から思えば性急すぎだったでしょう。

 けど、この時の私はアリアという存在に焦っていました。それに尽きると思うわ。

 ただ結果としては最上のものでした。

 私が召喚できたのは、ディレーク・デ・デンタ・クライムという悪魔。

 一見、頭の上に羊の角と背中の蝙蝠(こうもり)のような翼がなければ、人間と変わらない……。

 黙っていれば、街中で見かけたら女性はすべて振り返ってしまうであろうカッコよく麗しい男性でした。

 本当に黙っていれば……。

 そして何より私から見ても彼は大量のマナを保有して、彼の名前は教会に保管されている【聖書】に記載されている十三の悪魔の一人であったのです。

 私から見たら大量のマナを保有するディレークなのだけど、彼から言わせると完全な状態とは程遠いそうなのです。

 信じられません。

 そんな、ディレークを召喚できて喜ぶとともに……悪魔と契約を結ぶ上で悪魔からの要求という項目があったことを思い出して不安がよぎりました。

 ただ、彼は言ったの『暇つぶしに付き合ってやる』と……。

 何と、要求はないと言ったのです! そんな好条件で契約を結ぶことができて私はやっぱり運がいいのだと思いました。

 最上位の悪魔のディレークでさえ、アリアの小娘のことを自分にとっても脅威であると言わしめたのには驚きましたわ。

 その驚きとともに私は彼女を必ず追い落とさなければ、私の栄光は戻って来ないと再認識しました。

 私は今、私の自室のソファに腰かけて、紅茶を楽しんでいた。

「ふぅ……それで、アリアを殺せないの?」

「キヒキヒ、ワイでも難しいわ。ほんと」

 私の前で、私が買い与えたタキシード姿のディレークが前にたたずんでいました。

 口調が軽い感じなのが残念、本当にしゃべらなければいいのにと思います。

 ちなみに悪魔の特徴である角と翼は魔法で消して見えなくなっているので、他の使用人達に変に思われていないようです。

「そう……」

「今のところワイの眷属で邪魔するんが精一杯や。アリアの近くにおるメイドさんの戦う様を見たんやけど、化け物やったし。そもそも、アリアの体のどっかにある【悪魔祓いの印】がやっかいやん。ワイが近づいただけでちょっと気分悪なるもん」

「はぁ。調べた限りだとアリアを生んだ母親がそういった家の出身者だったそうね」

「ほんま、厄介やで……っ!」

 言葉を途中で切ったディレークは眉を潜めました。

 そして、窓の外へと視線を向けたのです。

 突然のディレークの行動に私は戸惑いながらも声を掛けました。

「どうしたの?」

「……ワイの眷属のワンちゃんが、消えてしもうたわ」

「ワンちゃんって言うのは……あの黒い狼のことかしら?」

「そうや。ずいぶん頑張って作ったはずの眷属やって」

「あの黒い狼は何かしていたの?」

「なんや、忘れたんか? アリアが【聖約】を結びに聖獣んとこにいくんで、聖獣をあらかじめ殺しといて邪魔せいと言ったんはマチルダやん」

「……そうだったわね。それで黒い狼はどうなったのかしら?」

「視覚を繋げてへんかったからわからん。やで、ちょっと見てくるかな?」

「そうね。それがいいわ」

「ほな、失礼するわ」

 一度お辞儀したディレークはパチンと指を鳴らし、黒い煙を発生させました。

 その黒い煙は瞬時にディレークの全身を包み込んで、飛散しました。

 すると、先ほどまで立っていたディレークの姿はそこにはありませんでした。

 ディレークが消えたのを見送った私は紅茶の入ったカップを手にして、一口飲みました。

 そしてカップを持ったまま、部屋の窓に近づいて外を眺めます。

「はぁ……何とかアリアを殺す方法はないかしらね」

 私は夕暮れ近くになって赤く染まりかけた空を見つめながら、ため息交じりに呟くのでした。




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