神様の気遣いで転生したら聖女のペットに……。明日からは自立のため頑張って働こうと思う。

太陽クレハ

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十四話 王都ベルクード。

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 フレンダルの街を出て半日、俺達はアリアが住んでいるクリスト王国の首都である王都ベルクードまでもう少しのところまで来ていた。

 俺はリナリーに持ち上げてもらって、馬車の窓から見える街の様子を見ていた。

『うわー凄い』

『ここがこの国……クリスト王国の首都である王都ベルクードです』

 アリアも一緒になって窓をのぞき込んでくる。

 王都ベルクードは高い壁に覆われていて街中を眺めることはできないが、街の中央部に巨大かつ荘厳なお城が建っているのが見てとれた。

 ちなみに、【ハーネットの指輪】を使用していてアリアの声が俺の頭に流れてきていた。

『あの大きな城に王様がいるのか?』

『はい。あの城がルーズベル城です。この王国の国王であるクリスト王の住まいになっています』

 王様が住まう城……日本生まれ日本育ちの俺はなんかピンと来ないな。

 やっぱり玉座の間とかがあって、そこで王冠に赤いマントを羽織って偉そうにしているのだろうか?

 まぁ……王様なんてどうでもいいか、城の内部はどうなっているのだろうか?

 ちょっと見て回りたいな……一般開放なんてされていないだろうか?

『アリアは中に入ったことがあるのか?』

『一度だけ教皇様に連れられてありますよ』

『へぇー、それはすごいな』

『ふふ、そうでしょうか? ただ、病人の治癒をしただけですよ?』

 俺は感心してアリアに視線を向ける。対してアリアは苦笑して、首を傾げた。

『え、十分すごいじゃん』

『そうですか? へへ』

『うん。それで城の中には入ったんだろ? 中はどんな感じだった?』

『私、緊張してあまりよく覚えていないんですよね。ただ大量の赤いバラが一面に咲いている……それは中庭がとても美しかったのを覚えています』

『バラの庭か……俺も一度見てみたいが……忍び込んでみようかな』

『それは絶対にやめてください』

『ハハ、冗談だよ。俺が忍び込んだら、すぐに捕まって問答無用で殺されそうだし』

 バラの庭には興味があるけど、俺はそこまで命知らずではない。

 いや、今の猫の姿ならばワンチャンあるのではないか?

 俺が猫のふりをして侵入する案を考えていると、俺を持ち上げていたリナリーから不意に声が聞こえてきた。

『あ……私も王城に入ったことありますよ』

『え、そうなのですか? それは私も初めて聞きました』

『ええ。冒険者をしていた時のことです。王の直轄領の街を襲っている魔物を討伐した際に、私を含めてパーティーメンバーが呼び出され。なんか勲章(?)をもらいました』

『すごい……国王様直々に勲章を承ったんですか?』

『はい、一応。ただ、冒険者にはそんな勲章あっても腹の足しにもなりませんし。私はすぐにお金に換えてしまったのですが』

『……』

 アリアは驚きのあまり黙ってしまった。

 俺はリナリーの強さは一度戦い知っているので……。

 王様から勲章を貰うのも売るのもリナリーならあり得ると思うし。

 そして、ヘイゲンの街の冒険者ギルドでリナリーは冒険者として必要とされているようだったが、それも理解できてしまう。

 そこで不意にリナリーへ視線を向けると、違和感があることに気付いた。

 アレ? よくよく考えると恐ろしいか?

 俺が何に違和感があったのか、何が恐ろしいかについてだが……。

 それはリナリーの見た目である。

 リナリーはどうみても二十代中盤くらいの年齢に見えるのだ。

 まだ十分に若いと思う。

 それでも、リナリーの強さは異次元の強さである。

 その強さというのは説明しにくいのだが、俺に最後放った剣技は『白月』を考えるとわかりやすいかもしれない。

 あの剣技を目で追うことができないほどに早かった。

 普通の人間はあの剣技の速さを再現することはできない。

 仮に魔法やらスキルやらを使ってあの剣技の速さを再現できたとして、その後人間の許容限界を超えた動きによる負荷で体はボロボロになる。

 しかし、リナリーは涼しい顔でやってのけてしまう。

 もちろんリナリー自身の才能も関係してくるところだし、スキルやら魔法やらを使っているのだろうが……。

 それだけでは到達できないレベルにリナリーはあると俺は思っている。

 つまり、リナリーが二十代中盤くらいの月日の中で異次元の強さを手に入れるのに至ったかについて考えると恐ろしいのだ。

『今度……』

『あ、もう少し、着くみたいなので準備しましょう』

 俺がリナリーに話しかけようとしたところで、その言葉が被るようにアリアが話しかけてきた。

 実際にアリアの言った通り、王都を囲む壁にある大きな扉が大きく見えてきた。そして、周りの客も馬車を降りる準備を始めている。

『あ……ノヴァ何か言おうとしていましたか?』

『いや、何でもないよ』

 アリアがばつの悪い表情になって、俺に視線を向けてきた。

 ただ、俺は首を横に振った。

 まぁ……また今度聞けばいい。

 クリスト王国の中央都市だという王都ベルクードがどんな街であるのか、興味が惹かれるところであるのだ。

『さて、王都ってどんな街なんだろうか?楽しみだ』




 王都を囲む壁にあった大きな門に俺達の乗った馬車が近づいたところで、門には兵士達が立っているのがわかった。

 その兵士達が馬車に乗車していた全員身分を検めていく。

 そして、身分に問題ないことが確認されると、門を通ることが許可されて、再び乗客が馬車に乗ると、そのまま門を通過して王都内に入った。

 馬車は多く集まっている乗合所へ向かい停車すると、俺達はそこで馬車を降りた。

 馬車を降りた乗合所内は多くの人が行き交っていた。

 その中でアリアを抱えたリナリーがきょろきょろと辺りを見回した。

『えっと、出口は……』

 俺は足元からの視線では周りがよく見えなかったので、リナリーの肩の上に飛び乗って周りを見る。

『はーすごい人だなー』

 偉そうにしている貴族っぽい人から、商人っぽい人から、見たことの内柄のローブを身に纏った人……それから頭の上に犬のような耳を付けている人までいろんな人がいた。

 特に気になるのは、あの頭の上に犬のような耳を付けている人である。

 アレがコスプレでないとしたら、ファンタジー小説などでたまに見かける獣人という奴ではないだろうか?

『アリア。リナリー。あの犬耳の人はまさか獣人か?』

『ふふ、そうですよ』

 テンションが高い俺を見て微笑むアリアは俺の問いかけに答えて頷いた。

『はぁ……獣人』

『ここら辺では珍しいですね』

『そうなのか。あまり居ないのか』

『はい、クリスト王国から獣人族が集まる獣人の国は結構離れていますから』

『へぇ……獣人の国! そんなところがあるのか!』

 うわー絶対に行ってみたい。

 どんな文化形態なのだろうか?

 そもそも獣人はどのような生物なのか?

 もう、さっき見かけた獣人の人と仲良くなって、いろんなことを教えてもらうのもいいな。

 俺はその考えにいたって、再び先ほど見かけた獣人の人に視線を向けたのだが、すでにその獣人の人は居なかった。

『あぁ。どっか行っちゃったのかぁ』

 俺が肩を落としていると、それを見ていたリナリーが小さく笑う。

『ふふ、さてそろそろ行きましょうか』

『あぁ……』

 リナリーが歩き出したところで、俺は肩から飛び降りた。

 そして、後に続いて乗合所を出ると、すぐに王都ベルクードの大きな通りが見えた。

『……っ!』

 俺は目の前に広がった街の光景に驚いて目を見開いた。

『はぁーここはまたスゲーな異文化の地に居ることを実感する』

 王都ベルクードの街中は煉瓦を積み上げて作られた建物が並んでいた。

 赤い煉瓦や建築様式が統一されて見ていて感動を覚える美しい街並みであった。

 俺は感動して、ぼーっと街を眺めていた。

 そして、ふらふらと歩いていくと、公園のようなところに行きついた。

 人通りの多い通りから公園の中に入ると木々の揺れる音が耳に届くだけでとても静かだった。

 木洩れ日が差し込む石畳を歩いていくと、動物の彫刻が飾られていたベンチや噴水が見てとれた。

『ノヴァ、どこ行くんですか?』

『夢遊病患者みたいですが、大丈夫ですか?』

『あ! あぁ、すまん!』

 アリアとリナリーに声を掛けられたところで、我に返った。そして、振り返ると二人が追いかけてきてくれていた。

『あ……そこに座りましょうか』

 アリアが指さした公園にあったベンチにアリアとリナリーは座って、俺はひょいっと持ち上げられてアリアの膝の上に乗せられた。

『ふふ。ノヴァは迷子になっても大丈夫ですが、気を付けてくださいね』

 俺はアリアの言葉のニュアンスに疑問を感じて、首を傾げた。

『ん? どうして迷子になっても大丈夫なんだ?』

『え? だって、迷子になったら……ノヴァなら召喚魔法で呼び寄せることができますし』

『あぁ。そうか、どうせなら一度召喚魔法とやらの具合を試してみるのもいいか? いや、マナとやらがもったいないか?』

『確かにマナを消費しますけど、ノヴァくらいの大きさならそこまでマナの消費量は多くないので大丈夫だと思いますよ』

『そうか? ならいいんだけど。あ……前から思っていたんだが、【ハーネットの指輪】をずっと使いっぱなしなのも、マナの消費量が少ないからか?』

『あぁ、そうですね。【ハーネットの指輪】のマナ消費量が思ったよりも少ないのと……それから不思議なんですが、ノヴァと【聖約】を結んでから私の中にマナが溢れるようなのです。もしかしたら、大量にあるノヴァのマナが私に影響を及ぼしているのかもしれないですね』

『ふーん、俺としては特に変わった感覚はないな。マナについての説明は聞いたが、実際どんなものなかわかっていない』

『そうですね……じゃ』

 考える仕草を見せた後、アリアは両手を前にだした。

 その両手がうっすらと白く輝きだした。

 どうやら、マナを両手に集めて見せたようだ。

 へーこれがマナという奴か?

 説明として魔法に使うガソリン的な覚え方をしていたが、実際に見ると綺麗なものだな。

 興味深く光るアリアの手を見ていると、その手を隣に座っていたリナリーが素早くつかんだ。

 そして、リナリーは公園内を鋭い目つきで周りをみた。

『アリア様、このような公衆の面前でマナの集中はすべきでないかと。誰が見ているかわかりません。大量のマナを持っているアリア様を攫うという馬鹿な考えを持つ者いるかも知れないんです』

『あ……ごめんなさい』

 アリアはしょんぼりとした様子で、マナを集中させるのをやめて両手を下した。

『マナを持っている人間って攫うほどに貴重なのか?』

『はい。下級の魔法や魔導具を一日一回使えるくらいのマナはほとんどの人が持っています。ただ、マナを可視化できるほどにマナ保有量の多い人は一万人に一人くらいです』

 俺の疑問に、今度はリナリーが小さく頷いて答えた。

 一万人に一人か……それはすごい。

 リナリーが警戒するのもわかる。

 ただ、ここである懸念を抱いた。

 それは俺とアリアの間で結ばれている【聖約】についてだ。

 アリアは言った、俺と【聖約】を結びたい理由が確か俺とマナを共有することで、強力な魔法を使いたいだった。

 リナリーが言った通りアリアが一万人に一人という大量のマナを保有した人間が……さらに【聖約】を結ぶことでさらにマナを得て、どんな魔法を使用したいのか興味が惹かれて聞きたいところである。

 ただ、それはあとでもいい。

 それよりも……。

 黙って考え事をしていた俺を、覗き込みようにアリアが問いかけてきた。

『……』

『どうかしました?』

『……さっき見た白い光がマナとやらなんだよな?』

『そうですよ』

『俺の中に……大量のマナがあるのか? 実感はないんだけど』

 よくよく考えたら、俺は聖獣とかいう動物に分類されるようだが、その聖獣の全員が全員マナを大量に持っている確証はないだろう。

 アリアはしないだろうが、もし俺にマナがないとわかったら、必要ないと捨てられてしまうのでは? と一瞬不安がよぎったのだ。

 不安を口にした俺に、アリアはきょとんとした表情で首を傾げる。

『え、そうなんですか? リナリーと戦っていた時に大量のマナを使用して体から炎だしていたんで、てっきり……』

『あぁ……あの炎なぁ』

『あれだけの炎を作り出すには相当なマナが必要になってくるんですよ?』

『そうなのか? ただ、あの炎……実はどうやって出しているのか、よくわかっていないんだよな』

『そうなのですね。だとすると、少なくとも魔法式や魔法理論などが分かっていないと使うことのできない魔法ではなく、スキルということになりますね』

『スキル……前世ではなかったからよくわからないのだけど。俺にはそんな力が? あ……それとも聖獣が普通に使える能力とかって言うことはないか?』

『んー確かにその可能性もあります。ただ聖獣の銀猫が火を扱うといったことは私が調べた限りでは出てこなかったです』

 ……そういえば、親猫が黒い狼と戦っていたが炎は出していなかったな。

 確か、鋭い爪と素早い動きで攪乱するって感じ戦い方だった。

『じゃ……何なんだろう? やっぱり、もともと俺に備わっていた力ということになるのか?』

『……そうですね。火を操るというのはスキル一覧に載っていたと思います。後で見てみますか?』

『そうだな』

 アリアの提案に俺は小さく頷いた。すると、リナリーが小さく手を上げる。

『あの……よろしいでしょうか?』

『ん? どうしました? リナリー』

『明日、教会に今回の遠征のことを報告に行かれるんでしたよね?』

『はい。教皇様にお金を出してもらったので』

『でしたら。教会には『バシートの石板』があったはず、報告ついでにノヴァのスキルをちゃんと確かめてはいかがでしょうか?』

『えっと……わかりました』

『……』

 リナリーが目を細めて推し量るように、俺の方に視線を送ってきた。その視線に気づいた俺は顔を上げてリナリーをみた。

『なんだよ?』

『いえ、確かに最後の炎は驚きましたが。私と戦った時にいくつかのスキルが使用されているのを感じましたよ』

『本当か?』

『はい。ただ私が知らないスキルも交じっていて。中途半端にスキルの知識を持つよりも、ちゃんと持っているスキルを調べた方がいいかと』

『ふーん、そういうものか』

『そういうのです。……では、そろそろ屋敷に戻りませんか? アリア様』

 リナリーは小さく笑った。ベンチから立ち上がって、アリアに視線を向けて屋敷に戻らないかと提案した。

 ただ、アリアは俺を撫でている手を止めることなかった。

『はい……ただ、もう少しノヴァのもふもふを堪能していていたいかもです』

『しかし、そろそろ屋敷に戻らないと。食事の準備もありますし』

『そうですね。わかりました』

 こうして、俺達はアリアの住んでいる屋敷に向かうことになったのだった。




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