神様の気遣いで転生したら聖女のペットに……。明日からは自立のため頑張って働こうと思う。

太陽クレハ

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五十話 一瞬。

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「させませんよ! 剣技【裁断】!」

 風と共に現れたリナリーが俺の頭を掴んでいたマチルダの左手首へ両手に握る短剣を上下から同時に振るった。

 すると、マチルダの手首が切断された。

「……っ」

「ぐえ」

「きゃ、リナリー」

「なん」

 リナリーはすぐさま俺の後ろ右足を掴み、アリア、ワンダを回収して後方に飛び去った。

「私の庭で暴れまわりおって死んで償えよ。【ロックアーム】」

 ローブを纏った老人が上空から表れた。

 その老人は右肩辺りから生やした巨大な岩の腕をマチルダへと振り下した。

 振り下ろされた巨大な岩の腕は地面を割って、巨大なクレーターを生むほどの威力であった。

 周囲への影響も計り知れず、嵐のような衝撃波と震度四ほどの地震を発生させた。

 俺はリナリーに後ろ右足を掴まれたまま、驚きの声を漏らした

「うお……」

『あの方こそがこの学園の学長であるストール・ファン・ビルクート様です』

 俺が驚いていると、リナリーに抱えられたアリアから声が頭の中に聞こえてきた。

『あぁ『山崩』とかいう二つ名をもってるんだっけか?』

『はい。王国内でも一二を争うすごい魔法使いなのです』

 リナリーがマチルダから離れた位置へ移動して俺、アリア、ワンダを離す。

 すると、ストールは巨大な岩の腕を切り離すと何らかの魔法で浮遊しながら、俺達のもとにやってきた。

「ハハ、歳には敵わんなぁ」

「何を言っているんですか……まったく衰えていないです。昔見たままです」

 背中をポンポンと叩きながら降り立ったストールに対して、呆れた様子でリナリーが声を掛ける。

 リナリーとストールは昔から知り合いだったのだろうか? 二人のやり取りを見るにそう感じた。

 何にしても、リナリーとストールの後ろにいることの安心感は半端なかった。

「そうかな? まぁ……『神速』と呼ばれたお主に言われるのは%#$%#%#%$であるな。ハハ」

「何を言ってるんですか。『山崩』の前では私なんて$#%#%#$%#……っ! 来ますよ!」

 ストールと話をしていたリナリーが眉を潜めて声を上げた。

 リナリーの声と同時にマチルダを押し潰したストールの腕の形の岩がグラグラと揺れ始めた。

 そして、腕の形の岩を砕き割るように炎が噴き出して……その炎は狼のような形状となって出現した。

「ほぉ……まだ生きておるのか」

「アレは遠くからでもわかるほどに脅威でした……」

「そうか。そうか。ワシも勘が鈍っとるのか。お主がそういうのなら気を引き締めんとな。【ロックソード】」

 ストールは【ロックソード】と呟くと地面に手を置く。

 すると、地面から巨大な岩の剣が出現して炎の狼へと向けて飛んでいった。

 巨大な岩の剣は炎の狼の脳天から突き刺さり真っ二つにして見せた。

「とんでもないですね」

「すごい……」

 俺の隣に居たワンダとアリアが呆然とした様子で呟いた。

 ただ、警戒を解かないリナリーが目を細めて口を開いた。

「相変わらずですね……ですが」

「……む、お主が言う通り……厄介そうじゃな」

 眉間に皺を寄せてストールが呟いた。

 炎の狼は真っ二つになったものの、消え去ることはなく……。

 二つに別れた炎がそれぞれ炎の狼へと形成されて、炎の狼が二匹になった。

 炎の狼は前傾姿勢になって、飛びかかってくる。

「【エアーブレード】」

「【フライ】」

 リナリーが【エアーブレード】と呟いて、短剣の剣先に風を纏わせる。

 そして、ストールが【フライ】と呟いて、体を浮遊させた。

 リナリーとストールはそれぞれ炎の狼と戦闘に向かっていった。

「ふぅ……もう大丈夫ですかね」

 リナリーとストールの戦いの様を見た、アリアが肩の力がフッと抜いたように見えた。

 たぶん、それは偶然だった。

 俺は不意に後ろを振り返ったのだ。

 すると、ほとんど気配なくマチルダが背後に表れたのが目に入った。

 マチルダの足元がドロッと溶解しているのを見ると、地面の中を溶かして進んできたようだ。

 マチルダは笑みを深めると、右手を前にだして人差し指をアリアに向けた。

 そして、アリアへと向けた人差し指の鋭い爪が長く伸びて……マチルダに気付いていないアリアを襲う。



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