神様の気遣いで転生したら聖女のペットに……。明日からは自立のため頑張って働こうと思う。

太陽クレハ

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五十一話 歌。

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「……っ」

 俺は咄嗟に飛び上がる。

 マチルダの鋭い爪を両前足で真剣白羽どりで受けようとしたのだが……。

 受け止めきれずに両前足をすり抜けて、俺の胸の辺りに突き刺さった。

「ぐ」

 貫通することはなかったが深く突き刺さって弾き飛ばされ、アリアの背中にぶつかった。

 アリアは突然俺が背中にぶつかってきて、小さな悲鳴を上げた。

「きゃ」

 アリアの背中にもたれて起き上がれなくなった俺は焼けるような感覚に囚われる。

 そして、両足で胸を押さえると、大きく開いた傷口から赤い血液がドクドクと漏れ出てきた。

「う……あぁ」

「え、ノヴァ……?」

 アリアは唖然とした様子で、血塗れた俺の体を抱き寄せた。

「ノヴァ……血が血が」

「うあ……」

 アリアをマチルダから遠ざけたくて、俺は何とか起き上がろうとした。

 ただ、まったく体に力が入らない。

 アリアはマチルダに視線を向けて……どうしてこの状況になったのか理解し、どこか悔しそうな表情になった。

「まさか私の身代わりになって……こんな傷を」

「ヒヒヒヒヒヒ……まったく、それは本当に邪魔をしてくれますね。ですが、次はちゃんと殺してあげますよ」

 マチルダは爪先に付いた俺の血液をぺろりと舐めて見せて笑った。そして、両手を広げて見せると鋭い爪を二十センチくらい伸ばしてみた。

 対してアリアは黙って俯いた。

 そして、ポタポタと涙がこぼれてきて、俺の頬を濡らしていた。

【ハーネットの指輪】の効果が続いているか分からなかったが、心の中でアリアに声を掛ける。

『なに……してい……る。早く逃……げろ』

『ノヴァ……私は逃げませんよっ』

 アリアはバッと顔を上げて、祈るように手を体の前で握る。

 そして、フーと長く息を吐いて目を瞑る。

 アリアの全身からマナが漏れ出して白く輝きだした。

 なんだ……何をやろうとしている?

 俺がそんな疑問を頭の中に浮かべていると、アリアが大きく口を開いて歌いだした。

「*+>+<>++‘*+<++」

 アリアが歌う歌はうっとりするような優しいものであった。

 ただ、残念なことに俺にはまったく何を言っているのか分からなかった。

 もしかしたら、その歌の歌詞はまだ俺が習っていない言語での歌なのかも知れない。

 アリアが歌いだすと、アリアの頭の上一メートルほどの高さの辺りに金色の光の塊が出現した。

 金色の光の塊は凄まじいほどの光を周囲に放ち、その光を浴びると俺は痛みが抜けて体に力が戻ってくるような感覚に囚われる。

「*+>+<+*P``*>+`**+<+」

 アリアはすっと立ち上がる。

 歌がさらに大きく響き渡る。

 すると、金色の光の塊から半透明な腕がフヨフヨと伸びていく。

 半透明な腕はその場にいたすべての者へと伸びていく。

 俺やワンダ、リナリー、ストールに透明な腕が触れられると、金色の光で包まれる。

 対して、炎の狼は透明な腕が触れられると消え去り、マチルダは透明な腕が触れられると、触れられた右手が黒い砂のようになって崩れていく。

「ぎゃあああああああ……熱い……熱いわ。何なのこれは!? いや、いやぁあぁぁぁあ!!」

 すぐに危険を察知ったマチルダは岩陰に隠れる。

 ただ、マチルダの右腕は浸食するように黒い砂となって崩れていった。

「いや……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ」

 マチルダは悲鳴とともに、浸食を食い止めるべく自身の左肩の付け根のところから切り落とした。

「……覚えてなさいよ。必ず……殺してやる! アリア! ヒヒヒヒヒヒ!」

 マチルダの声が大きく響くと……黒い煙に包まれて消えてしまった。

 リナリーとストールが俺達のもとに駆け寄ってきた。

 そこで、アリアがパタンとその場に倒れた。

 それと同時にアリアの上空にあった金色の光の塊が拡散していった。

 アリアに這って近寄ろうしたが、俺も倒れて……意識を手放したのだった。


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