普通の新婚生活が送りたい。

キャロル

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1章 巡りあい

28 それは愛か執着か

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___ゴホゴホっ__ゴフッ__ウウッ

口に当てたハンカチが鮮血に染まる。

始まったか、さすか、神の頂点に立つ時間トキの神の神罰だ例外なく発動したな。
奪う時間が少なければもしかして代償も軽減されるかもと淡い期待だったな。
ハハハ、これも彼女を蔑ろにした報いか、向けられる無償の愛に耳を塞ぎ目を閉じ背を向けた。これは、そんな私への罰なのか。

私はただルーナを愛しただけだった。
私はただルーナのそばに居たかった。
私はただルーナの声が聞きたかった。


____。

急激な変化に必死に抗い体が軋み激しい痛みに悲鳴をあげる。
本来私は病気、怪我に縁の無かった体だ、始めて味わう体の痛み、その痛みよりも心の痛みに恐怖し押し潰されそうになる。

やっと会うことが、出来た彼女に。

やっと彼女の存在を感じることが出来たのに。

やっと………やっと………今度は……今度こそ。

本当はわかっていた。

ただ、認めたくなかった、認められなかった、他ならぬ相手がゼノだったから、魔族だったから、認めてはいけないと思い込んでしまった。


______

ある日、父に呼ばれ次代の天の神となる継承の儀の前に婚約者を決めると告げられた。

「相手は次代の月の女神だ、今代は候補が2人、姉妹のうちどちらかまだ決まってはいないが近いうちに発表があるから、心しておくように。」

「はい。」
私はこの時、心躍るように嬉しかった。なぜなら、次代の月の女神はルーナだと噂されていたから、以前からルーナの事を密かに思っていたからだ。
天界は魂の相性により伴侶が決まり、人間界でいう政略結婚のようなものだが、魂の相性が良い同士の結婚なのでお互いを思い合う良い伴侶として長い時を過ごす。

本来は後継者として生まれるのは1人なのだが、今代の月の女神には娘が2人という異例のことが起きて試練と修行の成果により決めることになった。
どちらに決まっても私とは魂の相性が良いので月の女神の判断を待ち、決定次第婚約表し後に私の継承の儀が行われることになった。

いずれ、婚約者となるからと何度か2人に会い、よく3人で出かけ交流していたが、ある時から、ヘラと2人で過ごすことが多くなった。ヘラにルーナは来ないのかと尋ねると、しばらく所用で中界人間界に行ってるから来れないのだと言われたが、この時私の中ではルーナが後継者になり私の伴侶になると思い込んでいたから、気にも止めなかった。

まさか、その時すでにルーナが後継を辞退していたなんて知らなかった。
女神の後継を辞退する者がいるなんて誰が思うだろう。


月の女神の後継者が決まり婚約発表は大勢の神や女神天族の者達を集め盛大に行われることになった。

発表当日、控室で父と母に

「「婚約おめでとう、」」これから、天の神として生涯ヘラと供に助け合い寄り添い末長くお互いを慈しみなさい」
父の祝いの言葉に驚いた。ヘラと?供に?

「え!どういうことですか?ヘラ?婚約者はルーナではないのですか?」

「お前こそ何を言っている!ヘラが後継者に決定してから何度も2人で会っていたではないか?私がヘラとうまく行ってるようだなと尋ねたら仲良くしていると言っていたではないか!お前こそおかしなこと言うな!」

「では、ルーナは、ルーナは?…今日出席してますか?」
そういえばしばらくルーナに会っていない、忙しいと言っていたから、後継の事で忙しいのかと思い込んでヘラにも尋ねていなかった。

「ルーナは随分前に後継を辞退して、寿命を代償に天界ではなく中界人間界で生きていくそうで、すでにもう天界に居ない、ここには戻れないから出席していない。」
中界?あんな野蛮な人間がいる界に?時折人間の悪を糧とする魔族が蔓延る中界に、なぜ?どうして?疑問ばかりが頭をよぎる。

その後は頭が混乱し、何も考えられず、気がついたら、婚約式が終わっていた。

ルーナはなぜ辞退した?なぜ何も言ってくれなかた?私との結婚が嫌だったのか?

なぜ中界人間界に?寿命を代償にするほど天界に居たくないのか?


おそらく、ヘラに聞いても何も答えないだろう、今まで何度も会っていたのにルーナの事は何も話してくれなかった。ただ、留守にしてるとだけ、私がルーナを思っていることに気がついていたはずなのに。


伴侶は決定事項だ変更することはない、私もわかっている、だがどうしても、理由が知りたかった。例えそれが、私との結婚が嫌だと言う理由だとしても、自分の気持ちに区切りをつけたくて………いや、違う私を嫌っての理由ではなく他に特別な理由があったのだと私のことは嫌ってはいないとそう言って欲しくて、母である月の女神の元を訪ねた。


この行動がのちにルーナをヘラを父を母を悲しませることに繋がるとは思いもしなかった。
そして私自身がこんなにルーナに執着してしまうなんて、自信を抑えることが出来なくなるなんて思いもしなかった。
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