前世が悪役令嬢なんて聞いてない!

オニオン・リンコ

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テンプレ、プライスレス

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『ベネトナシュ!君がミアプラを虐げていたことは分かっている!そんな人間を王子妃にする訳にはいかない。君との婚約は破棄の上、国外追放を申し渡す!』

…ただ今プレイしている乙女ゲーム内で、断罪劇が繰り広げられています。
舞台は卒業パーティー。
悪役令嬢断罪後に、実はヒロインが聖女だったことが判明し、その時にヒロインと一番好感度が高い攻略対象と一緒に魔王討伐に行く流れ。テンプレ中のテンプレ。

画面には金髪碧眼の王子様(テンプレ)がストロベリーブロンドのヒロイン(テンプレ)の腰を抱き、ブルネットでキツい顔をした悪役令嬢(テンプレ)の罪を暴く場面のスチルが映っています。
王子様の後ろには、青髪、赤髪、黄髪の信号機トリオの側近達(テンプレ)の姿も見えます。

『アルナイル殿下。わたくしが、その娘を虐げたという証拠はありますの?』

フフンと鼻で笑う悪役令嬢。いや~悪い顔してますね!
悪役令嬢のその言葉に、信号機トリオは熱りたち、ヒロインは涙目になり、王子様はヒロインの腰を抱く腕に力を込めたようです。

『…酷い。私を階段から突き落としたじゃないですか!』
『そのほかにも、パーティーでミアプラのドレスに飲み物をかけたり、教科書を破ったりしたことは分かっている!』

悪事までがテンプレ。

でも私は知っています。
確かにヒロインは虐められていたけど、虐めていたのは悪役令嬢のベネトナシュではないことを。
彼女ベネトナシュのやったことだと暴かれた罪は、全て他の人間がやったことを。
周囲にヒロインが虐められていた原因は、王子に擦り寄ったことに対する嫉妬と言うよりも、政権争いの代替だったことを。
そして謂れもない罪で着の身着のまま国外追放された悪役令嬢は、辺境の地で悪漢に襲われて儚くなったことを。
ベネトナシュが本当にアルナイル王子を愛していたことを。

なぜなら



私、前世でベネトナシュだったからです!
イェーイ、パチパチ。


ただの女の子だったのに、まさかの乙女ゲームで自分の前世をプレイバックするなんて思わなかった私。
自分が生きていた世界が乙女ゲームになっていたなんて、混乱してしばらく理解出来なかった。
だってそうでしょう。
貴女の前世は乙女ゲームの悪役令嬢で、その人生、ゲームでプレイできますよ、って言われて誰が信じるかつーの。
私も初めは信じられなくて、辛かった受験勉強から解放されて、とうとう頭のネジが飛んで見た妄想なのかとすら考えた。

だけどゲームはプレイをすればするほど既視感を覚える内容だし、私自身がゲームでも表現されていない、本人でしか分からないような過去も次々思い出すにあたって、これは本当のことだと受け入れざるを得なくなったんです。ええ。

まあ、でも過去は過去。
辛かった記憶も悲しかった想いも全て昇華して今世に転生したはずだから、私は今を楽しむことに決めた。
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