無能な俺が、年下騎士さまの溺愛ゲージを溜める話。

ツキハ|BL小説

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2章 ニート、交友関係が広がる(1名)。

※ニートは五度目に秘策がある。

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 ワインを飲み干した後、そういえば旦那さまと五回目があるかどうかは定かでは無いのでは? と遅すぎる気付きを得た。そもそもめっちゃ怒っているのである。へんたい欲より殺意が上回る可能性があるのではないか。それは困る。

 一応尻を洗った後服を着た俺は、尻を洗いながら浮かんだ名案を実行に移すことにした。レミリアに旦那様の部屋の場所を聞いたら、何故かとてもテンション高くご案内され、いってらっしゃいとのお言葉を頂戴する。なんだろう、あの世にいってらっしゃいとかじゃないといいな。

 扉前の護衛に何かしらひそひそと告げたレミリアが、彼らの背をバシバシ叩いて連れて行ってしまうので、何か用事でもあったのかと思う。

 うーん、と少し悩んでから、扉をノックすれば、誰だと問われるので名前を名乗る。名乗った3秒後ぐらいに勢いよく扉が開いたので目を丸くしていたら、同じく目をかっぴらいた旦那さまに捕まってそのまま部屋に連行された。

 ――まずい。お詫びの印を提示する前に処されるかもしれない。由々しき事態だ。肩に担ぎあげられたまま、ぺしぺしと旦那様の背中を叩いてアピールしたところ、一応話を聞いてもらえそうだったので口を開く。

「旦那さま、あのですね」

 と、そこまで言って、言い方に悩んだ。こういう時どうやって言えばいいのか、俺は社会経験が無いので知見が皆無だ。とりあえず謝罪するとしても、理由もわからず謝れば火に油を注ぐと聞いたことがある。ならば怒っている理由を聞くべきではないか? ニートにしては良い気付きだ。

 自画自賛ニートとしてふるまいつつ、見た目しょんぼりしている風を装って、しおしおと発言する。

「その、怒らせてしまったことを申し訳なく思うのですが、何故お怒りなのかを教えていただきたく」
「……教えたら、詫びの一つでもするつもりか?」

 執務室には仕事机の他にふかふかそうなソファが置いてあって、俺はそこに下ろされた。顔を覗き込まれて問われるので、ここだ! と思って意気揚々と発言する。

「もちろんです。ですので、今日は俺が頑張ろうかと」
「何をだ?」

 片眉をあげてこちらの意図を窺う彼に、ふっふっふ、と胸に手をあてて、執事に言われたことを頭に思い描く。旦那さまなら、これはきっと大好きな奴だと確信のもとに、ふふんと胸を張る。

「えっちなやつです!」

 内心ドヤ顔で珍しく働く宣言をした俺は、すぐそばにあった旦那さまの手をとって、これで許してくれの気持ちを込めて、深く頷いてやる。大丈夫だ。俺は旦那さまがへんたいでも見捨てはしない。なので代わりにニートとして暖かいソファで寝てばかりでも許してくれ。あとついでに他の諸々も許してくれ。


 そう思っていたら、何故か何の音沙汰もないので、目の前で固まっている旦那さまへ向けて、もう一度口を開く。

「あの、準備はしているのですが、今日はしませんか?」

 しないのであれば俺の計画は頓挫してしまう。他に出来ることと言ったら、恥も外聞も投げ捨てた全力の駄々こねか土下座くらいだ。もしかしてそっちの方がいいのだろうか。へんたいにも幅があるのだな。などと思っていたら、ようやく旦那さまが動いて、何故か天を仰ぐ。

 すぅー、と大きな深呼吸を一つして、ようやくその口が開かれた。


「……な、ぜ。急にそんなことを」
「あ、よかった。聞こえてたんですね。なぜって」

 旦那さまは超ド級のえっちなへんたい騎士さまなので! と、言いたかったが、待て。前に練習の時、オブラートに包まない発言で旦那さまを傷つけたばかりだ。俺は学習するニート、同じ過ちはたまにしか繰り返さない。そう思って、ちょっと言い淀んでから、もう一度菩薩の笑みでこう告げる。

「旦那さま、その方が嬉しいでしょう?」

 自信をもって告げた言葉は、直後彼に唇ごと呑み込まれていく。なるほど許してくれるらしい! ほっとして力を抜いたら、頭の後ろに手が添えられた後、そのままソファに押し倒されて、さらに舌が咥内に潜り込んでくる。

 ぬるりとした感触に、うっかり気持ちがいいなと思いはすれど、しかし、これはちょっと困ってしまう。このままでは俺が何かするまえに体力が尽きて何もできなくなるコース一直線な気がするからだ。

 なんとかしようと、とりあえず入ってきた舌を押し返そうとしてみたら、むしろ口付けが激しくなって逆効果だったのが盲点。

「ん、ぅ、は、っ、だんな、さま、待っ」
「待たない」
「は、ぇ」

 何と旦那さま、普通に拒否。もはや仕方がない、一旦止まるまで待つかと思ったが、彼の手が首筋を撫でてそのまま下へ下がっていく。服の上からカリカリと引っかかれるので、直接触られる時と違った気持ちよさがあった。なるほど、それなら俺にも出来るかもと思って、胸元に添えていた右手の指先で下へとなぞっていけば、下に触れかけたところで旦那さまが小さく呻く。

 謎の達成感を味わっていたら、仕返しとばかりに下履きごとずり下げられてしまう。既に半勃ちのモノを遠慮なく掴まれては、あれこれ考えている余裕が少しずつ無くなって、こ、このままではいつものコースではないか、と再度危機感を抱いた。

 しかし危機感を抱いたとして、俺は最弱ヒキニートなので、特にできることが無い。たまに息継ぎをさせてくれる以外は延々ちゅーされるので、口を挟む隙も無い。これは困った。困ったけど、めちゃくちゃ気持ちがいいので、とりあえずまあ、今はいいかと思って。

「だ、んなさま、それ」
「どうした。まだ何もしていないが」

 何もしてない判定なんだこれ。旦那さまの中のへんたい水準が急上昇していることをひしひしと感じつつ。

「きもちがいい、です」

 いつもありがとうございます、今後ともよろしくお願いします、なんて気持ちを込めてみる。雇用関係には良好なコミュニケーションも必要だと聞いたことがあるので、感謝は示しておくべきだ。


 ――そうやって俺がふんわり投げた言葉のボール。俺はきっと、素晴らしい軌道を描いて優しく投げ返されると思ったのだが。


 直後、物凄い剛速球の大暴投が披露されたのだった。
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