初めての物語~First Story~

秋 夕紀

文字の大きさ
8 / 45
第三章 初めてのふれあい

2 海辺のふれあい

しおりを挟む
 約束の朝は、真夏のじりじりとした暑さを予感させる青空だった。ボートネックのTシャツにコットンのショートパンツを身に着けて駅へと向かった。駅には、すでに真斗と藤森君が来ていた。二人ともがらの付いた半そでのシャツにジャージ風のハーフパンツを着ていた。時間ギリギリになって、梨沙がやってきた。レモン色のタンクトップに白のパーカー、薄いピンクのフレアスカートという格好かっこうで圧倒された。しかも腰高のミニで、下着が見えそうだ。
 電車に乗って金沢八景で乗り換えて、三浦海岸に向かう。思っていたより混雑していたが、途中で座る事ができた。藤森君と梨沙は立ったままで、イチャイチャとしていた。降りる駅に近付いた所で、梨沙が寄って来て、「愛海先輩、部活お疲れ様でした。今日はよろしくお願いします。」と罪のない事を言ってくる。当たり障りのない会話を交わしている内に駅に着いた。

 朝の9時半、平日にもかかわらず、海岸には多くの家族連れやカップルが集っていた。更衣室で水着に着替えて、待ち合わせ場所に向かった。私は、花柄の模様の付いたオレンジ色のフリルの付いたショートパンツ一体型のワンピース、背中はレースアップで大きく開いているが、胸元はフロントギャザーの目立たない水着を今日のために新調した。梨沙は淡いピンクのビキニで、ヒップとショルダー部分は大きめの水色のフリルが付いており、胸の谷間は網掛けに、クロスしたリボンをバックで結んでいる。高校1年生には見えない豊かな身体が、海岸にえていた。
 飲み物を二つずつ持った二人がやってきた。男子の裸は学校のプールで見慣れているが、こうして海岸で見るとよりたくましく見える。真斗は胸と肩に筋肉がしっかり付いているし、藤森君は脚の筋肉と腹筋がすごい。
「おー!似合ってるよ、梨沙。ビキニか、いいね。オッと!愛海ちゃんも、そのワンピースいいよ。」藤本君はすかさずめて、胸元から足先まで目で迫ってきた。梨沙の推定Cカップはある胸はふっくらとして形がよい。私はというと、手で包み切る程の胸を、パットで誤魔化ごまかして少しだけ大きく見せている。
 ビーチマットを敷いて4人で座っていると、すぐ横で藤森君が梨沙の背中に日焼け止めクリームを塗っていた。私が自分で塗っているのを見て真斗が、
「愛海、背中に塗ってやろうか?」と遠慮しながら言ってきた。断る理由もないので、クリームを手渡した。真斗は恐る恐る肌に触れてくるので、くすぐったくて仕方がなかった。男の子に直接肌に触られるのは初めてだし、真斗の手だと思うとぞくぞくした。
「よし海に入ろう。」と叫んで、藤森君が飛び出した。その後を梨沙が追いかけていった。私達は、真斗が手を差し伸べてきたので、手を繋いで海に向かった。水の中では、真斗が抱き着いてきたり、真斗の背中に私が抱き着いたりして、開放的な気分になっていた。泳ぎ疲れて砂浜に上がり、4人でビーチボールで遊んだり、砂を掛け合ったりして時間を過ごした。

 昼食をって寝転んでいると、藤森君と梨沙の姿が見えなかった。しばらくしても帰って来ないので、
「ねえ、あの二人どこへ行ったのかな?トイレに行きながら見てくるね。」と声を掛けたが、真斗は関心がなさそうにまだ眠っていた。一人でトイレまで歩き、辺りをキョロキョロしていると、海の家の陰に見覚えのある色の水着を着た二人を見つけた。声を掛けようと近付くと、二人は水着のまま抱き合っていた。すぐに何をしていたか分かったので、きびすを返して早足で真斗の所へ戻った。
「どうだった?どこかにいた?」と真斗に訊かれたが、
「どこにもいなかった」と嘘を付いた。胸がバクバクして、真斗に聞こえるのではないかと思ったくらいだ。
 しばらくして二人は、何事もなかったかのように帰って来た。そのあと、また海に入ってしばらく泳いでから帰りの支度をした。日も傾いてきて、騒がしかった砂浜は静けさを取り戻しつつあった。

 帰りの電車では運よく座れた。私は海の疲れもあって、真斗の肩を借りて頭をもたせ掛けて眠っていた。海の喧騒けんそうと波の音が脳裡のうりをかすめ、真斗とのスキンシップを思い浮かべながら、心地よい眠りの中にいた。
 目が覚めると、真斗の手が私の肩に置かれていた。真斗の手は肩から髪の毛に移り、優しく髪の毛を撫でながら、
「前に一回逃げられているから、どうしようかと迷っていたんだけど、今日はいいよね。」公園での事は、あの後謝っていた。周囲に人がいる恥ずかしさと、真斗の手の温かさとで胸の鼓動は高鳴っていた。そして、海岸での藤森君と梨沙の姿が、目の奥でちらついていた。
 電車を乗り換えた後は、指と指を絡める恋人つなぎをして立っていた。
「愛海、疲れたみたいだね。それにしっかりと日焼けしてるし。」
「うん、真斗みたいに体力ないからね。身体が火照ってるみたい。」というと、にこやかにうなづいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...