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第三章 初めてのふれあい
3 臆病なわたし
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お盆前の1週間は部活動があり、暑い中を学校に通った。後輩の梨沙とは、お互いに顔を合わせてもほとんど話をせず、海での事も頭の片隅に追いやられていった。茜はというと、引退した倉橋部長が時々来るのを楽しみにしているようだ。帰りは仲良く一緒に帰って行った。私と真斗は昼休みに、空いた教室で一緒にお昼ご飯を食べた。一緒にいられるだけで幸せだったが、真斗は午後からも練習があるので、部活の終わった私は寂しく一人で帰った。
そんなある日真斗が、
「夏休みの終わり頃、部活も休みになるから、一緒に宿題やらない?あまり勉強が進んでなくて、一緒にやってくれると助かるんだけど。」と言ってきた。
「いいよ。けど、どこで?」
「良ければ内に来ない?」という真斗の誘い掛けに、私は状況を思い浮かべて、
「うん、私は大丈夫だけど…家には誰かいるの?」と訊いていた。
「妹が夏休みだから、家にいるよ。」真斗の言葉に、安心感とどういう訳か期待外れの思いが、私の心の中に交錯していた。
お盆明けには、茜の家に泊まりに行く事になっていた。夕方、駅に迎えに来た茜は、Tシャツドレスにサンダルというラフな格好をしていた。家の前まで来ると、「あそこが真斗の家だよ」と茜が指さして言った。
「すごく近くて、びっくり。真斗は、今日は合宿でいないんだよね。」と自分に言い聞かせるように言った。
家では茜の母親が、手料理でもてなしてくれた。一人っ子の茜と幼馴染の真斗とが小さい頃から仲良かった事を、母親との会話で知らされた。茜の部屋でゲームをしたりお喋りをしたりして過ごし、その後二人でお風呂に入った。
お風呂から上がり布団に寝そべりながら、茜が話し掛けてきた。
「真ちゃんと海水浴に行ったんでしょ。どうだった?」と訊かれ、一部始終を話して聞かせた。藤森君と梨沙との事には、驚いたようだった。
「茜はどうなったの?倉橋先輩とは。」茜は布団の上に座り直して話し出した。
「夏休みの練習の後、彼の家に行ったの。家には母親がいたから、一緒にお話しして、しばらくして彼の部屋に行ったの。そこで音楽を聴いたり、話をしたりしていたんだけど、彼とベッドに一緒に…。分かるでしょ!イチャイチャとしていたの。もちろん最後まではしてないよ。」茜は思い出しながら平然と話しているが、私は想像してドギマギしていた。
「それで、そんな事をしていたら、いきなり母親が部屋に入ってきたの。びっくりしたのは私たちで、慌ててベッドから出て、それからが大変だった。英之は受験だから、二度と会わないようにと言われて、それきり会ってない。」と言う茜は、薄っすらと涙を浮かべていた。私は慰める言葉も思いつかず、うなづくことしかできなかった。茜には「聞いてくれてありがとう」と感謝された。
私は茜の話に、いろいろな部分でショックを受けていた。茜は倉橋先輩との恋を自分の気持ちに忠実に進めていった。恋する先にはキスがあり、それ以上の事も求められる。心の繋がりだけでは満たされない思いを、身体に求めていく。茜はそれを受け入れていった。私もこれから真斗と付き合っていけば、同じような事を経験していく。恋を成就するためには、これからいくつものハードルが待ち構えている。そんな幼稚な悩みを、茜にぶつけてみた。
「茜はすごいね。茜は自分の気持ちに正直に行動できて羨ましいよ。私なんか手を繋いでドキドキして、肩を抱かれるまでにどんなに時間が掛かったか。この先、茜がしてきたようなことができるのかな。もちろん真斗とだけれど、私のこんな態度に真斗は気を悪くしていないか心配になってくる。恋って自分だけでなく、相手の気持ちもあるから難しいよね。」布団に俯せになって聞いていた茜は、横向きに私の方に向き直って、
「愛海は恋に臆病なんだよ。私だって、キスはドキドキだし、進んでいくのが怖かった。でも、好きな彼が求めてくることだから、相手を信じて受けてきた。その結末があれだけどね。悲しい想いをする時もあるさ。ただ、あせる事はないと思うよ。真斗も分かっていると思う。愛海が心から求めるようになるのが大事だよ。男の子もそれを感じて、応えてくれる。頭で考えるのと、心で思うのとは違うと思う。頭ばかりで考えていると臆病になるから、心で思った事を行動に移す事かな。」茜のアドバイスは的確で、私は納得しながらいつの間にか眠りに就いていた。
翌朝は朝ご飯をいただいて、茜と一緒に街に出て、ショッピングを楽しんだ。
昨夜の事は、お互い一切口にすることはなかったが、夜の暗闇の中で、素直な自分が現れたのも茜の御蔭だった。ただ、真斗の家に行く約束の事は、言えずにいた。
そんなある日真斗が、
「夏休みの終わり頃、部活も休みになるから、一緒に宿題やらない?あまり勉強が進んでなくて、一緒にやってくれると助かるんだけど。」と言ってきた。
「いいよ。けど、どこで?」
「良ければ内に来ない?」という真斗の誘い掛けに、私は状況を思い浮かべて、
「うん、私は大丈夫だけど…家には誰かいるの?」と訊いていた。
「妹が夏休みだから、家にいるよ。」真斗の言葉に、安心感とどういう訳か期待外れの思いが、私の心の中に交錯していた。
お盆明けには、茜の家に泊まりに行く事になっていた。夕方、駅に迎えに来た茜は、Tシャツドレスにサンダルというラフな格好をしていた。家の前まで来ると、「あそこが真斗の家だよ」と茜が指さして言った。
「すごく近くて、びっくり。真斗は、今日は合宿でいないんだよね。」と自分に言い聞かせるように言った。
家では茜の母親が、手料理でもてなしてくれた。一人っ子の茜と幼馴染の真斗とが小さい頃から仲良かった事を、母親との会話で知らされた。茜の部屋でゲームをしたりお喋りをしたりして過ごし、その後二人でお風呂に入った。
お風呂から上がり布団に寝そべりながら、茜が話し掛けてきた。
「真ちゃんと海水浴に行ったんでしょ。どうだった?」と訊かれ、一部始終を話して聞かせた。藤森君と梨沙との事には、驚いたようだった。
「茜はどうなったの?倉橋先輩とは。」茜は布団の上に座り直して話し出した。
「夏休みの練習の後、彼の家に行ったの。家には母親がいたから、一緒にお話しして、しばらくして彼の部屋に行ったの。そこで音楽を聴いたり、話をしたりしていたんだけど、彼とベッドに一緒に…。分かるでしょ!イチャイチャとしていたの。もちろん最後まではしてないよ。」茜は思い出しながら平然と話しているが、私は想像してドギマギしていた。
「それで、そんな事をしていたら、いきなり母親が部屋に入ってきたの。びっくりしたのは私たちで、慌ててベッドから出て、それからが大変だった。英之は受験だから、二度と会わないようにと言われて、それきり会ってない。」と言う茜は、薄っすらと涙を浮かべていた。私は慰める言葉も思いつかず、うなづくことしかできなかった。茜には「聞いてくれてありがとう」と感謝された。
私は茜の話に、いろいろな部分でショックを受けていた。茜は倉橋先輩との恋を自分の気持ちに忠実に進めていった。恋する先にはキスがあり、それ以上の事も求められる。心の繋がりだけでは満たされない思いを、身体に求めていく。茜はそれを受け入れていった。私もこれから真斗と付き合っていけば、同じような事を経験していく。恋を成就するためには、これからいくつものハードルが待ち構えている。そんな幼稚な悩みを、茜にぶつけてみた。
「茜はすごいね。茜は自分の気持ちに正直に行動できて羨ましいよ。私なんか手を繋いでドキドキして、肩を抱かれるまでにどんなに時間が掛かったか。この先、茜がしてきたようなことができるのかな。もちろん真斗とだけれど、私のこんな態度に真斗は気を悪くしていないか心配になってくる。恋って自分だけでなく、相手の気持ちもあるから難しいよね。」布団に俯せになって聞いていた茜は、横向きに私の方に向き直って、
「愛海は恋に臆病なんだよ。私だって、キスはドキドキだし、進んでいくのが怖かった。でも、好きな彼が求めてくることだから、相手を信じて受けてきた。その結末があれだけどね。悲しい想いをする時もあるさ。ただ、あせる事はないと思うよ。真斗も分かっていると思う。愛海が心から求めるようになるのが大事だよ。男の子もそれを感じて、応えてくれる。頭で考えるのと、心で思うのとは違うと思う。頭ばかりで考えていると臆病になるから、心で思った事を行動に移す事かな。」茜のアドバイスは的確で、私は納得しながらいつの間にか眠りに就いていた。
翌朝は朝ご飯をいただいて、茜と一緒に街に出て、ショッピングを楽しんだ。
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