危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
155 / 370
幕間:ガッドでの新生活

幕間⑪:悪党の繋がり

~カイト視点~

町の外に遊びに行っていたポーラとノリスが襲われたとの話を聞いたのは、いつものように僕とフォブス、キアラの3人で依頼を受けて、グレートボアの肉の納品依頼を達成し、お屋敷に帰った後だった。

話を聞いて少し動揺したけど、レビンとシャロンがいて、そもそもポーラ自体がかなり強いわけでそんなに心配する必要はないと思い直して落ち着いた。むしろ慌てふためくフォブスを見て落ち着かせていた。自分よりもパニックになっている人がいると、冷静になれるものだ。

現に、ポーラにもノリスにも怪我は無く、襲撃者3人はその場で拘束されているらしい。素直に投降しなかった1人がシャロンの魔法で両脚を失ったらしいけど、シャロンがいる場所でポーラを襲おうとして生きているだけ幸運だと思う。

3人は既に襲撃場所から領主の屋敷の騎士団本部にある牢獄に移送されているらしい。さっきまでオランドさんたちが尋問していたみたいで、その報告をするとのことで僕たちも呼ばれたのだ。


部屋に入ると、ラムスさんにグレイさん、ポーラとレビンにノリスもいた。聞いていたとおり、ポーラもノリスも怪我などしていないようだし、特に取り乱している様子もない。後で聞いたら、ポーラはいつも通りで、ノリスが一番驚いたのは脚を失い血まみれの襲撃者を見たときだったらしいから、2人とも問題ないだろう。

僕たちに遅れること少しして、オランドさんと数名の騎士が部屋に入ってきた。

「遅くなりました。襲撃者たちの尋問が終わったところで、冒険者ギルドのギルドマスターソメイン殿からも報告が上がってきたので、確認し情報を整理しておりました」
「それは構わないですが、ソメイン殿からの報告も2人が襲われたことに関係があるものだったのですか?」

オランドさんの言葉にラムスさんが問い返した。
それに対するオランドさんの答えは、

「広い意味では関係があります」

との曖昧なものだった。
それぞれ聞きたいことはあるけど、それでは一向に話が進まないので、先ずはオランドさんの報告を聞くことになった。

「では失礼して。まず、今回ノリス様とポーラ様を襲ったのは、ダーバルド帝国に所属する奴隷商会子飼いの奴隷狩りでした。その戦闘員と呼ばれる荒事を担当している連中です。連中は3人一組で行動しており、今回のリーダーは脚を切り落とされた男だったようです」

・・・・・・奴隷狩り。聞いたことはある。ここに来てダーバルド帝国について勉強したときに出てきた覚えがある。他国に冒険者や商人を装い侵入し、『人間』以外の種族を襲って拉致し、ダーバルド帝国に連れ込んだり、港から違法な船に乗せて国外へ売り払ったりする奴らだ。

最近はその活動が少なくなってきたらしいが、『エルフ』や『ドワーフ』の王国を滅ぼした前後は、周辺の国に逃げていた『エルフ』や『ドワーフ』が襲われるケースが多かったらしい。戦争が終わり、王国に残っていた国民を自由に奴隷にできるようになってからは、『魔族』や魔法を使える『人間』などに狙いを変えて活動していたらしい。他にも西側諸国には多くいるらしい『獣人族』を狙って、西側諸国で活動している奴らもいるとか。

多くの種族が暮らす国々は、騎士団や冒険者を多数動員し、奴隷狩りを駆逐してきた。そのため、ここ10年くらいは被害報告が年に数件程度になっていたらしい。


「奴隷狩りのリーダーは、まあ精神が完全に壊れていたのでまともに口をきけませんでしたが、残り2人は目の前でその光景を見ていたからか、ペラペラ話してくれました。連中は、魔力を感知する魔道具を所持しており、魔力が多い『エルフ』や『ドワーフ』、『魔族』を探しているみたいです。今回はその魔道具が、少なくともポーラ様に反応したのだと思われます。運良く町の外へ出るところを見つけたので尾行し、町から離れたところを襲う予定だったようです」

確かにポーラは魔力が多い。コトハお姉ちゃん曰く、その魔力は今も増え続けているらしい。ノリスも『人間』にしては魔力が多いし、一緒に『悪魔族』のレビンもいた。その魔道具の性能がそこそこでも、反応はするんだろう。


「直前まで気づかれなかったのは、魔力が漏れるのを防止する効果のあるマント、これも魔道具みたいですが、その魔道具を所持していたからだと思われます。魔力が多い者は、周囲の警戒に魔力を用いるそうですから・・・・・・」
「確かに、周囲の生命体から漏れ出す微弱な魔力を感じることで、敵が近づくのを警戒していました。魔獣であれ盗賊であれ、多少の魔力を放出していますから。私の完全な失態です。申し訳ありません」

オランドさんの説明に、レビンがそう言いながら頭を下げてきた。フェイも同様の警戒をしていたようで、悔しそうな顔をしている。
見ると、ラムスさんやオランドさん、フォブスたちの視線が僕に集まっていた。確かに、レビンはバイズ公爵家の所属では無いし、今の謝罪はポーラや僕に向けたものだろうから・・・

「レビン。今回は問題なく無事だったんだし、大丈夫だよ。今後は、魔力に頼らずに警戒をお願いね。フェイも」
「「承知致しました」」

レビンとフェイが力強く応じ、この話は終了した。


その様子を確認してからオランドさんが話を続ける。

「魔道具は匂いまでは隠せないようで、シャロン殿が気づいたのはそのおかげでしょう。ちなみにシャロン殿のことは、大きな犬かホワイトウルフを従えている程度だと思っていたようです。まあ、普段は翼を綺麗に折り畳み身体に密着させていますし、そもそもベスラージュという魔獣の存在はほとんど知られていませんからね」

あの3人の実力は分からないけど、弱くは無いと思う。冒険者で言えば、初心者ランクよりは強かったはずだ。ホワイトウルフ1頭なら、初心者ランクが2人いれば余裕で勝てるだろうし、そう判断しても仕方がないのかな。実際は、実力の上限が全く分からないかなり強力な魔獣だけど。


オランドさんの話で、ポーラとノリスが襲われた経緯は理解できた。少なくともポーラを『魔族』の子どもと思い、護衛も見た目メイドの女性が1人と騎士が2人に少年が1人。少し家柄はいいのかもしれないけど、問題ないと思ったのだろう。そういえばフェイもレビンも魔力を完全に遮断しているから、魔道具によれば『人間』という判断が出たんだろうし・・・

オランドさんの話を受けてラムスさんが、

「2人が襲われた理由は理解しました。それでソメイン殿との話の関連は?」
「はい。どうやら今回襲撃してきた奴隷狩りは、とある奴隷狩り集団の一員らしいのですが、その奴隷狩り集団と先日の盗賊及び盗賊に襲われていた移動馬車を運営している商会がグルのようなのです」
「・・・・・・え?」


オランドさんの説明によると、巧妙に隠してはいたが、移動馬車を営む商会はこれまでに複数回盗賊に襲われて拉致され、身代金を支払い御者や護衛の冒険者を救出しているらしい。
しかし、客と思われる人たちの行方は全く分からなかったそうだ。そもそも盗賊に襲われたことすら報告されていない。

疑問に思いソメインさんが調べた結果、連中のやり方はシンプルだった。移動馬車を盗賊が襲う。移動馬車を営む商会と盗賊はグルであり、御者や護衛の冒険者も当然グルなので、盗賊は抵抗されずに馬車に乗っている全員を拘束できる。そして、捕らえた御者や冒険者は商会が身代金を支払い解放されているのではなく、むしろ捕らえた客の人数や種族に応じて代金を受け取り、解放されて馬車で帰る。
そして盗賊が、奴隷狩りの持つ販路を通じて、捕らえた人の種族や年齢、数に応じて売りさばいてく。

その結果、移動馬車を営む商会は単に乗客が支払った料金に加えて盗賊に協力したことで報酬を受け取り、盗賊は奴隷を売り渡したことで簡単に儲けを出し、奴隷狩りは待っていれば奴隷を多く手に入れることができる。奴隷狩りはリスクを避けるために盗賊役を自ら担うことはしなかったらしい。

移動馬車に乗る人の多くは、キアラのように別の町で新たな生活を始めようと考える人ばかりで、この方法で奴隷にされたとしても、探される心配が少ない。解放された御者らは別の町で同様に移動馬車を運行し、同じく盗賊に襲われる。これを複数の町で順番に繰り返せば、馬車の戻りが極端に早いことも疑問に思われず、客の行方など誰も気にしないのでバレる心配もないという構造らしい。

感想 126

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。