危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第6章:龍族の王女

第308話:新たな騎士団へ

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洞窟発見の情報は、私の想定以上にみんなを湧き上がらせた。
騎士たちには冒険者出身の者が多く、未知の場所を探索することへのモチベーションが高い。もちろん、領都からはそれなりに離れているとはいえ、強力な魔獣・魔物が住み着いている可能性も考えると、きちんとした調査が必要だという。
ドランドやレーノたちが気にしていたのは洞窟から産出される可能性のあるもの、要は鉱物資源だ。これまで人の手が入っていない深い洞窟であれば、鉄鉱石を始め、様々な鉱物資源が発見される可能性がある。武具生産を担うドランドはもちろん、領の財政を管理するレーノも期待しているみたい。
・・・でも、今でもかなりお金は余ってるんだけど、ね。

とりあえず、騎士団による調査隊が派遣されることになる。発見時は『ブラックケイブバット』と遭遇し戦闘して引き上げたとのことで、洞窟の内部を調べることはできていない。鉱物資源を含め、洞窟の中に何か価値のあるものが眠っている可能性はある。だがまずは、洞窟の全貌、中に住む魔獣・魔物を調べる必要がある。もしも奥に、強力な魔獣・魔物が潜んでいるのなら、その対処を先にする必要が出てくるし。


洞窟の発見に沸いた翌日、騎士団からマーカス、アーロン、ジョナスそしてヒロヤ君、文官組からはレーノとヤリスに加えて、現在2人がスパルタ教育中の文官3人が集まっていた。

「コトハ様。騎士団に適用する階級制度が完成いたしました」

と、マーカスが少し疲れたように話し始めた。

「なんか、疲れてるね・・・」
「いえ、申し訳ないです。最後の詰めに思ったより時間が掛かりまして」

一息つき、

「では改めまして、説明させていただきます」
「うん、お願い」
「はい。まずは階級の呼び名ですが、上から大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉、曹長。以上が人数を限定し、昇格審査を経る必要がある階級になります。その下、一般の騎士ですが、1級から10級までに分類する予定です。こちらは、人数は限定せず、全員が1級になることもできます。その下に、騎士の見習いとして、準騎士という訓練生を位置づけ、入隊時の階級にしようと考えております」
「・・・一番上が大将で、一番下が10級?」
「はい。将官、佐官、尉官、併せて将校でしたか。将校と曹長になることができるのは、1級騎士に到達した者となります。基本的には準騎士として入隊、騎士に任命されて10級騎士となり、その後昇級を経て1級騎士になった者の中から、将校や曹長が任命されるという流れを考えております」
「なるほど」
「将校それぞれ、部隊を指揮・管理する者になります。現在の規模ですと、将官に任命される者はいないと思いますが」
「200人ちょっとだっけ?」
「はい。現在、騎士団に所属しているのは228人になります」

まあ、ピラミッド型を意識すると、228人しかいない組織でそんな上の階級は出てこないか。
役目も必要もないのに、階級ばかり上げるのもなんか違うし。

「各階級の呼び名は、ヒロヤの案を採用しております。我々には馴染みのない制度ですし、コトハ様とヒロヤが発案者ですので」

この世界の騎士団、というか軍隊は、明確な階級に分かれていないというか、任命される騎士団長などを除いた内部関係は、どちらが先輩かや、貴族としても身分がどうだかとかで決まるらしいからね。

「呼び名は、私も何となく聞いた事あるし、マーカスたちに異論が無いなら大丈夫」
「はっ。話を戻しまして、将校は、騎士としての戦闘能力はもちろん、部隊の指揮能力、戦局全体での指揮能力、また事務掌理能力などを考慮し、複数名からなる会議で判断したいと考えております」
「会議?」
「はい。単に戦闘能力だけでは決まりませんので、コトハ様や騎士団の幹部、そして文官の幹部にも意見をもらいたいと考えております」
「戦いに詳しくない人にもってこと?」
「そう考えております。将校の中には、砦の指揮官や隔地への派遣を命じられる者が出てくると思います。そういった者は、緊急時にはコトハ様の判断を仰ぐ余裕がなく、重大な決断を迫られることがあると思います。そういった素養を判断するのは、騎士団の関係者だけでなく、コトハ様はもちろん、文官の視点もあった方がよろしいかと」

自分の命じる行動がもたらす影響を慎重に検討できる者でなければ、怖くて軍隊を任せることなどできない。
例えば砦を攻められたとしても、直ちに反撃することが正解とは限らない。もしかしたら、何か行き違いがあるだけで、それを解消すれば簡単に解決するかもしれない。必要ならば躊躇わずに力を振るう勇気や決断力と同時に、踏みとどまる勇気もまた、指揮官には必要になるのだろう。

「分かった。昇格審査会議?みたいなものをやろうか。面子はまた考えるというか、レーノの方でも考えてもらって」
「はい」

そして、

「次に将校と曹長以外の騎士ですが、先ほど申しましたように、1級から10級に分けることを考えております。10級から6級は、主に戦闘能力で区切ろうと思います。準騎士を卒業し、騎士となると自動的に10級騎士になります。その後、騎士個人の戦闘能力、これは主に対人戦を想定しています。加えて、騎士ゴーレムを1体、2体、4体などと数を増やした状態で、効率よく共闘できるかどうかを基準に考えております。こちらは、対魔獣・魔物ですね」
「対人戦と対魔獣・魔物戦?」
「通常、騎士団は対人戦に重きを置いています。戦争はもちろん、治安の維持、主の護衛など。魔獣・魔物の対策は、主として冒険者の仕事になります。ですが、我が領は違います。今はダーバルド帝国の問題がありますが、騎士団の役割としては魔獣・魔物への対策を無視できません。そのため、戦闘能力には対人戦、対魔獣・魔物戦両方を意識した基準にしてあります」
「なるほど」
「その上の、5級から1級については、戦闘能力はもちろん、曹長以上の者がいない場合も想定し、人数を増やしつつ、部下を率いて部隊戦闘を指揮する能力を図りたいと考えております」
「うん」

にしても、かなり細かく検討したんだなぁー・・・
階級制度について提案して、私とヒロヤ君で前世の知識をひねり出して、というかヒロヤ君は結構こういう話が好きだったみたいで、いろいろ出てきてたけど。とにかく、この世界、うちの領向けになっていない、大雑把な内容からここまで調整したのか。マーカスが疲れているわけだ。

「以上の階級を騎士団に適用し、現在騎士団に所属している騎士にそれぞれ階級を与えたいと考えております。将校・曹長へ任命や昇格、級の認定はコトハ様の権限とするべきだと考えております」
「分かった。そこは、領主の権限ってことね。でも、特に最初は騎士団からの提案を尊重するつもりだけど・・・」
「ありがとうございます。現時点では、騎士団長として少佐を1人。副団長として中尉を4人。各副団長の補佐として少尉を8人。以上の13人を将校とすることを考えております。最高位が少佐になりますし、大尉がいませんが、人数が増えるにつれて上げていけばと。佐官、尉官の役割の関係上、空白のポストが出るのもやむを得ないかと思います」
「そうだね。階級埋めるためだけに、大将から1人ずつ任命してもねー・・・」
「はい。無駄に命令系統が増えるだけです。その上で、各少尉の下に曹長を5、6人つけ、各曹長の率いる5人の部隊を指揮させる予定です」
「その5人1グループで動くの?」
「加えて騎士ゴーレム5体を標準にしようと考えております。もちろん、任務によっては騎士ゴーレムを10体、15体にすることもあれば、騎士ゴーレム抜きにした構成で任務を行うこともあるかと思います」
「狩りなのか、偵察なのか、とか?」
「はい。狩りであれば、騎士ゴーレム10体とすることが多いでしょう。騎士隊、という単位は廃止になりますが、念頭においた訓練は積んでおりますので」
「なるほど」
「各5人1グループに騎士ゴーレム5体を加え、併せて10・・・人、でいいですかね。10人のグループを1分隊と扱います。分隊長が曹長になります。そして、1人の少尉が率いる5、6の分隊をまとめて小隊とし、少尉が小隊長になります。2小隊で1中隊、各副団長である中尉が中隊長となります。また、曹長不在の場合には、各分隊の中で上級の者の命令に従うことになります。」
「・・・うん、分かった」
「細かくて申し訳ないです」
「ううん。こういうのは最初にきちんと決めておくのがいいと思うし」

そもそも私が提案したことだし・・・
指揮系統を明確にするのは、軍隊的な組織では必須になる。
それに、今後はカイトとキアラが王都で学院に通ったり、ダーバルド帝国軍を探したり、後は私も別の領に行ってみたいと思っている。サーシャの結婚式とか。となると、いつまでもマーカスやアーロンたちが全てを指揮できるわけではない。
それに、領民が増える。騎士団も増えていくのだろう。となると、今の時点で、騎士団をより強固で、柔軟で、賢い組織にバージョンアップさせておくことは、騎士団の未来を見据えれば、重要だろう。


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