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第四話 六万の侵略者

10.

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 アルザス軍が高地に布陣して一日。
 ブルーノの平原にロイド男爵軍が到着した。

 ロイド男爵に、偵察隊が報告する。

「閣下、アルザス軍は、高地に布陣しております。その数は3千人程度!」

「思ったより減っているな」

 ロイド男爵は、逃げてきた辺境伯軍から先の戦いの概要を聞いていたが、そこでは辺境伯軍の完敗で、アルザス軍はほぼ無傷だったと聞いていた。
 だが実際は、それなりに兵士を減らすことに成功していたらしい。
 おそらく辺境伯軍の兵士たちは命かながら逃げてきて混乱していたため、正確な状況判断ができなかったのだろう。

「アルザスの兵士達は疲労困憊の様子でした。防備もかなり薄い印象です」

「ふむ。これは嬉しい誤算だな」

「どうされますか、閣下。このまま突撃しますか」

 配下の将軍が聞いた。
 だが、ロイド男爵は少し考え込む。

「今攻撃しても一捻りだろう。だが、辺境伯軍がやられたのも事実だ」

「それでは、無視して塩湖に?」

「……いや素通りして、背後から襲われるのは避けたい。奴らはここで根絶やしにする。だが、リール伯爵軍か王都軍が来るのを待つぞ。今攻撃しても勝てるだろうが、より簡単にひねり潰したい」

「では、敵を睨むように布陣しましょうか」

「そうせよ」


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