クラス「無職」になってしまい公爵家を追放された俺だが、実は殴っただけでスキルを獲得できることがわかり、大陸一の英雄に上り詰める。

アメカワ・リーチ

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5.騎士採用試験 

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 王都についた翌々日。

 とうとう騎士採用試験が行われる。

 リートは少し緊張しながら会場へと向かった。
 十年剣の稽古を続けてきて、先日スキルも手に入れた。
 だが、スキルを持った敵と本気で戦ったことはなかった。

 騎士はこの国における最高の官位の一つだ。
 戦闘系のクラスを持つ人間の中でも、限られた人だけが就くことができる。
 今回の試験で合格した場合、最下級の第九位階(ナインス)として採用されることになるが、それでも男爵と同等の身分になれる。

 まして、功績を積み上げ、より高位に上れば、それこそ上級貴族にだってなれる。
 まさしく、リートの父親がそうだった。
 騎士として成功して、公爵にまで登りつめたのだ。

 まさしく立身出世の王道。
 それゆえ、試験は最難関になる。

 試験には多くの人間が集まっていた。
 ざっと見たところ、すでに五十人ほどが集まっている。
 皆、腕に自信がある者たちばかりだ。

「はい、次の人」

 リートは受付の列に並んで十分ほどで、役人に呼ばれる。
 事前に書いてきた申請書を手渡す。

「はいはい。えっと名前はリートね。……あれ、“クラス”の欄が空欄になってるけど」

 と役人は申請書を指差す。記入漏れだと思ったのだ。

「いや、クラスはないんです。神託を受けたんですが、なんのクラスも貰えなくて」

 それを聞いて、受付の人はぽかんとした。

「クラスがない……? そんなことあるの?」

「そうなんですよ」

「……でも、それじゃぁ、どうやって戦うの? スキルもないんだよね?」

 受付のお姉さんの困惑はリートにも理解できた。
 騎士になれるのは、剣士や魔法使いなどの戦闘系のスキルを持つ者の中でも上位の実力を持つ者だけだ。

 それなのにクラスさえ持っていない、何処の馬の骨ともしれない人間が、試験を受けるといえば、怪我しに来たのかと疑ってしまうのは当然だ。

「俺、戦えるんで、大丈夫です」

 リートにはそう言い張るしかできなかった。

「……そうですか……」

 受付はしぶしぶといった感じで申請を処理した。

 ――と、後ろでそのやり取りを聞いていた男が高らかに笑いだした。

「おいおい、聞いたか。あいつ、クラスがないらしいぜ。そんなことあんのかよ!」

 リートはその高笑いを聞いて振り返る。

 声の主は、いかにも金持ちそうな男だった。
 金髪のロングヘアが目立つ。
 色付きのローブに、光を反射するほど磨き上げられた皮の靴を着込んでいる。
 どこかの貴族のボンボンだろう。

「まじでウケるんだが。スキルなしでどうやって戦うんだよ」

 男のその言葉に、取り巻きと思われる周囲の男たち数人が同意する。

「マジでそうっすよね」

 リートは自分を嘲笑する男たちには見向きもせず、その場を去ろうとする。
 言葉で言い返してもよいことはないと知っていた。

 だが、それを男たちの方が許さなかった。

「おいおい。ローガン様が話しかけているのに無視とはいい度胸だな!」

 取り巻きの一人がそう言う。
 ボンボン男の名前はローガンというらしい。

「悪いな。試験前で余計なことを考えている暇はないんだ」

 リートはきっぱりと言い放つ。

「なんだと、テメェ」

 取り巻きの男はは今にもリートに掴みかかって来そうな形相を浮かべた。
 だが、それをローガンが制する。

「まぁまぁ。クラスも持っていない弱い男が虚勢を張っているんだ。可愛いじゃないか」

 といやらしい笑みを浮かべる。

「僕たちは四人、同郷だから試験では当たらない。そうなると、誰かが君と戦うことになる。楽しみにしているよ」

 ローガンはそう高笑いした。

 リートは、ローガンの目を一瞥してからその場を去った。

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