クラス「無職」になってしまい公爵家を追放された俺だが、実は殴っただけでスキルを獲得できることがわかり、大陸一の英雄に上り詰める。

アメカワ・リーチ

文字の大きさ
41 / 51

41.一回戦へ

しおりを挟む


「いよいよ今日だな、リート、シャーロット。頑張れよ」

 ウルス隊長が、リートとシャーロットの肩に手を置いて、激励を飛ばす。

 シャーロットと出会ってから三週間。
 いよいよ、小隊長任用試験が今日から始まる。


 試験は、騎士が騎士見習いとタッグを組み、それぞれ三試合を行い、三連勝したものだけが第六位階(シックス)・小隊長に任じられるという内容だ。

 試合は、決闘方式で、どちらか片方でも加護の指輪の結界を破られた時点で敗北になる。
 すなわち、騎士だけが強くても試合には勝てず、騎士と騎士見習いが協力して生き残らなければならない。


 なお、騎士見習いについては、戦いの中で、騎士と同等の実力があると認められた場合、臨時で騎士への登用が行われる。つまり、何か条件が決まっているわけではなく、審査員の騎士たちが戦いの中身を見て決める、ということである。

 もっとも、基本的には三連勝したタッグの騎士見習いが採用されることがほとんどだ。
 なので、リートにとっても、シャーロットにとっても三連勝はほぼ必須と言っていい。

「準備は万全です。必ず、勝ちます」

 リートは隊長にそう宣言する。

 力強い言葉を選んだのは、自分のためではなかった。
 シャーロットが、実力を発揮できるようにという思いの方が強い。
 特に第一回戦は、シャーロットにとって大きな意味を持つ。

 今日行われる第一回戦。

 リート・シャーロットペアの対戦相手は、中央騎士団のランド・デイビーズだった。

 シャーロットを、小人が騎士になるなんて絶対に無理だと嘲笑った男である。
 だから、シャーロットにとっては、これは彼を見返すチャンスなのだ。
 勝って、ざまぁみろと、そう言ってやるのだ。

「じゃぁ、気をつけて行ってこい」

 ウルスに見送られ、二人は闘技場へと向かった。

 試験は、各騎士団の審査員が見守る中行われる。
 闘技場には、今日試合がある騎士とその弟子たちが集結していた。

 その中には、もちろん――


「お、まさか本当に現れるとはな」

 ――ランド。

 先日リートに“雑魚”扱いされて、怒心頭だった彼だったが、今日は冷静さを取り戻していた。やはりリートたちを見下した、ヘラヘラとした表情で話しかけてくる。

「もしかしたら、尻尾巻いて逃げるんじゃねぇかと思ったが。来ただけでも褒めてやる」

 リートは、そんな彼の戯言に付き合うつもりはなかった。

 ――だが、問題が一つあった。

 ランドが連れている相方。
 つまり騎士見習いの男。

 それが――明らかにただの騎士見習いではないのだ。

 年齢は30前後だろうか。屈強な剣士だ。
 頰には、昔にできたと思われる切り傷。まさに歴戦の猛者という印象だ。

 一目見て、それなり以上の実力を持っていることがわかる。

「あ、こいつ、俺の“相方”だよ。ジョンって言うんだ。見ての通り、超強いから」

 ランドがそう言うと、ジョンは無言の、けれど鋭い視線をリートたちに送った。

「よろしくな」

 リートはそれだけ言って、その場を離れる。


 ――と、目線の先に、よく知る人間を発見した。

 ――幼馴染のサラである。

「サラ、おはよう」

 サラには、シャーロットを弟子にとった直後に連絡をとっていた。

 もともとシャーロットは家を持っておらず、宿に泊まるお金もほとんどなく、月の半分以上を路上で生活していた。
 その事実をランドから聞いたリートは、すぐさま自分の給料で騎士用の社宅を手配したのだが、女子寮は男子禁制だったので、サラに面倒を見てくれとをお願いしたのだ。

 だからサラとシャーロットはすでに知り合いだった。

「リート、それにシャーロットも、調子はどう?」

「ああ、万全だ」

「私もです!」

「ところで、サラ。ちょっと聞きたいんだが……あの、ランドって男、知ってるか?」

 リートが聞くと、サラは頷く。

「中央騎士団ではそれなりに有名人だよ」

「あいつの連れてる騎士見習い、明らかに只者って感じじゃないんだが……」

「……あれはね、いわゆる“傭兵”だよ」

 サラが解説してくれる。

「傭兵?」

「そう。本当は騎士試験を受ければ余裕で受かるような人を連れて来て、お金を払って、弟子になってもらうの。それで小隊長試験を受ける。あのジョンって人、国境警備隊で10年以上勤めて、叩き上げて指揮官にまで上り詰めたって人らしいよ」

 なんだよそれ、とリートは内心で悪態をつく。

「騎士見習い制度は、人材を育てるのが目的なのに、金払って強いやつ連れてくるなんて、意味ないじゃないか」

「うん。本当にそうなんだけど、割と横行してるらしい」

 つまり、リートとシャーロットは、実質騎士二人を相手に戦わないといけないのだ。

「でもまぁシャーロットの目標は騎士になることなんだ。敵はちょっと強いくらいの方がちょうどいいか」

 リートはシャーロットの肩に手を置いて言う。

「大丈夫、お前は十分強い。絶対に勝てる。それは――イリス王女様も認めてくれただろ?」

 リートが言うと、シャーロットはキリッとした笑みを浮かべて拳を握りしめた。

「――はい!」

「よし、じゃぁ行こう」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...