【完結】復讐を決意した逆行令嬢の末路

抹茶らて

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保健室

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この学園の養護教諭は侯爵家嫡男であるメラリオである。緑の髪に少し深い緑の瞳のメラリオは実家を継がず、興味のある医学を学び、保健室の先生として働いている。

生徒のほとんどが貴族のご子息ご令嬢達であるため、貴族社会ならではの相談事や困った場面が多くあるもののそれなりに楽しく仕事をしていた。

が、今まさに困った場面に直面している。数分前…今日は来室が少なく休憩していたところ、公爵令嬢を抱えた男子生徒が駆けこんできた。

この学園では、仮病やケガは多いものの体調不良で来る生徒はほとんどいない。それもそのはず。貴族にはお抱えの医者がおり、体調管理は徹底的にされている。そして、学生の本分は勉強と言っても家庭教師を小さなころからつけている貴族の子供が学園に通うのは二の次。そのため、体調が悪いのに無理してくる生徒などいないのだから。
それにもかかわらず淑女の鏡と呼ばれる公爵令嬢のアミリアスが自分の力では動けないほどに弱っているのは何らかの要因があるのではないかと身分柄、勘ぐってしまう。

「先生すいません!いきなり倒れてしまって…彼女は大丈夫なのでしょうか。」

いきなりのことに気が動転しているのだろう。男子生徒はアミリアスとベッドに寝かしながらこの世の終わりのような切羽詰まった様子で問うた。

「うん、睡眠不足と疲労の蓄積かな。だからしっかり休んで寝たら大丈夫だよ。」

この子の体調はだけど…とメラリオは心の中で呟く。
まず第一にこの記録をどう書くか…である。

保険医であるメラリオには、物品の管理や学生の様子の把握などのため保健室への来室の記録を簡単に残す義務がある。
だが、公爵令嬢で次期王妃候補と名高いアミリアスがただの体調管理不足となると評価が下がってしまうだろう。それに、才女と謳われる聡明な彼女が体調管理を怠ったとは考え難い。そうならざるを得ない環境であったとしか言えない。

その要因が王妃教育や実家の手伝いに加え、婚約者の噂のことだろうと容易に想像できるが…倒れるまで無理をするとは16歳の少女一人にどれほどの負担がかかっていたのだと驚くほかない。

とりあえずキートリアには帰ってもらい、アミリアスにはベッドで休んでもらうことにする。

来室記録は過労による目まいと頭痛、それによる休息が必要と書いて、メラリオは息をつく。
そして考えを巡らせる、青白い顔で運ばれてきた齢16の少女の肩にはどれほどの重りいや重圧が掛かっているのか…自分では想像もできないほどのものなのだろうと…その様子を見てニヤリと笑う存在があること知らずに…



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