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第1章
毒の効力
しおりを挟む「ナーシィ……」
誰かが私を呼んだ声が聞こえたが、私は気にせず続ける。
今回の来訪にあたって、任務の内容は何も護衛だけではなかった。相手が敵意を示した場合、捉えること。その時生死は問わない。優先すべきはこちら側の命だ。
つまりは、王家及び宰相様や隊員など今回参加している者の命を守るためなら何をしても構わないということ。でも、隣国との関係がある以上は今回の陰謀を知る必要があると思い小瓶を持っている男は残している。
「さて、その毒遅延性でしょ?よくもまぁ、香りが影響する物なんて持ち込んでくれたね。」
そう言いながら私は男を囲っている壁にもたれかかりながら話し出す。
「なに、それはまことか?」
「はい、陛下。この小瓶の中の液体から漂う香りをこの部屋に充満させることで毒殺を図っていたと考えます。毒は遅延性のためすぐに症状が出ない、症状が出たときにはもう手遅れになる手筈だったのかと。」
「ほぅ、面白いことを聞いた。そこの者答えてみよ。今の内容は間違いないか?答えたら、毒を吸ってしまった其方を救えるかもしれぬぞ?」
「………」
陛下が命を助けられると言ったところで元から死ぬつもりで来ていたこの男には何の意味もないだろう。
「直接聞くしかなさそうですね。多少、人体に影響はありますがこのまま死ぬのを待っていてもどうにもならないと思うので精神干渉系の魔法を使用してもよろしいでしょうか?」
一応陛下へ確認をとる。頷くのを確認してから男と向き合う。
「ちょっと頭の中覗かせてもらいますね。」
そう言って私は手をかざし、無理やりに男の記憶を引きずり出す。
「う゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」
無理やり引き出した副作用か、男の悲鳴と同時に色々な場面が頭に流れてくる。隣国の皇帝らしき人との会話がほとんどを占めている。
「陛下、先ほど申し上げた内容で間違いありません。今回の来訪の理由も我がローリア王国の滅亡を図ったもので相違ありません。」
「ふむ、なるほどな。ならば、隣国の行動は感化できまい。ナーシィよ、此度の5人は手練れだと申したな。」
「はい、この者は騎士団長ですしね。」
私は陛下に聞かれたことを未だシールド内にいる男を指しながら答える。
「今回の来訪で隣国は多少なりとも勢力を失っておる。今が攻め時だろう。騎士団、魔術師団ともに準備ができ次第戦争を始める。」
冷戦状態であった隣国との戦いの火ぶたは切って落とされた。
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