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第2章
怪しい
しおりを挟む今日もお茶会の日――――
今日はいつもと違い令嬢の様子がおかしい。何がおかしいかと言われると分かんないけどなんかおかしい。そんな中でもお茶会は進んでいき、お花を摘みに行く令嬢に私が護衛としてついて行く。最早恒例となりつつある。
「ねぇ、あなた女性で護衛しているとか何を考えているの?いや、違うわね。何を狙っているの?殿下の婚約者は私よ?殿下の近くに女性は私だけでいいの、分かるかしら?」
令嬢は扇を閉じたまま私に向け言葉を放つ。
…あぁ、そういうことか。それが言いたくて2人になる様に、しかも怪しまれないように何回か回数を重ねて。中々頭が切れる…いや、こんな事するってことはただのおバカか…
「失礼ながら申し上げますが、私は殿下の護衛であってステファニア侯爵令嬢がお考えの関係ではございません。ですので、ご安心頂けると幸いなのですが…」
これで引いてくれたらあり難いけど…
「ハッ、ご安心頂けるとあり難い?どの口が言っているのだか。一緒に護衛をしているあの男と恋仲なのでしょう?卑しい方、1人では飽き足りず殿下にまで手を出そうだなんて。」
なわけないよね~っていうか、それブーメランなんですけど。
この面倒な事態にどう収拾つけようか考えていると、令嬢が先に行動に出た。
パンッ
すごい勢いで振りかぶった扇をそのまま私の頬に打ち付けた。その反動で扇が折れる。
「せっかく殿下の婚約者になれたのに…あなたがいるから政略結婚なんかに!こんなどこの馬の骨かも分からない女のどこがいいんだか。」
「す、すいません。しかし、以前は他のご令嬢の方もいらしておりました。失礼ですがキリレーナ侯爵令嬢が必ず選ばれると言う保証はどこにもなかったのではないでしょうか。」
そうだ、この令嬢がたまたま選ばれただけで以前から色んな令嬢が王城へ足を運んでいた。
だからこそ、この人の謎の自信はどこから来てるの。私が居なかったら政略結婚すらできていなかったかもしれないのに…
「ハッ、私のお父様がそんなヘマをするはずがありませんわ。私が必ず王妃になる。これは当然のことなのよ。それにあの護衛の男といい、騎士の人といい見目麗しい人が多いのね。これから過ごす場所としては最高じゃない。貴方さえいなければ。」
やっぱり侯爵家は黒か。何をしているかを突き止めないと。
「でもそれも、もう少しの我慢だわ。あなたの方からここにはいたくないと懇願することになるんじゃないかしら。」
それだけ言うと満足したのかお茶会の席に戻って行った。
席に戻った後、令嬢は一芝居を始めた。
「すみません、少し我儘を言ってもいいでしょうか。」
最初の数回以降はサーシスと令嬢の二人だけの席になっているため、当然今はサーシスとロイと私、令嬢の4人だけ。
「あぁ、構わないよ。」
「あの、王城での私の護衛を変えていただきたいのですが…よろしいでしょうか。」
「…それは女性じゃなくてもいいということかな?」
「えぇ、あの方でなければ誰でも…」
令嬢はそう言って、折れた扇に大事そうに両手を添えながら、いかにも悲しそうな雰囲気を作っている。
「そうか…ナーシィ、少し席を外してくれ。」
「はい。」
サーシスの命令により私はその場を離れる。
大丈夫、大丈夫。何も変わらない。ロイは私の味方でいてくれる…はず。
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