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第3章
避暑地
しおりを挟む不穏な空気感は抜けないまま、毎年恒例の避暑地へ休息の時期になってしまった。
夏はその暑さから王城から離れたクリスタル宮へ来ている。王家だけでなく貴族なら、夏の暑さから逃れるため避暑地へ別荘を置くことも少なくない。また、王都から遠く離れた辺境の地にあるため、王都へ滅多に行くことがないその地域の住民たちの王族を一目見れると話題のイベントになりつつある。
近衛隊及びその他指名された者はついて行くことになっている。少人数での護衛になるため、近衛隊のほかに連れて行く騎士、魔術師は実力を評価しているそうだ。そうだって言うのは、小耳にはさんだ程度の情報なため実際はどうなのかはよく分からない。だが、団長たちもついて行っているのは確か。そこで王城の警備や、王都で何かあった時の鎮圧のための戦力も考えると連れて行く者達と残る者達に実力差をつけすぎるのも良くない。
特に今年はサーシスの婚約者も一緒に行くため、いつも以上に熱気が凄い。
それに紛れて変なことをしでかす輩がいないか目を光らせるのが私たちの仕事だ。って言っても、目を光らせるのは住民たちが集まる行き帰りの道中のみなのだが……
余談だが、サーシスはあの事件の後、身を固める方が変な輩に絡まれなくて済むことから公爵家のご令嬢との婚約が決まった。どうも、陛下からのプッシュが凄かったらしい。
「はぁ……」
いらないことを考えていたせいか、集中力がいつもよりも落ちていることを自覚する。
「大丈夫か?」
思わず漏れた溜息にいち早く反応したロイが気遣ってくれる。
「うん、大丈夫。今のところは。もうすぐ避暑地に行く季節だしもっと気を引き締めないとだよね。」
「そんなに気負いすぎなくても大丈夫だろう。それに、気になって色々考えてしまいうことも理解できる。適度に手を抜いても誰も怒りはしないよ。」
あの相談した日からロイも調べてくれているようで、よく日中あくびをする様子を見かける。大変なのは私だけじゃないんだ。
何も起こっていない今、空振りに終わったらその方が良いのだろうが、なんだか申し訳ない気持ちになる。
「うん、ありがとう。でも、ロイも疲れてるでしょ?ちょっと休んでもいいよ。私が目を光らせておくし!」
気遣ってそういうと、コツンと痛くない拳骨が頭に落ちてくる。
「バカ、目に見えて弱ってる彼女をに任せる訳ないだろ。ちょっとは心配されてろ。」
今日も今日とて甘い彼氏さんを拝む。
「仕事中のイチャイチャはご遠慮くださーい。」
サーシスの声に現実へ戻される感覚がする。そうだった、サーシスの執務室だった。最近いつでもどこでも甘くなるロイに、周りを気にする余裕もなくなりつつある自分が怖い。
「ごめんなさい。」
「別にいいだろ。どうせお前しかいないし。気にせず仕事してろ。」
「おまわりさーん、この人です。この人に精神的パワハラを受けています。」
「そういえば今日なんだろ?避暑地への護衛の選別。」
「あぁ、俺の一枚かませてもらったがそれ以外にも決め方があるらしいぞ。だから、執務はこれで終わり。俺と今から訓練場へ移動だ。」
そう言って勢いよく立ち上がり、部屋から出ていくサーシスを追ってロイと訓練場へ急ぐ。
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