【完結】どんな君でも君が好き~最強魔術師溺愛に溺れる∼

抹茶らて

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第3章

思い出したくもない

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その日も任務に出ていた。この屋敷で任務に出るのは私だけじゃない。両親や使用人と言う名の組織員たちも例にもれず任務を遂行する。

一件の任務を終えて屋敷に帰ると、お母さまが上機嫌で出迎えてきた。お母さまが上機嫌なことも、ましてや私を出迎えるなんてこともないのに……何があったんだろう……

促されるがままコレクションをしている地下牢へ連れて行かれる。

「お母さま…今日はどう」

「ナーシィ、見てみなさい。キレイな男の子よ。今までで一番上物だわ。あぁ…この綺麗な顔が歪む姿が早く見たいわ。」

そうして狂ったような内容の言葉と一緒に見せられたのは顔が恐ろしく整った私と同じくらいの年代の男の子。
両親のコレクションは珍しい能力を持っている者もいるが、ほとんどが見目麗しい姿が目につき、連れてこられた者ばかりだ。

あぁ、この子も両親の…特にお母さまの毒牙に掛かってしまうのだろうか。こんなに小さい体で耐えられるのだろうか。少しくすんだグレーの髪と瞳を彩るそのキレイな顔から恐怖に歪んでいるのが見える。
これから起こるであろう悪夢のような日々を想像して恐怖に駆られているのだろう。何度も見てきた両親の狂人的な姿。一般の人では想像もつかないほどにむごいことをする。果たしてこの子が想像しているであろう程度のことで済むのだろうか。

男の子的には最悪の状況下で冷静に見当違いなことを心配するのを人ごとの様に感じている自分がいる。毎度のことに心を動かされていたら私の心がもたない。

助けを求める様な表情の男の子から視線を逸らし、踵を返して地下牢から出る。
階段を上がっている途中から意識が薄れ始めだんだん視界に靄がかかっていく。

目が覚めるとクリスタル宮の割り当てられた自室のベッドの上。

「はぁ……」

気分が悪くなる夢を見た。もうぼんやりとしか覚えていないが、昔の記憶だったのは確か。どんな内容だったのだろう。思い出せそうで思い出せない感じがもどかしい。

時計を見るとちょうど0時を回ったところ。みんな寝静まっている時間だろう。
もう一寝入りしたいけど、また嫌な夢を見たらと思うと気分が乗らない。

気分転換にシャミリア様が言っていた庭園に出てみる。薔薇をメインに色とりどりの旬の花が咲き乱れており、荒れつつあった心が穏やかになる。どうせならロイと一緒に来たいな。

香りもほんのり漂ってきて、ゆっくりとした時間が流れる。

隣国の王太子が私のことを知っているということは絶対にあの頃に出会ったのだろうと予想がつく。でもそこから進展がない。そこまで執着されるほどのことをした覚えがないのだから。

また考え込んでいたことに気が付いて、フッと肩の力を抜くとどこからか安心する匂いがしてくる。
この匂い、好きだなぁ。
そう思っていると、背後から誰かの腕に包み込まれ、温かい人肌を感じる。

「どこに行くんだ?」

大好きな匂いと大好きな声、大好きな腕の中。

「どこにも……ただ気分転換しようと思って。ロイこそこんな時間にどうしたの?」

「見たことある人影が見えたから…心配になって。」

「…ふふ、ありがとう。嫌な夢を見た気がするの。あの頃の…」

「そうか…夢は記憶又は願望、未来視色んな事が混ざり合ってできた虚像の様なものだ。起きると内容を覚えていることはほとんどない。だから気にするな。今そしてこれからを俺といることだけを考えてればいい。」

記憶、願望、未来……
あの夢が何を伝えているのか知られたら、このもどかしさは解消されるのだろうか。
ううん、それよりもロイの言っている通りロイとのことを考えていればいいか。

「うん…そうだね。」

そう言いながら振り返り、ハグをする。それから、目一杯ギュッとして、離れる。

「ここ、綺麗だよね。ロイと一緒に見たいなって思ってたんだよ。」

「それは良いこと聞いた。俺もナーシィのこと考えてたし。」

私がロイのことを考えてたみたいにロイも私のことを考えてくれてたんだと思うと、素直にうれしい。

次の日も仕事ではあるけど、ロイと久しぶりにゆっくりとした時間を過ごすことができた。







誰にも邪魔されない二人の時間を過ごしてその日は部屋へ帰った。心がポカポカと温まったことを感じながら。








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