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第3章
処分
しおりを挟む王太子の話は一国の王家の者が経験するには壮絶なもので、これまでの経験全てがこの人を変えてしまったのだと思った。
良くも悪くもこの人は純粋なのだと、思わざるを得ない。
確かに今回のことやその前のことは許せることではないかもしれない。人の命を軽く扱う行為を許せる訳がない。でも、そうしたのは私の両親でもあるし、教えてあげなかった周囲の大人の責任でもある。子どもは生まれる環境は選べないし、育つ環境も選べないのだから。
この王太子の処分の決定権は私にはないから何とも言えないけど…あくまで陛下の命令に従うまで。
次の日、陛下に呼び出された私たちは謁見の間に来ていた。団長たちの考えではもう王太子の処分が決まっているのだろうということだった。
「忙しい中、良く集まってくれた。これからこの王太子フランツ=リザラズの処分を言い渡す。」
そんな名前だったんだ。じゃなくて、もう陛下の中では決まっているんだなと他人事のように考えてしまう。
「フランツよ、其方が行った行為はとても許せるものではない。だが、そのような行動に出てしまったのは他でもない周囲の大人が何も教えてくれなかったのだろう。要は其方だけの責任ではないということだ。隣国の者達が亡くなっているが、幸いローリア王国の者達は誰一人として亡くなっておらん。よって、其方の魔法の実力を考慮して魔術師団の見習いとする。ナーシィの護衛でもなるといい。」
切れ者の陛下は私の時もそうだったけど、起こした事実だけでなく起こすに至った背景もちゃんと見てくれる。だからこその今回の処分なのだろう。これから、知らないことを知っていけばいいという陛下のやさしさ。
「ちょっと待ってください、陛下。」
私の横で静かに事の顛末を見守っていたロイが声を上げる。
え、どうしたのロイ。
「失礼ながら、ナーシィの護衛は俺一人で十分です。この者は魔術師団の見習いだけで十分でしょう。」
「ふむ、もっともな意見だが…狭量な男は嫌われるぞ?」
してやったりな顔の陛下に対して、とてもじゃないけど一国の王様に対してするような顔じゃないロイ。
そんなことでロイのことは嫌わないけど…
「嫌われても、好きな人の近くに男がいるのは嫌なので。」
そう言いのけたロイ。めちゃくちゃカッコよくない?この人が私の彼氏さんなんだよ?未だに信じられないけど…
「いいんじゃないですか?ナーシィもなんか喜んでますし。」
呆れ気味のサーシスがロイを揶揄っている陛下を嗜める。
誰の陛下の処分について異論を唱える者はおらず、王太子もといフランツ=リザラズの処分は決定した。
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