【完結】俺は遠慮します。

抹茶らて

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人を好きになることは

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「栄人、俺は栄人のことが好きだ。恋愛的な意味で。すぐに返事がほしい訳じゃない。ただ、そういうことに疎そうだから、俺の気持ちを知って意識してほしいと思ったんだ。」




え、会長?




「いきなりで驚いたかもしれない。すまない。でも栄人を取り巻く環境を見ているとゆっくりもしてられないと思って。」

「そんな、謝ることじゃ…あの、ありがとうございます。俺を好きになってくれて…」

本当にありがとうございます。でも俺は………

「会長、すみません。俺は会長の気持ちに応えることは出来ません。」

「…それは、誰か好きな人がいるからとかか?」

「いえ、好きな人はいません。でも、真剣に俺に好意を寄せてくれているのに、曖昧にして付き合うことは出来ません。ごめん、なさい。」




シーン




どちらも話さず、静寂な空気が部屋を包む。何を言われるだろうか。
緊張と恐怖が俺を襲う。

でも、俺は会長が大切だから…真剣に向き合いたいから…


人の好意を同じ好意で返せないと、また前の学校と同じことになりそうで、正直こういう空気や話は苦手だ。
でも、会長はこの学園の人たちはそんなことをするような人じゃないと思うから。俺は会長を信じて、正直に自分の気持ちを話した。後は、会長の返事を待つのみ。




「………そうか。好きな人がいないのなら、俺にもチャンスがまだあるということか。」




…………………………え?




「栄人の心は誰も物でもない。なら、俺にだって入れる隙はあるかもしれない、そうだろう?」

二ヤリと楽しそうにドヤ顔で笑う会長。諦めることもなく、同じ好意で返せなかったことに怒ることもなく、反対に今の状況がチャンスと捉える……

やっぱり会長を信じて良かった。会長の返事でなんだかホッとしてしまった俺は表情が緩むのを自覚する。


「…ふふ、なんですかそれ。なんでそんなに前向きなんですか。」

「俺は会長だからな。少しでもチャンスがあるのならそこに賭けてみるものだろう?誰にも譲りたくないものなら尚更。」

本当になんだよそれ…俺が今まで悩んでたのは何だったんだ。
涙腺が緩んできたのか会長との空間に落ち着いたのか、俺の涙腺が壊れそうだから適当なことを言って会長の部屋を後にする。


俺はちっぽけなことで悩んでたのか…誰かを好きになると醜くなるんじゃないのか。あんなに前向きにもおなれるのか…






人を好きになるっていいこと、なのかな……






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