ペルンス

シリウス

文字の大きさ
1 / 5

ルビン誕生

しおりを挟む
 人々は夜になると星空を見上げる。それは単に美しいだけでなくこの宇宙のどこかに自分たちと同じような存在がいること期待しているからだと思う。
 自分たちと同じように星を眺めている人たちがいるかもしれないと…





第一話 ルビン誕生


「ふう」
 夜の冷たい空気の中でタバコをふかしている大男がいた。よく鍛えられた逞しい筋肉を持ち、身長は悠に2mは超えているだろう。黒いサングラスをかけており、ガチガチに固めた白髪の長髪が夜の闇に浮かんでいる。彼は巨大な宮殿のバルコニーに肘をついて休息している様子である。視線の先には強い光を放つ大規模なビル街があった。
「俺が王になって2年、決して楽なことばかりではなかったな」
そういうと男は空を見上げた。快晴の夜で、街明かりにかき消されながらも多くの星を見ることができた。男は疲れた時は、こうしてバルコニーに出てはタバコをふかしながら星を眺めることが多かった。
「ジェノさんー!やっと見つけたわ」
大きめのドレスをまとった若い女性がひとりバルコニーにやってくると、ゆっくりとした足取りで男のもとに向かった。女性は大きなおなかをしていた。子供を授かっているようである。
「会議が終わるとさっといなくなっちゃうんだもん。でもやっぱりここにいましたか」
「レガス…」
そういうと男は女性の名前を呼び左腕で抱き寄せた。すると風に乗ってなびいた髪が男の筋肉に覆われた腕に絡みついた。一見黒く見える髪は、少し青みがかっているようである。レガスも決して小柄な女性ではなかったが、男と一緒にいるとまるで子供のように見えてしまう。
男の名前はジェノ。ジェノ・クライアル。地球から遠く離れた惑星セイピにあるペルンス王国の国王である。ジェノは2年前に国王に就任し、就任と同時に許嫁であったレガスと結婚した。ジェノが今いる場所はペルンスのシャルクスト市にあるトルン城。シャルクストはペルンス第一の都市で、政治と経済の中心地である。トルン城は沿岸に広がるビル街から少し内陸にある丘の上にたつ城でとてつもない大きさを誇る。200メートル級のビルが立ち並ぶ景色と丘の上の城はそれだけで美しい景観となり、国内外から多くの観光客が訪れる街でもある。
「おなかの中の赤ちゃんは元気かい。もうそろそろだよな」
「もう元気元気!何度も私のおなかを蹴るんだもの。きっとやんちゃな子になるわ。」
レガスはうつむきかけていた顔をあげると笑顔で話した。
「なんたってジェノさんの血が入っているんだもの。男の子だろうが、女の子だろうがあんまりやんちゃさせないようにしないとね。しっかり勉強させて教養を身につけて王様の子供として恥ずかしくないように育てないと!」
 レガスははきはきとした口調で笑顔のまま話した。よっぽど生まれてくる赤ちゃんのことが楽しみなのだろう。それに対して、ジェノはレガスの言葉を聞くと不自然に空を見上げてしまった。きっと過去にあまり思い出したくない思い出でもあるのだろう。
「ところで名前は決めてくれたかしら?。決めておいてって頼んだでしょ」
「名前か…さてどうしようか。」
「えー!もしかして考えてくれてないの!?」
レガスはジェノの腕を振り払うと、ジェノの方を向いて目を丸くしてジェノに尋ねた。
「ちゃんと考えてあるよ。『ルビン』なんてどうだろうか?」
「ルビン?」
ジェノは再びレガスを後ろから抱き締めると耳元に向かって答えた
「そう!男の子でも女の子でもルビン。ルビニス(希望、光という意味)からとってみた。俺が王になってからも裏の国との関係は修復していないだろ。二年前、俺が王になる前に父と母はメルガドゥーン(ペルンスの裏側の一国)に訪問した際に行方不明になってしまった。二年たった今も消息はつかめていない。それから半年後ペルンス第二都市のグラスジェンが裏の過激派に攻撃された」
 最初は耳元にささやいていたジェノであったが、両親の話になった頃あたりから声のトーンが上がりまっすぐ前を向いて話した。あたかもレガス以外にこの話を聞いている人がいるかのような口調だった。
 グラスジェンという言葉を聞いてレガスはごくりと生唾を飲み込んだ。それもそのはずである。グラスジェンとはレガスの故郷である。ペルンスとペルンスの真裏にあたる国々との間では昔から戦乱が絶えなかった。しかし、ここ100年ほどは、ペルンスに対する攻撃はなかった。それを自分の代になって許してしまったのが残念でならなかった。夏の始まりのとても清々しい晴れた日のことである。多くの犠牲者をだした。
「あれから一年半たった今も裏との関係は良くなったとは言えず、シャルクストも攻撃の対象になりかねない…。いまだかつてこんなことが無かっただけに今後はよりよい関係を築けるようにしなくてはいけない。生まれてくる子供には希望を持って生きてもらいらい。希望っていうのは、赤ちゃんに対してだけではない。俺たちにとってだってそうだ。ようやく巡り合えた子供なんだ。俺たちの希望に違いない」
「ルビン…いい名ね。」
うつむいていたレガスは真上を向いてジェノと目を合わせた。
その時だった。レガスはいきなり腰を抜かして地面にうずくまった。おなかを抱えながらレガスは言った
「陣痛が始まったみたい」
「本当か!」
 ジェノは一呼吸して落ち着くとレガスを抱えて医者のもとへレガスを運んだ。

 翌日の昼前に赤ちゃんはこの世に生まれた。真っ赤な髪の毛の元気な女の子だった。女の子はジェノの言うとおり「ルビン」と名付けられた。ルビンが生まれてからも裏の脅威は去っていなかったが、ジェノの懸命な努力もあってか何も起きずに済んだ。ルビンは自分が生まれる前にどんなことがあったかなど知る由もなくすくすく成長していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...