神さまのレシピ

yoyo

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神様のイジワル⑶

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   ドクドクドクドク……
   なんで……え……ど、どうしよう……


   サーっと血の気が引くような、キューっと内臓を掴まれるような、重大な過ちを犯したような不安が押し寄せて、心臓がうるさく鳴る。
   濡れてしまった部分が冷たくなってきて、余計にとんでもないことをしでかしてしまったと泣きそうになる。1人ではどうすることもできないから、早くナースコールを押して着替えなければいけないのはわかってるけど、情けないし、恥ずかしいしどうしても呼ぶことができない。

   隠れるようにそのまま布団を頭までかぶる。本当は小さく丸くなって少しでも自分を守りたい気持ちだったけど、今の颯にはそれすらもできなかった。それでも上半身は出来るだけ横を向いてまるまり、できるだけみっともない自分を隠したかった。朝になれば、全部バレてしまうと思うと、嗚咽が漏れでてきた。


   その時、カタッと病室の扉が開き、ビクッと体が固まる。当直の看護師が見回りに来たんだ。カーテンを軽く開けて、誰かが覗く気配があるけど、布団をかぶっているから誰が来たのかはわからない。


「颯くん?」


   湖城だ。湖城が来たことにホッとするのと同時に、湖城には知られたくないという思いで、声をかけられても、何も返すことができない。肩に手を置かれるとさらに、ビクッと体が固まる。


「起きてる?気分悪い?」

   ドキン、ドキン、ドキン……


   今、湖城に全部白状してしまえば、楽になることはわかっているけど、顔を出すことができない。また、頭はプチパニックになって止めていた嗚咽が漏れてしまう。


「どうした~?嫌な夢でも見た?大丈夫だから……ね。ちょっと布団めくるよ」


   あっさりと、顔部分の布団はめくられてしまい、覗き込んできた湖城と目が合う。だけど、泣いていることが恥ずかしくて、気まずくて目を逸らす。


「大丈夫?」


   湖城は颯の額に手を当てながら、体調を確認して言葉を続ける。バレたらどうしようという不安に押しつぶされそうになりながらも、湖城の手は優しくて、先程の不安が少しだけ和らぐ。しばらくの間、何も聞かずに颯の肩を摩り続けてくれていた。


「少しは落ち着いたかな……何かあったら、いつでもナースコール押してくれていいから。オレが来るようにするから……ね」


   そう言って、颯から離れて行こうとする。まだ、見回りが終わってないのだ。


   あ……待って……どうしよう……行かないで……
   声よりも先に、湖城のナースウエアの裾を掴んでいた。


「ん?どうした?」

「……あ……え……その……ト、トイレ……」

「あー、ごめん。トイレ行きたかった?ちょっと待って、今、車椅子用意するから」

「や……ちがっ……だから……その……ま……にあわなくて……」

「えっ?」

「うっうっ……ご……ごめんなさい……」
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