家族のかたち

yoyo

文字の大きさ
17 / 50

寒い朝の大失敗

しおりを挟む
 日曜日は、平日とは違い少しゆっくりな朝。朝ごはんの準備をして、時計を見ると8時を過ぎている。休みの日の勇は、自分で起きてくることが多いが、今日は8時を過ぎても起きてくる気配がない。

 どうしたかな……

 様子を見に部屋に行き、勇に声をかけるが、何だか歯切れが悪い。布団の中でモゾモゾ動き、起きているようだが、布団から出てくる気配がない。





※※※





 目を覚ますと、もう隣の布団には広くんの姿はなく、起きようと思った時に下半身に違和感を感じて、少しブルっと震える。

 ドキン……この感覚知っている……

 おそるおそる布団の中を覗いてみると、濡れたズボンと布団が目に飛び込んできた。

 ドクドクドク……
 やっちゃった……どうしよう……



 一時期、わざとおねしょをしたことがあったけど、わざとじゃないのは、ここに来た日以来だった。誰かが階段を上がってくる音が聞こえる……ガバッとまた布団に潜り混むと同時に、ガチャとドアが開く。

「ゆう~朝だよ~」

「………う…ん」





※※※





「そろそろ起きて、朝ごはん食べよう」

   カーテンを開けながら、勇に声をかけるとモゾモゾモゾと動く。

「どうした~。ゆ~う~」

 やっぱり、モゾモゾさせるだけで布団からは出てこない。

「具合悪い?」

 そう聞いても、布団から顔すら出そうとしない。
 この感じはもしかして……

「ゆう?もしかして、おしっこ漏れちゃった?」






※※※






 目が覚めた時からおしっこがしたかった。ズボンも布団もとうに冷え切っていて、体が冷えて余計におしっこがしたい。おねしょしちゃったことは、たぶん広くんは怒らない。
   でも……またわざとしたって思われたら、どうしよう……広くんと幸兄ちゃんと、わざしないと約束をしていた。

 今日はわざとじゃない……でも……
 そんなことが頭をグルグルして、早くトイレに行かなきゃいけないのに、布団から出ることができない。


「ゆう?もしかして、おしっこ漏れちゃった?」

 広くんにそう聞かれてドキッとして、じょわっと冷たかった股間が一瞬温かくなる。





※※※





 体を固めた勇を見て確信する。顔の辺りの布団を少しめくると、涙目の勇がいた。

「今朝はちょっと冷えたしね。さぁ、風邪ひいちゃうからお風呂に行こう」

 布団をめくると小ぶりな世界地図と、必死に股間を押さえて縮こまっている勇の姿があり「おしっこ出そう?!」と咄嗟に声を上げていた。






※※※






 ちょっとだけ、おしっこが出ちゃったけど、何とか食い止めた。広くんが顔を覗き込んで来て、目が合うと泣きそうになる。
 でも、それよりも今は、この漏れそうなおしっこだ……おしっこ……おしっこ、おしっこ……待って待って……

 さらにギューっと強く抑え、体を丸める。その時、布団がめくられ、一気に体が冷える。

 じょわっ…しゃわわわわわ…


「あっ…」

 抑えていた手をすり抜けて、おしっこが出てきてしまう。






※※※






「あっ」と声を出しかかと思うと、勇の押さえてる手の隙間から水が漏れ出てきて、さらに布団を濡らし地図を大きくしていく。もしかしたら、おねしょはちょっとだけで、だいぶ残っていたのかもしれない。

「あっ、あっ、どうしよう……うっうっう……だめ……出ないで……」

 勇は苦しそうに、まだ必死に抗っていた。

「大丈夫。そこで全部出しちゃおう」

「うっ…うっ……うわーん」

 プチパニックになっていた勇を安心させるために、声をかけたつもりが、逆効果になってしまった……






※※※






 1度出始めたおしっこは、もう止まらなかった。おねしょもしちゃったのに……おもらしも……どうしよう、どうしよう……広くんが見てるのに……

 ほんの数秒だったのかもしれないけど、とてつもなく長い時間に感じられた。あんなに冷たかった下半身が、今はじんわり温かい。
 広くんがボクを抱きかかえようとすると、急にものすごく恥ずかしくなって、どうしたらいいのかわからなくなって、手足をバタつかせて拒否してしまう。

「だめーこっちにこないでーうわーん」

 こんなこと言いたいんじゃないのに……止められない。だけど広くんは、さらに力強く抱きしめてきて動くことができなくなる。少しずつ強張っていた力が抜けていくのがわかった。






※※※






 勇を抱きかかえようとすると激しく抵抗し、こんなに激しく感情を出す勇を見るのは初めてだ。それでも力では、まだまだ勇に負ける訳がなく、固定させるように抱きしめる。

「うーうっうっ……」

 観念したのか、勇の力が抜けていく。

「大丈夫だからな。大丈夫、大丈夫。ちょっとビックリしちゃったな」

「うっうっうっ……うえーん」


 僕にしがみついて泣き続ける勇を優しく抱きしめて、落ち着くまで背中をさすり続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

投稿インセンティブで月額23万円を稼いだ方法。

克全
エッセイ・ノンフィクション
「カクヨム」にも投稿しています。

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

【完結】『続・聖パラダイス病院』(作品260123)

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...