家族のかたち

yoyo

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兄弟だから…⑵

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「ヘックションッッ」

「幸司、大丈夫?風邪?」

 一緒にバイトをしている浅岡幸也あさおかゆきやに声をかけられる。

「いや……これは、誰かが噂してるな……」

「あはっ。1回だから褒められてるんじゃない?」

「どうだか……」




 今朝の勇の失敗を思い出していた。オレも勇くらいの時、おねしょやおもらしが酷くなった時期があった。
 確か……母さんがいなくなって、少したった頃……


 勇が失敗して泣いている姿を見るたび、あの頃の苦い思い出が蘇り、少し胸がざわつく。漏らしちゃった朝は、恥ずかしくて悲しくて、罪悪感がいっぱいになった。
   小学生になって初めて盛大に漏らした時もそうだった。






 うそ……どうしよう……

 ぐっしょり濡れた布団とズボンを呆然と見つめる。幼稚園のときだって、ほとんどしてなかったのに……もう2年生なのに……それなのに……

 ドキ ドキ ドキ……
 怒られちゃう……怒られちゃう……


「幸?」

 急に後ろから父さんに声をかけられ、ビクンっと体が跳ね返る。


「あちゃ。漏らしちゃったのか。めずらしいな……」

 どうしよう……怒られる……どうしよう……
 父さんの方を見れない。


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ハッハッハッ……」

 うまく息ができない……


「こう。落ち着いて。ゆーっくり息をして。大丈夫だから。お父さん、怒ってないよ。大丈夫」

 過呼吸を起こしかけていたオレを抱き寄せて、優しく背中をさすってくれる。


「はぁ……うっう……ごめん……なさい」

「幸はおねしょなんて、ほとんどしたことなかったから、ちょっとビックリしたな。でも、もう大丈夫だから。洗ったらすぐにきれいになるから、何も心配いらないよ」

「うっ…うっん…」

「さあ、、お風呂に行こう。このままじゃ風邪ひいちゃう」

 濡れるのを気にせず、オレをひょいと抱き上げて、お風呂場に向かった。












 そうだ……幸も盛大にやらかしてたな……確か……酷くなった時期があったんだ〟勇に幸司の話をしたら、昔の記憶が一気に蘇ってくる。あの時期は、僕も幸司も少ししんどかった。

 勇がいることで、あの時の苦さを思い出してしまうのも事実だ。幸司とは、勇を引き取る前に何度も話をして、決めていたけど、幸司に辛い思いをさせてしまっているかもと思うことはあった。

 それでも、勇を引き取ったことは、後悔していない。


「広くん?」

 心配そうに、勇が覗き込んでくる。

「ん?大丈夫だよ」

 勇の頭を軽く撫でる。


「うん……あ、あのやっぱりおなかすいちゃった」

「そうだね。うん。一緒に食べよう。勇、ちょっと手伝ってくれる?」

「うん!」

 笑顔になった勇を見ると、昔の苦さも吹き飛ぶ。そんな勇を促して、キッチンへと向かった。
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