家族のかたち

yoyo

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憂鬱な季節⑵

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「今日は幸兄ちゃんいないの?」

 金曜日の夜、食卓を囲んでいるのは、ボクと広くんだけだ。いつもいる人がいないと、なんだかとっても寂しい。


「うん。幸也くんの家でお勉強するんだって。3日間泊まるって言ってたから、帰ってくるのは月曜日だね。寂しい?」

「……うん」

「ふふっ。じゃあ、2人でも寂しくないように、楽しんじゃおうか」



 そう言って、ご飯の後は一緒にお風呂に入って、一緒にゲームをして遊んだ。幸兄ちゃんがいないのは、寂しいけど、ちょっとだけ広くんを独り占めしてる感じがして嬉しい。
 今日は、いつもより少し夜更かしをして、広くんと寝室に入った。



「勇、今日は久しぶりに一緒に寝ようか」

「え……」


 ボクは大きく首を振る。だって、ここ1週間ずっと布団を濡らしている。一緒に寝たら、広くんの布団も濡らしてしまう。
   広くんは、ボクの思いを全て察したように優しく笑って、頭を撫でる。


「大丈夫だよ。2人で寝たら、あったかくて失敗しないかもしれないよ」

「でも……」

 広くんと一緒に寝たかったけど、失敗するのが怖かった。

「じゃあ、勇の布団で一緒に寝ようか。それならいいでしょ」


 広くんは枕だけを持ってきて、先に布団に入ったけど、ボクは足が動かない。


「つかまえたっ。そんなこわい顔をしてる子には、くすぐりの刑だ」と、固まっていたボクを抱っこして、お腹をくすぐってくる。


「いやはははは……ひひひひっ……やめてー……ひゃははっ」

 そのまま、布団の上に降ろされて一緒に布団に入り、ぎゅーっとされる。広くんと一緒に寝るのは、本当に久しぶりで、少しドキドキしたけど、あったかくてすごく落ち着いた。
 そして、そのままスーッと眠りに落ちていく。










 足をモゾモゾさる。

「勇、おしっこじゃないの?トイレに行っといで」

 すかさず、広くんに言われて、トイレに向かう。


 チョロチョロチョロ……
 いつもと違って、ちょっとずつしか出ない。



「勇、行くよー。早くおいでー」

「えっ……待って……おしっこがまだ……終わってないよ……」

「勇ー早くしないと、置いていちゃうよ」

「広くん、待って…待って。あーもう早くおしっこ終わってよ」


 チョロチョロチョロ……
 だけど、やっぱりちょっとずつしかでなくて、終わらない。

「なんで……」

「ゆうー先に行ってるよ」

「まってーまってー広くん。まってー」








「勇……勇、起きて」

 常夜灯明かりがボワーっと辺りを照らしている。広くんがすぐ横にいて、体を起こしてボクに声をかけていた。


「広くん……よかった……」

 広くんがいることに安堵したのは束の間で、お尻の違和感で一瞬で、またやってしまったと絶望的な気持ちになる。そしてそのまま、丸くなって布団に顔を埋める。


「勇。大丈夫だから。起きて着替えよう」

「うっ…うっ…ごめんなさい」

 起き上がると、ぐっしょりと濡れている布団が嫌でも目に入ってくる。ズボンは今、やっちゃったばっかりのようで、まだじんわり温かい。そして、一緒に寝ていた広くんのパジャマもお腹のあたりが、濡れて色が変わっている。


「あっ……どうしよう……ごめんなさい」

「あ、これは着替えれば大丈夫だから。ね」

 ボクの視線に気づいた広くんが、ボクの頭に手を乗せて、そう言った。




 着替えて、今度は広くんの布団に2人で入る。もう、早朝の4時で寝るのも微妙な時間だ。広くんは、いつものようにボクを抱きしめながら、優しく背中をさすってくれる。



「勇は、この時期、失敗しやすいんだよね」

「な……んで……」

「ん?勇が前にいた施設の先生が話していたよ」


 ドキッとする。広くんは、今までのことも全部わかってるのかもしれない……
 あの時みたくオムツを履いてと言われるのではないかと身構える。



「この時期は、何かあったのかな。何か嫌なこととか……」

「えっ……」

「勇が今、何か辛くてしんどそうだからさ」

 広くんの方をみると、ちょっと困った顔をして見つめてくる。



「お母さん……お母さんが入院したの……」

「そっか……入院したの、この時期だったのか……勇は寂しいの我慢してたんだな。だから体からのしんどいのサインだったのかな」

「サイン?」

「そう。そういう時は、どんなに頑張っても失敗しちゃいやすいだよ。だからね、勇はあんまり気にしなくてもいいんだよ」



「オ……オムツ履いた方がいい?」

 ずっと思ってたことを、思い切って聞いてみる。


「ん?」

「し、施設の先生は……履かないとダメだって……おねしょ……する子は……あ、赤ちゃんんと同じだって……」

「勇は履きたいの?」

 ボクは大きく首を振る。


「は、履きたくない……赤ちゃん……じゃない……」

 漏らしたばっかりで、説得力はなく、声は小さくなる。


「うん。勇は、赤ちゃんじゃないよ。お勉強もお手伝いも、出来ることいっぱいあって立派な小学生だ。勇が履きたくないなら、履かなくていいよ」

「でも……お布団……汚れちゃう」

「防水シーツ敷いてるし、シーツもパジャマも洗えば綺麗になるんだから、勇は何も心配することはないよ」



 広くんは、優しく笑いながら、全然大したことないって抱きしめる。広くんがそう言うなら、そうなのかもしれない。今まで気になっていた、1つの胸のつかえとれて、気持ちが少し楽になった。
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