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大事な存在⑴
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今週末は、月曜日が祝日で3連休になり、幸也の家に泊まることになった。父さんには勉強をするからと話していたが、本音はおねしょが続いてる勇を見てるのが辛くて、離れるためだった。
簡単な着替えと歯ブラシだけを持って、学校が終わったらそのまま幸也の家に行くことにしていた。
幸也には、両親がいない。まだ赤ちゃんの頃に、2人とも事故で亡くなっていた。小さい頃は、祖母と叔母の里子さんと暮らしていて、8歳の時に祖母が亡くなって、里子さんとオレのいた町に引っ越して来た。
里子さんが去年結婚して、今はその旦那さんと3人で暮らしている。幸也は、高校入学を機に家を出ようとしていたけど、それは里子さんに猛反対されたと聞いた。
この連休は、里子さん夫婦は旅行に出かけているらしい。幸也もしつこく誘われたけど、お邪魔虫になりたくないと断ったようだ。
「幸司が泊まりに来るの、ほんっと久しぶりだねー。今の家は、遊びには来ても泊まったことはないねー」
里子さんの結婚を機に、幸也は少し広めのマンションに引っ越していた。小学生の頃はよく泊まりに行ってたけど、中学生になった頃から、遊ぶことじたい少なくなってしまった。
マンションのエレベーターで8階まで上がる。だけど、5階あたりでガタンと止まり一瞬、電気も消えたが、それはすぐに復旧して明るくなった。
「えっ?マジで?止まった?」
オレと幸也は顔を見合わせる。5分程様子を見てみるが、全く動く気配はなく、エレベーターの係員呼び出しボタンを押す。エレベーター会社とは、連絡がついて、原因の究明と復旧に2時間程かかると言われた。
何とツイてないことか……
ケータイは繋がっていたから、ゲームをしたり、動画を見たりしながら、幸也と時間を潰す。止まってから1時間半程たった頃だろうか、だんだんと体が冷えてきて、我慢できないほどではないが、ブルっと少し震える。
その時、幸也の異変に気付いた。ソワソワと落ち着きなく、体を動かす。初めは寒くて、体を動かしているのかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。
「幸也、もしかしてトイレ我慢してる?」
若干泣きそうな顔の幸也が「バレた?」と力なく笑う。
「もう帰るだけだったし、まさかこんなことが起こると思わなかったから、油断した……」
「まだ30分くらいあるけど……」
「う……ん……だいじょ……うぶ……」
そう言う割には、もうかなり余裕はなさそうだ。
この苦しさはよくわかる。幸也のことを考えるとオレも苦しくなる。幸也は、我慢してるのがバレてからは、隠さずに前を押さえて耐えていた。
「う……」
「幸也、これ。体育の時、使ったから汚れてもいいから」そう言って、タオルを差し出す。
「あ……タオルなら、僕も持ってる……ごめん、カバンから出してくれる?」
幸也のカバンからタオルを出して渡し、オレのも一応側に置いておく。幸也は、ズボンの上からタオルでぎゅーっと股間を押さえる。
もう我慢しないで、出しちゃっていいよって言ってあげたかった。でも、オレがもし同じ状態で、そんなこと言われてもプライドが許さないし、出来るわけがない。幸也も同じだろう。
オレがしんどそうな幸也を見ていたくないだけなんだ。
「動いたら、オレのことは気にせず行っていいからな。カバンは持って行くから、全部置いて行け。鍵だけは持っていけよ」
幸也のカバンから鍵を出して、上着のポケットに入れる。
その時、ガタンとエレベーターが動く。
「あぁ……良かった……動いた。あとちょっとだから、頑張れよ」
「ん……」
エレベーター会社から、連絡が入り対応してる時に8階に到着して、幸也は「ごめん」と呟いて急いで出て行く。今回、エレベーターが止まった原因は、何らかの要因で安全装置が働いてしまったとのことだった。本来は、地震や火災などの時に働く機能であるはずだが、誤作動を起こしたようだ。改めて謝罪に行くということで、オレもエレベーターから解放された。
簡単な着替えと歯ブラシだけを持って、学校が終わったらそのまま幸也の家に行くことにしていた。
幸也には、両親がいない。まだ赤ちゃんの頃に、2人とも事故で亡くなっていた。小さい頃は、祖母と叔母の里子さんと暮らしていて、8歳の時に祖母が亡くなって、里子さんとオレのいた町に引っ越して来た。
里子さんが去年結婚して、今はその旦那さんと3人で暮らしている。幸也は、高校入学を機に家を出ようとしていたけど、それは里子さんに猛反対されたと聞いた。
この連休は、里子さん夫婦は旅行に出かけているらしい。幸也もしつこく誘われたけど、お邪魔虫になりたくないと断ったようだ。
「幸司が泊まりに来るの、ほんっと久しぶりだねー。今の家は、遊びには来ても泊まったことはないねー」
里子さんの結婚を機に、幸也は少し広めのマンションに引っ越していた。小学生の頃はよく泊まりに行ってたけど、中学生になった頃から、遊ぶことじたい少なくなってしまった。
マンションのエレベーターで8階まで上がる。だけど、5階あたりでガタンと止まり一瞬、電気も消えたが、それはすぐに復旧して明るくなった。
「えっ?マジで?止まった?」
オレと幸也は顔を見合わせる。5分程様子を見てみるが、全く動く気配はなく、エレベーターの係員呼び出しボタンを押す。エレベーター会社とは、連絡がついて、原因の究明と復旧に2時間程かかると言われた。
何とツイてないことか……
ケータイは繋がっていたから、ゲームをしたり、動画を見たりしながら、幸也と時間を潰す。止まってから1時間半程たった頃だろうか、だんだんと体が冷えてきて、我慢できないほどではないが、ブルっと少し震える。
その時、幸也の異変に気付いた。ソワソワと落ち着きなく、体を動かす。初めは寒くて、体を動かしているのかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。
「幸也、もしかしてトイレ我慢してる?」
若干泣きそうな顔の幸也が「バレた?」と力なく笑う。
「もう帰るだけだったし、まさかこんなことが起こると思わなかったから、油断した……」
「まだ30分くらいあるけど……」
「う……ん……だいじょ……うぶ……」
そう言う割には、もうかなり余裕はなさそうだ。
この苦しさはよくわかる。幸也のことを考えるとオレも苦しくなる。幸也は、我慢してるのがバレてからは、隠さずに前を押さえて耐えていた。
「う……」
「幸也、これ。体育の時、使ったから汚れてもいいから」そう言って、タオルを差し出す。
「あ……タオルなら、僕も持ってる……ごめん、カバンから出してくれる?」
幸也のカバンからタオルを出して渡し、オレのも一応側に置いておく。幸也は、ズボンの上からタオルでぎゅーっと股間を押さえる。
もう我慢しないで、出しちゃっていいよって言ってあげたかった。でも、オレがもし同じ状態で、そんなこと言われてもプライドが許さないし、出来るわけがない。幸也も同じだろう。
オレがしんどそうな幸也を見ていたくないだけなんだ。
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その時、ガタンとエレベーターが動く。
「あぁ……良かった……動いた。あとちょっとだから、頑張れよ」
「ん……」
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