家族のかたち

yoyo

文字の大きさ
45 / 50

母さん⑶

しおりを挟む
   久しぶりに母さんのことを思い出して、ここまで一息に話たが、昔の気まずい思いや怒られた苦い思いも迫り上がってきて、苦しくなる。
   幸也も篠田先生も、真剣に話を聞いてくれて、オレの話が途切れると、シーンと辺りは静まり返った。


「大丈夫か?」と先生に声をかけられ、俯いていた自分に気づく。


「えっ……あーはい。昔のこと思い出したら、ちょっと……」

「少し休憩するか?しんどいならまた、別日でもいいし」

「いや……先延ばしにする方が、しんどいかも……」



   こんな気持ちで帰りたくなかったし、こんな状態なら、今晩失敗するのは目に見えている。手をつけてなかった烏龍茶に口をつけて、少し落ち着く。



「ここまで詳しくは以前は聞いてなかったよな。小学生のときは、怒ると怖いけど、いなくなって寂しいって言ってたかな」

「今もだけど、正直、母さんのことはよくわからない……」

「どういうこと?」



   そう聞かれて、考え込んでしまう。
   母さんのことをどう思っていたのだろうか……
   感情的に怒る母さんは、怖かった……

   だから、怒られないように気を張ってた部分はあったと思う。

   でも……優しかった時もあった……
   一緒に遊んだり、お出かけしたり……


「コウはお母さんのこと、好きだった?」



   好きだった……でも、素直に言葉にできない自分がいる。何でかわからないけど、苦しくて、目に涙が溜まる。

   何でオレ泣いてるんだろう……
   訳がわからない……


   くるしい……くるしい……くるしい……




「……ウ、コウ!ゆっくり息を吐いて。コウ、こっちみて」

   気づくと、過呼吸になっていいるオレの背中を先生が摩っている。幸也も心配そうにオレの顔を覗き込んでいた。



「はっ…はっ…はっ…はぁ……はぁ……セン…セ……母…さんは……なんで……出て行ったの……かな……」


「え?」


「はぁ……はぁ……オレが……母さんのこと……怒らせてばっかり……だったから……だから……オレのこと……嫌になったのかなって……オレのせいで……母さんは……」



   そうだ……母さんが出て行ったのは、オレが悪いからじゃないかって思っていた。

   でも、父さんにもこわくて聞けなかった……
   オレのせいで、母さんは出て行ったのって……




「ちがうよ!!」

   幸也が大きな声を出す。


「ユキ……」

「幸司のせいではないよ!それは絶対にない!」

「ゆき……や……」



「そうだな……俺もコウのせいではないと思うよ。コウの話から推測しただけだから、断言はできないけど、たぶんお母さんは精神的な病気だったんじゃないか。気分が高まっている時は、後先考えず衝動的な行動をしてしまうんだ。お母さんもそうだったんじゃないかと思うな」


「え……」

「だから、コウのせいではないということ」

「そうなの……かな……」

「そうだよ!!」

   また、幸也が大きく割り込む。


「あぁ。もう自分を責めなくてもいいんじゃないか?」


   先生と幸也にそう言われて、少しだけ今まで心の奥底に閉じ込めていた重荷が軽くなるような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

投稿インセンティブで月額23万円を稼いだ方法。

克全
エッセイ・ノンフィクション
「カクヨム」にも投稿しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】『続・聖パラダイス病院』(作品260123)

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...