婚約解消された私はお飾り王妃になりました。でも推しに癒されているので大丈夫です!

初瀬 叶

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番外編

番外編・その23

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「素敵な絵ですね」

そこには、雨に烟る田園風景を描いた大きな絵が飾られてあった。

暗い絵なのに、何故だろう…包み込むような優しさがある。


「あぁ。私が彼の絵の中で1番気に入った絵だ。
彼はプレゼントと言ったのだが、買い取らせて貰ったよ。
これにはそれだけの価値がある」

今まで、芸術になんて興味のなかった父の口から出た言葉に、私は少し微笑むと、

「お父様も一端の目利きですわね」
と少しからかった。

「意外かい?実は私が1番意外だと思ってるよ。フローラ様のお陰かな?」
と父も笑顔になって、後ろに立つナラへと問いかけた。

ナラも、

「きっと、元々持っていた感性ですわ。今まではお仕事に忙殺されてその感性に耳を傾けてこなかっただけでしょう」
と優しく微笑んだ。

自分の親がイチャイチャしているのを見るのって、なんだか恥ずかしい。
だけど、2人がとても幸せそうに微笑み合うから、私も嬉しくなってしまう。

「ゴールドマン伯爵は…まだ前の奥様を想っていらっしゃるのでしょうか?」
と私は絵を見ながら父に問いかける。

「いや…どうだろうな。彼の書き始めた頃の絵を見せて貰ったが…あれは悲しみに溢れていた。
彼は実際には泣いていないのに、絵の中で涙を流しているように感じて心が痛くなったよ。
でも…この作品は最近彼が描いた物だ。クロエ、お前はどう思う?」

「この絵の雨も彼の涙とするならば…これは『感謝の涙』…そういう風に見えますわ。
とはいえ、私も芸術には疎いので、感じたままの感想ですけど」
と私が答えれば、

「私もそう見えるよ。この絵を見ても、心が痛くなる事はないからな」
と父は小さく頷いた。

「私、ゴールドマン伯爵に会ってみたいのですが、彼が王都に来る時期はわかりますか?」


「いや…彼が王都に来る前には連絡が来るんだが…今の所そういう手紙は貰ってないよ」
と言う父の言葉に、

「そうですか…釣書の件もありますし、私が連絡を取っても?」
と私は訊ねる。

「もちろん。私も釣書の件については聞いてみたいな」



こうして私は、ゴールドマン伯爵との面会に望む事になった。




「わざわざ御足労頂いて申し訳ございません。クロエ・オーヴェルです。
夫のマルコにはダイヤモンドの件で何度かお会いしているかと思うのですが」

「ええ。マルコ様とは、何度か交渉をする際にお会いしました。ヴィンセント・ゴールドマンです。
オーヴェル侯爵には侯爵がその…王妃陛下であった時にご挨拶を…」

と少しばかり言いにくそうにする伯爵に、

「そんなに気を使わなくても大丈夫ですわ。離縁は私にとっても…陛下にとっても前向きな決断でしたので」
と私は微笑んだ。

「侯爵が王妃になられ…この国は変わりました。いや…まだ途中ではありますが、未来は明るい…そう私は思います」

「そう言っていただけると…僅かな期間ではありましたが、国民の為に働く事が出来て良かったと、心から思う事が出来ます」

私とゴールドマン伯爵の面会はこうして穏やかに始まった。
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