婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第7話

着替えを済ませて、父の寝室へ向かう。
脇には今日の学園の課題。

部屋へ入るとメイド長のマージが、

「エリンお嬢様、おかえりなさいませ」
と頭を下げた。

「マージ、お父様の事ありがとう。変わりはない?」

「はい。よく眠っておられます」

眠っている……か。眠っているだけなら、いつか目覚めてくれる……そう信じたい。

私はマージと場所を交代し、近くにあったテーブルを寝台の横に置いた。

「さて……と」
私は課題を開くと教科書を片手にペンを走らせた。

ナタリーなら、ズル休みも許される……そんな得な一面を持っている。結局、課題はアーサーに手伝って貰ったと言うから、私はますます呆れてしまった。アーサーも父が倒れて以降、ずっと忙しく働いている。それこそ、休む間も惜しんで。そんなアーサーに余分な仕事をさせるなど……と叱責しようかとも考えたがナタリーに言った所で、きっと気にもしないか、また泣いて私を逆に責めるだけだと思い、やめた。

「ファ~」
誰も見てない事を良い事に私は欠伸を一つする。……ずっと心がモヤモヤしているが、私はそれを誤魔化す様に、また課題に向き合う事にした。


「……リン、エリン」
私を呼ぶ声が聞こえ、同時に肩を揺らす手の温もりに気付く。

目を開けて顔を上げると、母が私を見ていた。

「あ、お母……様」

「エリン、もうお夕食の時間よ。貴女も疲れていたのね」
と、教科書の跡が付いた私の頬にそっと母は手を添えた。

「あ…、私!眠ってしまったのね。ごめんなさい。お父様は……?!」
私が慌てると、

「大丈夫よ。何も変わりないわ。エリン……貴女に負担を掛けてばかりね。ごめんなさい」

「いいえ。お母様だってずっと働き詰めだわ」

「貴女はまだ私達の子どもなのに……急いで大人にさせてしまったみたいで、申し訳ないわ。母親失格ね」
と言う母に、私は急いで顔を横に振った。

「パトリック伯爵家に嫁げば、もっと厳しい教育が待っていると聞いたわ。こんな事で根を上げていたら、ハロルドのお嫁さんにはなれないもの」

「確かに、あの家は格式高くて。だから貴女が選ばれたのだと思うわ。貴女は私達の自慢の娘よ。自信を持って幸せになってね」
と言う母の言葉が心に響く。自分のやってきた事は間違いなかったのだと、そう言って貰えた気がした。

しかし……私の心のモヤモヤが晴れる事はない。ハロルドとナタリーが二人で出掛けていた事が事実なのかを確認する事も出来ず、ずっと悶々とした毎日を過ごしていた。


そして、その日は突然訪れた。

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