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第32話
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「お嬢様……本当にお美しい……」
「エリン……良く似合うわ。凄く綺麗よ」
とバーバラと母にドレス姿を褒められ、私は少し恥ずかしくなって俯いた。
確かにこのドレスは少し背の高い私にはピッタリで、自分で言うのも何だが、三割増しぐらいに見える。
複雑に編まれた髪の毛にベールを被せて完成だ。
「私じゃないみたい……」
いつもはポニーテールの私も今日だけはお姫様の様。つい自分の姿を見た私の口からは、そう漏れ出ていた。
マーメードラインの白いドレスはそれは見事な刺繍が施されており、王都でも見た事がないぐらいだ。
「物凄く綺麗な刺繍ね」
と母もバーバラも目を見張っていた。この領のお針子達はとても腕が良いようだ。
『コンコンコン』
と控室をノックする音にバーバラが反応して扉を開ける。
そこには今日の挙式を執り行ってくれる司祭が立っていた。
「用意は出来ましたかな?先程行った予行練習通りにすれば良いですからね」
と笑顔の司祭に私は「はい」と返事をした。
父は不在なので、教会の入口からレナード様にエスコートをして貰う事になっている。
司祭の後ろから私は教会の入口を目指す。扉の前には既にレナード様の姿があった。
「では私は中でお待ちしていますよ」
と司祭が私の前から離れると、レナード様と目が合った。
「お待たせいたしました」
と言う私に、
「…………女神」
と呟いたレナード様は顔を真っ赤にして俯いた。
……クレイグ辺境伯領は女神信仰でもあるのかしら?
レナード様は物凄く背が高い。少し背が高い私がヒールを履いていても、下から覗き込めてしまう。
「どうかなさいましたか?」
と尋ねる私に、
「………どうもしない」
とレナード様は顔を逸らした。……熱がある……とかでは無いわよね?
すると、扉が開く。私は急いでレナード様のタキシードの裾をツンツンと引っ張った。
レナード様はハッとして腕を私に差し出す。
私は微笑んでその腕にそっと手をかけた。
結婚式は厳かに行われた。しかし何故かレナード様は私と目を合わせてくれない。その上何かブツブツ言っているのだが聞き取れないし、私も緊張でそれどころではない。
そして何とか宣誓を終え、さぁ結婚誓約書に署名を……という段になって私はふと手が止まる。
レナード様の署名が……『レナード・クレイグ』となっているのだ。あれ?まだ子爵を賜っていないのかしら?そう疑問が湧き上がるが、ここで私が尋ねる事は出来ない。私は不思議に思いながらも自分の名前をその下へと書いた。
「エリン!!おめでとう」
教会を出た瞬間、笑顔の友人が私に駆け寄る。
「ミネルバ!!来てくれたの?!」
「親友の結婚式だもの!当たり前じゃない。結婚式ギリギリになっちゃったけど、間に合って良かったわ」
確かに卒業式の日、ミネルバには一週間後に挙式になるかもしれないと話はしていたが、あまりに急な話で私も誰かを招待するなど考える余裕もなかった。
「エリン、おめでとう。お前が花嫁なんて……感慨深いな」
とミネルバの後ろから現れたのはアンソニーだ。
アンソニーは眼鏡を指であげながら、
「ジュードの馬鹿は殴っておいた。……僕の手の方が痛かったけど」
と笑う。丸顔のアンソニーは笑うととても幼く見えたが、私より三つも歳上だ。
すると、スッとレナード様が私の前に立った。
あれ?ちょっとアンソニーの顔が見えなくなっちゃったんだけど?
「エリン……良く似合うわ。凄く綺麗よ」
とバーバラと母にドレス姿を褒められ、私は少し恥ずかしくなって俯いた。
確かにこのドレスは少し背の高い私にはピッタリで、自分で言うのも何だが、三割増しぐらいに見える。
複雑に編まれた髪の毛にベールを被せて完成だ。
「私じゃないみたい……」
いつもはポニーテールの私も今日だけはお姫様の様。つい自分の姿を見た私の口からは、そう漏れ出ていた。
マーメードラインの白いドレスはそれは見事な刺繍が施されており、王都でも見た事がないぐらいだ。
「物凄く綺麗な刺繍ね」
と母もバーバラも目を見張っていた。この領のお針子達はとても腕が良いようだ。
『コンコンコン』
と控室をノックする音にバーバラが反応して扉を開ける。
そこには今日の挙式を執り行ってくれる司祭が立っていた。
「用意は出来ましたかな?先程行った予行練習通りにすれば良いですからね」
と笑顔の司祭に私は「はい」と返事をした。
父は不在なので、教会の入口からレナード様にエスコートをして貰う事になっている。
司祭の後ろから私は教会の入口を目指す。扉の前には既にレナード様の姿があった。
「では私は中でお待ちしていますよ」
と司祭が私の前から離れると、レナード様と目が合った。
「お待たせいたしました」
と言う私に、
「…………女神」
と呟いたレナード様は顔を真っ赤にして俯いた。
……クレイグ辺境伯領は女神信仰でもあるのかしら?
レナード様は物凄く背が高い。少し背が高い私がヒールを履いていても、下から覗き込めてしまう。
「どうかなさいましたか?」
と尋ねる私に、
「………どうもしない」
とレナード様は顔を逸らした。……熱がある……とかでは無いわよね?
すると、扉が開く。私は急いでレナード様のタキシードの裾をツンツンと引っ張った。
レナード様はハッとして腕を私に差し出す。
私は微笑んでその腕にそっと手をかけた。
結婚式は厳かに行われた。しかし何故かレナード様は私と目を合わせてくれない。その上何かブツブツ言っているのだが聞き取れないし、私も緊張でそれどころではない。
そして何とか宣誓を終え、さぁ結婚誓約書に署名を……という段になって私はふと手が止まる。
レナード様の署名が……『レナード・クレイグ』となっているのだ。あれ?まだ子爵を賜っていないのかしら?そう疑問が湧き上がるが、ここで私が尋ねる事は出来ない。私は不思議に思いながらも自分の名前をその下へと書いた。
「エリン!!おめでとう」
教会を出た瞬間、笑顔の友人が私に駆け寄る。
「ミネルバ!!来てくれたの?!」
「親友の結婚式だもの!当たり前じゃない。結婚式ギリギリになっちゃったけど、間に合って良かったわ」
確かに卒業式の日、ミネルバには一週間後に挙式になるかもしれないと話はしていたが、あまりに急な話で私も誰かを招待するなど考える余裕もなかった。
「エリン、おめでとう。お前が花嫁なんて……感慨深いな」
とミネルバの後ろから現れたのはアンソニーだ。
アンソニーは眼鏡を指であげながら、
「ジュードの馬鹿は殴っておいた。……僕の手の方が痛かったけど」
と笑う。丸顔のアンソニーは笑うととても幼く見えたが、私より三つも歳上だ。
すると、スッとレナード様が私の前に立った。
あれ?ちょっとアンソニーの顔が見えなくなっちゃったんだけど?
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