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第51話
しおりを挟む「レナード!!会いたかったぞ!!」
私達が挨拶をする前に殿下は私達の方へと自ら近づき、隣のレナード様に抱きついた。レナード様は迷惑そうな顔で
「挨拶ぐらいさせろ」
と言って自分をぎゅうぎゅうと抱き締めている殿下の腕を引き剥がす。
「お前が結婚式に招待してくれなかったから、寂しかったじゃないか!」
「王族を呼べば、警護に人を割かねばならん。折角の結婚式の日ぐらい、皆に休息を与えたかったんだ」
「お前だって、一応王位継承権を持ってるくせに何を言っているんだよ」
「俺は末席だ。回ってくる事もなければ王になるつもりもない。クレイグ辺境伯を継ぐ者の役割と言われて甘んじて受け入れてるだけだ」
私は二人のやり取りに目を丸くした。王太子殿下って……こんなにフレンドリーな方だったかしら?
私もデビュタントと……数える程しか夜会に参加した事はないけれど、もう少し……威厳がおありだったような。
そんな私の視線を感じたのか、王太子殿下は私の方へと顔を向けて、
「君がレナードのお嫁さんかぁ。スラっとした美人だなぁ」
とこれまた気さくに声をかけてきた。
「エリン・クレイグと申します。アレクサンダー王太子殿下におかれましては……」
と言う私の挨拶に被せる様に、
「あ~あ~、堅苦しい挨拶はいいよ。これから遠い親戚になるんだし」
という殿下に、
「気安く話すな。そして、見るな」
とレナード様が殿下からの視線を遮った。
「え~!もっと見せてよ~!ケチ!」
と殿下の不満そうな声が聞こえる。私の視界にはレナード様しか見えていないけど。
王宮へ来る事を渋っていたので、てっきりお二人は仲が悪いのかと思っていたが……逆の様だ。いや、逆というより、殿下がレナード様に懐いていると言った方が正解の様な気がする。
殿下の方が歳上だった気がするのだけれど、まるで子どもの様な話し方の殿下に私は面食らった。
「見るな。減る」
「え?レナード……もしや嫉妬?いやだねぇ~男の嫉妬なんて見苦しいよ。私がどれだけ美丈夫でこの国の全ての女性を虜にしているからってみっともない」
……私の今までの王太子殿下のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。確かに、王太子殿下もかなり美しい顔をしていらっしゃるわ。金髪碧眼のまさに王子様といった風貌だし。レナード様とは……瞳の色は同じね。髪はレナード様は焦げ茶だけど。
『みっともない』と言われたレナード様の肩がピクリと揺れる。……怒っていらっしゃるのかしら?
しかし、殿下はそんな事にも気づかずに、
「レナード!今日こそ剣の稽古を付けてくれ!『今度王都に来たら』などと約束したくせに、全然顔を出さないんだからな!」
「そんな暇はない」
「ダメだ!団長だってお前との手合わせを楽しみしているんだ。勝ち逃げなんて許さないってさ」
……私抜きで会話はどんどんと進んでいく。この流れ……きっとレナード様は王宮でご用を済ませなければならなくなりそうだ。……さて、私はどうしましょう?
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