婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第63話

「ハリソン……レナードに八つ当たりするのはよせ。お前が不貞腐れても明日の予定は何も変わらん」
お義父様にそう言われたハリソン様は一瞬顔を歪めたが、直ぐ様乱暴に席を立ち、

「わかってますよ。だけど向こうから断るでしょうよ。しがない子爵に嫁ぐのなんて嫌でしょうから」
と言い残して、食堂を出て行こうとした。

「おい!ハリソン!」

そう呼ぶ声に振り返る事もなく、ハリソン様はさっさと部屋を出て行く。
そこにはほとんど手つかずの肉が皿に残っていた。


「まったく……」
お義父様はため息を吐くと、また食事を再開させた。

「明日は見合いですか?」
レナード様の問いに、

「あぁ。そうなんだが、あいつは例のごとく嫌がっていてな。お前がもうすぐ当主になる。兄がこの屋敷に居座っていてはおかしいだろう?
さっさと腹を括って嫁を取り、子爵を名乗れと言ったんだが……」
お義父様は緩く首を横に振った。

……私もコンプレックスを持っていたから、ハリソン様の気持ちが分からない訳ではないのだが……。
出来れば、ハリソン様にも私にとってのレナード様の様な、自信をくれる人が見つかれば良いのにと思う。明日のお相手が都合良くそうであれば良いが。
少し重たい雰囲気の中、私達は残りの食事を平らげた。



その夜。

夜中に目覚めた私は喉の渇きを感じて、隣で眠るレナード様を起こさないようにそっと寝台を降りた。

水差しを持ち厨房へ向かうと、灯りが漏れているのが見える。

「まだ誰か働いているのかしら……」
静けさの中、私の呟きが大きく響いた気がした。


私がそっと覗くと、そこには……

「ハリソン様……?どうされました?」
私と同じ様に夜着にガウンを纏ったハリソン様がいた。

私に声を掛けられたハリソン様はピクリと驚いた様に肩を揺らしたが、直ぐ通常通りの不機嫌そうな顔つきに戻った。

「なんだ……お前か。別に、少し喉が渇いただけ……」
そう言いかけたハリソン様のお腹が『グーッ』と大きな音を立てた。

ハリソン様は顔を赤くしてお腹に手を当てると、その音を誤魔化す様に大きな咳払いをする。

「ぼ、僕はもう寝る!」
と厨房を出て行こうとするハリソン様に私は慌てて声を掛ける。

「あの!……何か召し上がりませんか?簡単なものしか作れませんけど……」

「べ、別に必要ない!は、腹が減ってるわけでは……」
と、そのハリソン様の言葉を遮る様にまた『グーッ!』とお腹が派手な音を立てた。

言葉とは裏腹にハリソン様のお腹は素直に空腹を主張している様で、私はついおかしくなってクスリと笑ってしまった。

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