婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第69話

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しかし、私が声を掛けてもレナード様からの答えはない。

「レナード様?どうされました?どこか具合でも?」
私その様子に心配になり、急いで寝台に近付くと、水差しをサイドテープへと置いた。

俯いているレナード様の顔を見るため、床に膝をつき顔を見上げる。

「どうされました?」

「……何を話してた?」
何を……?もしかして、先程までハリソン様と話をしていた、アレかしら?

「ハリソン様と、という事でしょうか?」
私がそう言うと、コクンと一つ頷くレナード様。その表情は暗い。

「ハリソン様がお腹を空かせていたようなので、有り合わせの物でスープを。ちょうど、私も喉が渇いて水を汲みに行ったタイミングでしたので」

その言葉を聞いたレナード様は顔をガバリと上げた。

「エリンの手作り??俺は食べた事がないのに……」
と言葉と共にまた俯くレナード様。

「大したものではありませんよ。ハリソン様は夕食をあまり召し上がっていなかったようなので、お腹を空かせたのでしょう。レナード様はしっかり召し上がっていらっしゃったでしょう?」

「兄が夕食を食べなかったのは、兄の自業自得なのに……何故エリンがそんな事を」

「……食べたくても食べられない物というのがありますもの」

誤解をされたままのハリソン様を可哀想に思い、ほんの少しだけ事実を話す。別に罰で聞いた恥ずかしい話じゃないから、良いわよね?

「……偏食というだけではない?」
私はレナード様のその問いに曖昧に微笑んだ。

「……それでもエリンは優しすぎる」

「そうでしょうか?私としては特別な事をしたつもりはありませんが……ハリソン様と少しお話してみたいと思ったのも事実です」

私がそう言うと、レナード様は青ざめて

「ま、まさか……兄上の方が……す、好き……とか?」
と声をを震わせた。


「そんなわけないじゃないですか」
ここはピシャリと否定する。私まで誤解されては困る。

「前にも言った様に、ハリソン様の気持ちが少しだけ分かるのです。私もコンプレックスの塊でしたから」

「だが……」

「ええ。もちろん今はレナード様のお陰で、そのコンプレックスから解き放たれました。私は私で良いのだと、貴方が教えてくれたのです」

私は膝の上で固く握られたレナード様の手をそっと包み込む様に握った。
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