婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第70話

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「ハリソン様にもそのようなお相手が見つかると良いなと、心から祈っているのです」
微笑んだ私に、

「……兄の方が俺より顔が良い」
とレナード様はポツリと言った。

はい?急に?確かにハリソン様もレナード様と同様美丈夫だ。線が細くて、少し顔色は悪いが。兄弟なのでそんなものだと思っていた。

「そんな事はありません」

「でも……」

どうも、ここにもコンプレックスを抱えた人が居たようだ。

「レナード様、貴方は辺境伯騎士団団長になる程の実力をお持ちなのですよ?誰とも比べる必要などない……」
と言う私の言葉に被せる様に、

「剣の腕には自信がある。だが……君の事に関しては……」

「私?どうして?」

「き、君の事が……す、好き過ぎて……自信が持てない。君にとっては、俺との結婚は……選択肢がなかったから……」

最後の方はどんどんと小さくなる声に従って顔もどんどんと下がっていく。

「好き……」

初めてきちんと言葉に出して言われた気がする。……嬉しくてニヤニヤしちゃうのを、なんとか我慢する。

「き、君が……俺をどう思っていても、離れる事は考えられない……」

「私もレナード様と離れるなんて考えた事もありません」

「じゃ、じゃあ……最近あまり夜……一緒に寝てくれないのは……」

「そ……それは……」

月のものが始まってしまった事もあるのだが、実はレナード様に内緒でハンカチに刺繍を施していたのだ。
私は決して器用なわけではない。今までも人一倍時間をかけて物事に取り組んでいただけだ。それがバレるのも嫌で、ついついレナード様には理由を言わず先に休んで欲しいとお願いしていたのだが、まさかそれを気にしていたとは。

「つ、月のものが始まったのはわかっている。だが、それでも別に一緒に休んでくれたって……」
拗ねた様に言うレナード様に、ここで隠し事は良くないだろう。

「レナード様、少しお待ちいただけますか?」
私は刺しかけのハンカチを取りに行く為に、立ち上がって、自分の部屋へと向かった。


「こちら……まだまだ途中なのですが……」
私は刺しかけのハンカチをレナード様へと差し出した。

「ハンカチ……刺繍していたのか?」

「はい。レナード様に贈りたくて。実は私……とても不器用で人一倍時間がかかるのです。なのでこっそりと夜に……」
そう言った私を見上げるレナード様の顔は先程と打って変わって明るくなっていた。

「俺に?」

「もちろん。他に誰に贈ると言うのですか。でも……レナード様はとても綺麗に刺繍されたハンカチをお持ちだったので、見劣りしてしまう事、間違いなしなのですが」
と私は苦笑した。

前にベンチの上にヒラリと広げてくれたハンカチを私は思い浮かべた。……お店で買ったものなのか、それとも誰かの贈り物なのか……とても見事な刺繍だったのを覚えている。
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