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第73話
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厩舎から、レナード様の馬……シドを出し、
「今日は一緒に乗っていくぞ」
と私を乗せた。
「いつか私もユラと遠乗りが出来る様になりますか?」
「フッ。気が早いな。気に入ったか?」
「はい、とても。レナード様ありがとうございました」
「礼を言うのはまだ早いかもしれないぞ?乗ってみなければな。それに俺の指導は厳しいかもしれんぞ?」
騎士団ではとても厳しいらしいのだが、私には優しい顔しか見せてくださらないので、どうしても厳しいレナード様を想像出来ない。
「頑張りますが、私は何事も不器用で……時間がかかっても見捨てないでくださいますか?」
そう言った私をレナード様は何故か後ろからギュッと抱きしめて
「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い過ぎて……どうしよう」
と呪文の様に呟いていた。
そうこうしている内に、私達は鬱蒼とした森の前に着いた。
「シド、お前は此処で待て」
そう言われたシドは鼻を鳴らして足元の草を食べ始めた。
レナード様は私の手を取り、森の方へと足を踏み入れた。
昼間だというのに、森の中は木々が日の光を遮る様に伸びている為、薄暗かった。
私は少し怖くなり、レナード様の手をギュッと握り締めた。レナード様もそれに答える様にキュッと改めて握り直してくれる。
随分と森の奥に入って来た。
「そろそろ良いだろう。きっと気づいてる筈だ」
そうレナード様は口に出すと、指笛を吹いた。
静かな森に甲高い音が響く。
すると、少し奥の低木の影からゆっくりと大きな獣がこちらに近づいて来た。
私は思わずレナード様の腕にしがみつく。
「……狼……?」
その獣は銀色の毛並みを持つ大きな狼だった。
狼はどんどんと近づいて来る。レナード様が驚く様子がないところを見ると、あの指笛はこの狼を呼ぶためだと分かる。
その狼は私達と少し距離を保ったまま、ピタリと止まる。
「こいつは我がクレイグ辺境伯領の守り神だ」
「守り神?」
「ああ。こいつの名はセル。セルの先祖がうちの先祖と共にこのクレイグ辺境伯領を攻めて来た蛮族を追い払ったと言われている。
代々、セルの血族がこの森を守っている。この森の奥にはクレイグ辺境伯の宝が眠っているんだ」
「宝……ですか」
「そうだ。その宝の在処は限られた者しか知らない。その上、このセルが守っているからな。おいそれとは近づけない」
「では……クレイグ辺境伯の家紋は……」
「このセルの先祖だ」
本でしか見る事のなかった狼だが……こんなに大きくて綺麗な獣なのだろうか?
綺麗な銀色の毛並みと金色の瞳は、この薄暗い森の中で神々しいまでに輝いていた。
「今日は一緒に乗っていくぞ」
と私を乗せた。
「いつか私もユラと遠乗りが出来る様になりますか?」
「フッ。気が早いな。気に入ったか?」
「はい、とても。レナード様ありがとうございました」
「礼を言うのはまだ早いかもしれないぞ?乗ってみなければな。それに俺の指導は厳しいかもしれんぞ?」
騎士団ではとても厳しいらしいのだが、私には優しい顔しか見せてくださらないので、どうしても厳しいレナード様を想像出来ない。
「頑張りますが、私は何事も不器用で……時間がかかっても見捨てないでくださいますか?」
そう言った私をレナード様は何故か後ろからギュッと抱きしめて
「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い過ぎて……どうしよう」
と呪文の様に呟いていた。
そうこうしている内に、私達は鬱蒼とした森の前に着いた。
「シド、お前は此処で待て」
そう言われたシドは鼻を鳴らして足元の草を食べ始めた。
レナード様は私の手を取り、森の方へと足を踏み入れた。
昼間だというのに、森の中は木々が日の光を遮る様に伸びている為、薄暗かった。
私は少し怖くなり、レナード様の手をギュッと握り締めた。レナード様もそれに答える様にキュッと改めて握り直してくれる。
随分と森の奥に入って来た。
「そろそろ良いだろう。きっと気づいてる筈だ」
そうレナード様は口に出すと、指笛を吹いた。
静かな森に甲高い音が響く。
すると、少し奥の低木の影からゆっくりと大きな獣がこちらに近づいて来た。
私は思わずレナード様の腕にしがみつく。
「……狼……?」
その獣は銀色の毛並みを持つ大きな狼だった。
狼はどんどんと近づいて来る。レナード様が驚く様子がないところを見ると、あの指笛はこの狼を呼ぶためだと分かる。
その狼は私達と少し距離を保ったまま、ピタリと止まる。
「こいつは我がクレイグ辺境伯領の守り神だ」
「守り神?」
「ああ。こいつの名はセル。セルの先祖がうちの先祖と共にこのクレイグ辺境伯領を攻めて来た蛮族を追い払ったと言われている。
代々、セルの血族がこの森を守っている。この森の奥にはクレイグ辺境伯の宝が眠っているんだ」
「宝……ですか」
「そうだ。その宝の在処は限られた者しか知らない。その上、このセルが守っているからな。おいそれとは近づけない」
「では……クレイグ辺境伯の家紋は……」
「このセルの先祖だ」
本でしか見る事のなかった狼だが……こんなに大きくて綺麗な獣なのだろうか?
綺麗な銀色の毛並みと金色の瞳は、この薄暗い森の中で神々しいまでに輝いていた。
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