お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

文字の大きさ
29 / 189

第29話

しおりを挟む
離れの改築を半年程かけてほぼ終えた。この出来栄えに私としては満足していた。

調度品等は、些か金額を押さえ込まれたので、ちょっぴり不満は残るが及第点と言えるだろう。

離れには、ソニアとムスカの部屋もある。私にとっては小さなお城だ。公爵様が引退して、私がそこに移り住む日を思うと少しワクワクした。

公爵夫人として忙しく働く毎日も悪くはないのだが、どうしてもギルバートや公爵様の目があると伸び伸び出来ない。

公爵様が引退すれば、ギルバートも一緒に領地へとくっついていくらしいと聞いたのは、そんなある日の事だった。


「奥様、紹介しておきます。私の倅のアーロンでございます。これからは私の後釜として育てていきますので、以後お見知り置きを」
とギルバートは1人の青年を連れて私の元へとやって来た。

「アーロン・ネメックです。まずは執事補佐として仕事を覚えていきたいと思います」
とアーロンと紹介された人物は私に頭を下げた。

「ギルバートのご子息?まぁ、はじめまして。私はステラよ。これからよろしく頼むわね」
と私は、ギルバートより頭1つ大きな青年を見上げてそう言った。

なかなかの好青年だ。ギルバートとは全く雰囲気が違う。彼とならギルバートよりは上手くやっていけそう。そう私は心の中で思っていた。


ギルバートの家族構成なんて聞いた事がなかった私は、2人が去った部屋でそっとソニアに尋ねた。

「ギルバートって……結婚していたのね」

「ええ。しかしずっと別居だって言ってましたよ。ギルバートさんは前公爵様の時代からずっと執事としてこの屋敷を切盛りしてきましたから。彼のご主人様への忠義は、そりゃぁもうご立派なもので」

「それは見ていれば分かるわ。でも息子さんってギルバートには似てないのね」

「私も小さな頃に1度見ただけですけど、あのアーロンさんは奥様似の様ですね」

「あの…って事は他にもお子さんが?」

「はい。確かアーロンさんは次男で、長男が……」

「じゃあ、その方は?」

「確か、王宮で文官をされてるんじゃなかったかと。お2人共、優秀だとご主人様から聞いた事がありますから」

ソニアに尋ねるまで、私ってばギルバート個人を知ろうともしていなかった事に自分でも驚いた。
ギルバートにはギルバートの人生があったんだな……と思う。当たり前の事だけど。
ソニアの事は色々と知っているつもりだ。
体の悪い両親を支えるに若い時から侍女として働いていた事も、そのせいで結婚のタイミングを逃した事も。
ムスカは自分の事を殆んど喋らないが、彼にも遠く離れた土地に両親が居て仕送りをしているという事ぐらいは知っている。

私って本当にギルバートに興味がなかったのね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

私、女王にならなくてもいいの?

gacchi(がっち)
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

処理中です...