お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第144話

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数日後、アルベルトの刑は強制労働に決まったと王宮から知らせが届いた。
処刑でなかった事にホッとしたが、闇オークションの黒幕逮捕に彼が協力したからと聞いて納得した。


「アイリスさん、領地に帰る事を納得してくれたのね」

「はい。アルベルトの話を聞いて考えたようです。王都に未練はありそうでしたが、アルベルトの件で自分が巻き込まれるかも……と思えば我が儘は言えなかったみたいです」
というアーロンは苦笑いだ。

だけど、私はそれだけでは無いのだと思っていた。
私とギルバートでアイリスさんにアルベルトの話をした時、アイリスさんは少しだが悲しそうな、寂しそうな顔をした。
アルベルトの気持ちがアイリスさんに少しでも伝わっていれば良いと思う。

ギルバートはアイリスさんを連れて領地へ戻ると言う。

夕食時に私はテオへと、

「貴方もアイリスさんを説得してくれたのでしょう?ありがとう」
と礼を言った。

「ステラ様にお礼を言われる事ではありませんよ。母を領地へ帰す事は私の案でもあるのですから」
と言ったテオに私は頷いてみせた。

あれから……テオはアイリスさんを『母』自分の事を『私』と呼ぶようになった。
彼が成長を形でも見せようとしている事に嬉しく思いながらも、どこか寂しく感じてしまう私は欲張りなのだろうか?

その数日後、ギルバートとアイリスさんが領地へと戻る日になった。

私の前に現れたアイリスさんの姿に私は驚いてしまった。
彼女が濃い灰色のワンピースを纏っていたからだ。
そんな私に彼女は、

「私、わかったの。私が地味な色のワンピースを着たところで、あなたに負ける訳ないって。あ、顔が地味なあなたは、もう少し綺麗な色のドレスを着た方が良いわよ。……ディーンの喪が明けたらね」
と淋しげに笑ってみせた。

「領地に公爵様のお墓を建てる予定です。貴女との想い出の詰まった場所を選んであげてくれませんか?」

「もちろんよ。あなたが割り込む事の出来ない2人だけの想い出の地でね。私がそれを守っていくわ」

「お願いしますね」

「そのお墓に例えディーンが眠っていなくても、私が居る場所が彼の眠る場所だもの」

「私もそう思います」

「………テオドールの事、よろしくお願いします」
と私に頭を下げたアイリスさんの顔は、間違いなく母親の顔だった。

「お任せ下さい」
と言う私にアイリスさんは、それは可愛らしい顔でニッコリと笑った。

ギルバートとアイリスさんが乗った馬車を私とテオで見送った。

「寂しい?」
と私が隣のテオに尋ねると、

「それはないです」
と彼は苦笑した。眼鏡で目元は見えないが、その顔はとても大人びて見えた。
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