15 / 95
第15話
しおりを挟む殿下とは距離を置くと決めた私は、なるべく殿下を目に入れないように努めます。
あんな提案さえなければ、今頃は殿下とキャハハ、ウフフの学園生活を送れていたかと思うと、ついついユリウスを恨みそうになりますが…殿下の恋を応援すると心に決めたのは、私。
我慢するしかありませんの。
今日は王太子妃教育もありませんし…そうだわ!グレイのお見舞いにでも行きましょうか。
私はそう決めて、授業が終わると直ぐにカバンを持ち教室を後にしました。
…なんだか後ろで「アナベル!」と殿下の声が聞こえた気がしますが、私の願望がそうさせたのでしょうか?きっと空耳ですわ。
私は公爵家の馬車まで足早に向かうと、行き先を御者に告げました。
私はアンダーソン伯爵家のタウンハウスに着いて、馬車を降りました。
先触れなどなく訪れるなど、無礼な事は百も承知なのです。しかし、ここに居るのは、いまはグレイと使用人だけで、その上、私がアンダーソン家をこうして、突撃するのは、なにも初めての事では御座いませんの。
メルが留学する1年前までは、本当によく訪れておりました。
グレイに会いに此処に来るのは初めてかもしれませんわね。
小さい頃は毎日のようにグレイで遊んで…いえ、グレイと遊んでおりましたの。
その時はお互い領地で過ごしておりましたし。ちなみにうちの領地とアンダーソン伯爵領とはお隣同士。
その上、お互いの母親が従姉妹同士という事もあり、うちとアンダーソン伯爵家はとっても仲良しです。もちろん、今でも。
しかし、私が王太子殿下の婚約者になった事で、王都のタウンハウスに越してきてからは、グレイとは領地に帰る時に顔を合わせる程度。
グレイの兄のメルヴィルは、私より4歳歳上なので、私が王都に越してから1年後に学園の入学に合わせて、アンダーソン伯爵のタウンハウスに越して来ました。それから、メルヴィルとは良く会っていましたが、1年前に、隣国に留学してしまったのです。丁度その頃グレイは学園に入学の為に王都へ越して来たのですが、その時には、メルヴィルの居ないこの屋敷からは足が遠退いていましたの。
グレイが私を毛嫌いしているのは、小さな頃から変わりませんから、私としてもグレイに気を使っていましたのよ?
今回は恋人になったのだから、こうして屋敷を訪ねるのも変ではないでしょうし…お見舞いも恋人としての立派な努め…ですわよね?
まぁ、きっとグレイは…喜ばないでしょうけど。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
1,769
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる