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第30話
しおりを挟む私は翌日、グレイと昼食を取っておりました。
「おい。あれ…見てみろよ」
そうグレイに言われ、視線の先を見てみると、
「…あれは…生徒会の方々だわ。殿下もいらっしゃるし…バジル男爵令嬢もいらっしゃるわね?」
「バジル男爵令嬢って…下位貴族だろ?この食堂使って良いのか?生徒会室がこの校舎にあるから、校舎と生徒会室への立ち入りは許可されているが、食堂の使用は…不味いだろ?」
「確かに…周りの皆様もざわついてるけど…殿下がいらっしゃるので、誰も咎める事が出来ないのね」
「それに…なんだか、生徒会の皆もあの女にちやほやしているな。なんだありゃ?」
…確かに。殿下だけではなく、皆様彼女のご機嫌をとっているように見えますわ。
彼女は、
「すごーい。向こうの校舎の食堂より豪華ね!いいなぁ~みんな、毎日こんな所でご飯が食べてるんでしょ?メリッサも、ここで毎日、食べた~い!」
と生徒会長のベルナール様にしなだれかかっております。ベルナール様は3年生。スペンサー侯爵のご長男です。
それを聞いてる周りの皆様の冷ややかな目。
生徒会の皆様は気づいていないのでしょうか?
一瞬、殿下と目が合った気がしましたが、私、きっと皆様と同じ様に冷ややかな目でバジル男爵令嬢を見ていたと思いましたので、直ぐ様、目をそらしました。
「どうした?」
「殿下がこちらを見てる様な気がして。今、私、凄い顔をしていたでしょう?」
「あぁ。確かに、あの女を見る目が冷たかったな。あの顔を見れば百年の恋も一時に冷めるな…いや、最初から恋をされてる訳じゃないか…失敬、失敬」
「グレイ。一言多いのよ。ねぇ、貴方が自分のした『おねしょ』を私のせいにした借りを忘れてないでしょうね?」
「お前はいつの話をしてるんだよ!それに、その後俺はお前に1週間おやつを譲っただろうが。それで借りは無しだ。そもそも、お前が俺と同じベッドで寝なきゃ良かっただろうが」
「はぁ?グレイが一緒に寝てくれって言ったんじゃない!」
「そもそもお前が怖い話を俺に聞かせるからだろうが!」
ついつい私達の声は大きくなっていたようだ。周りから、
「ねぇ、一緒に寝てるって聞こえなかった?」
「え?あの2人ってどんな関係?」
とヒソヒソと聞こえてきました。
私とグレイは一緒に頷くと、直ぐ様食堂を出て行きました。
「不味ったな」
「誰かに訊かれたら、子どもの頃の話だって言うわよ。でも…これで私も殿下に捨てられた可哀想な婚約者とは思われないわよね」
「まぁ…『殿下に捨てられたけど新しい男を作った尻軽女』にはなるかもだけどな」
「それでも良いわ。殿下が何の憂いもなく、恋人と楽しむ事が出来るなら」
「お前の愛情って…歪んでるな」
「そう?私は殿下が幸せならそれで良いの」
「俺にはわからん」
私とグレイは皆も集まる中庭のベンチに座りお話していました。もうコソコソと裏庭で会う必要はなくなりましたし。
でも、そんな私達をきつい眼差しで見ている者が居る事に、私達はその時は全く気づいていませんでした。
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