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第53話

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「私には殿下の怒った理由がさっぱりわからないの」

「いよいよ面白くなってきたな。さて…どこで殿下に自覚してもらうか…だが。難しいなぁ…効果的な場面があると良いんだが」

「ねぇ、私の話を聞いてた?
私が貸すって言ってた小説も置いて帰っちゃったのよ?
やっぱり殿下のお好みではなかったって事かしら?
でも、小説が好みではないからって…怒らなくても良いわよね?」

ここは食堂。ランチをグレイと共にしながら、昨日、殿下が帰ってしまわれた事について私は相談しておりました。

…グレイに相談なんて…世も末だわ…。屈辱。

でも、私には殿方の気持ちはわかりませんもの。仕方なくプライドをかなぐり捨てて相談していますのに、グレイはさっきから、訳のわからない事ばかりを言っています。役立たずだこと。

「ん?まぁ、聞いてる…ような聞いていないような?
とにかく!上手くいってるって事だよ。
お前はそのままで。殿下については、とことん鈍感でいろ。お前が考えても上手くはいかん。
あ、あと昨日怒った理由ならわかるぞ」

「なんだか聞き捨てならない言葉がたくさんあったような気がするんだけど。
でも、怒った理由がわかるんなら教えて欲しいわ」

「お前の貸そうとした小説の内容が気に入らなかったんだよ。お前がそれを読んでいる事もな」

「へ?やっぱり小説がお好みでは無かったって事?そんな事で怒るなんて、殿下って…そんなに心が狭かったのかしら?」

「恋をするとな、そんな寛容ではいられなくなるんだよ」

「恋なんて、したことないくせに、わかったような口を聞かないでよ。……でも殿下はやはり恋をしていらっしゃるのね…そうよね。私もそれを望んだんだもの」

「そう落ち込むなよ。殿下が恋をして青春を味わうのがお前の目的だろ?なら、良いじゃねーか。ま、まだ本人は自覚してねーだろうけど」

「そうね…バジル男爵令嬢と恋人になった…とは聞いていないもの。バジル男爵令嬢も他の生徒会の方々とも懇意にされているようだし…。やはり私、あの3人を闇に葬…」

「物騒な事は考えるなよ?それに生徒会の中で1番スペックが高いのは、間違いなく殿下だ。他の3人より、あの女も殿下を選ぶだろうよ。まぁ、あの女はアホみたいだから、それがどんな意味を持つかなんてわかっていなさそうだしな」

そう私とグレイが話し込んでいると、

「やぁ。僕達もここで昼食を一緒にしても良いかな?」

と殿下が、ギデオン様と、ダニエル様と共に私達のテーブルへやって来た。

あら…3人がご一緒なのは…久しぶりですわね?
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