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第72話
しおりを挟むたくさんの人の視線が私に刺さりますが…私?
ちょっと、バイオレット様の仰っている意味がわからず、私はキョトンとしてしまいました。
バイオレット様は続けて、
「わ、私達はアナベル様に言えと指示されたのです!」
と私に指を指したまま、今だ叫んでおります。すると、ナタリー様までが、
「そ、そうですわ。私達は言いたくて言った訳では御座いません!」
と同調すると、ナタリー様は、
「アナベル様、あの時サロンで私達にその様に仰いましたわよね?」
と私にまで同意を求めております。
…あの時サロンで?サロン…サロン。
……?!
もしや、3人に呼び出され、連れて行かれたあの時の事を仰っているのでしょうか?
あの時、確かに私は、バジル男爵令嬢に注意をしたいなら、身分的にも問題ないのだから、人を当てにせず、自分達で注意しろと…そう言いました。
しかし、それは私にさせようとするぐらいなら自分でしろと言っただけで、このような事を指示した覚えはありません。
ご自分達の分が悪いからと、人のせいにするなど…言語道断。
でも、あの時は他に証人もおりませんし、私が言った言葉を物凄く歪曲すれば、そのように受け取られても仕方ないのかもしれません。
まさか、この断罪劇の矛先が私に向くなど、考えた事もありませんでしたわ。
…このままですと…やっぱり私は国外追放?
私は何も言葉を発しないジェニファー様を見ましたが、彼女は私の視線から目を逸らすように俯きました…そうですか…助けては貰えない様ですわね。
私が反論を口にしようとした時、
「お前達!誰に物を言っているんだ?
アナベルがそんな事を指示する訳がないだろう?アナベルがメリッサにそんな事をする理由がない」
と、私の隣から少し前に出ていた殿下は、私を周りの視線から隠すように前に立ち塞がり、私を庇ってくださいました。
で、殿下…。私は今、感激してうち震えておりますわ!
すると、バイオレット様は、
「アナベル様は、ルシ…殿下がそのバジル男爵令嬢と仲良くしている事に嫉妬して、私達にそのような事を指示されたんです!理由なら、ちゃんとありますわ!」
と、何がなんでも私に罪を擦り付けたいようです…困りましたわ。
私は殿下の後ろで、考え込んでしまいました。これ以上殿下に迷惑をかけるわけにも参りません。
すると、殿下はまたもバイオレット様に向かって、
「それこそ、理由にならない!何故なら…何故なら…アナベルは、嫉妬したりなんか…しないからだ…」
殿下の声がだんだんと小さくなっていきました。
…殿下…どうなさったのでしょうか?
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