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その98
しおりを挟む「あぁ。それでもギリギリだったがな。
ドレスはまた、いくらでも作れば良い。今度はきちんと採寸させよう。
しかし、1か月後の御披露目用のドレスはまだなんだ。少し拘ってもらっているからな」
得意満面でクリス様は仰ってますけど、私が引っ掛かっているのはそこじゃない。
「いえ…あの、3か月前とは?それは、私達がベルガ王国へ到着した直後の事ではないですか?」
「そうだが?それがどうかしたか?」
「どうかしたかって…私と殿下の婚約のお話が出たのは、ここ最近であると認識していたのですが…どうして3か月前から?」
「その事か。それは俺が決めていたからだ。お前をあの国境の町で見た時に、俺の妃にすると」
…決めてたって?え?初対面で?
「でも、私と殿下は…あの時に初めてお会いしたんでしたよね?」
「あぁ。そうだが?でも、そんな事は関係ないだろう?あの時、俺にはわかったんだ。お前は俺の『番』だ。手離すつもりはない」
「『番』?」
…そう言えば、イヴァンカ様もフェルト宰相から『番』と言われたと言っていた。
まさか私がクリス様の『番』?
「そうだ。人間のお前には馴染みがない話だろうがな。俺達獣人には、稀に『番』を認める者が居る。
ただ、最近では滅多にそれを感じる者が存在しないだけだ。その本能はすでに殆ど失ってしまったものだと思われているからな」
確かに私達人間は、『番』と聞いてもピンとこない。
クリス様は続けて、
「俺の周りでも、そんな風に感じて結婚する者など、滅多にいない。極々稀だ。
だから俺も一生その感覚がわからないまま、誰かと結婚するものだと思っていたが。
まさか自分に番が現れるとはな。運が良い」
「運が良い?」
「あぁ。番を得た獣人はその力が何倍にも膨れ上がると聞いた事がある」
…なんだろう?『番』という者が存在する事は、話の中では知っていたし、獣人は番を見付けると狂おしい程にその存在を求めるものだとも聞いたことがあるが…私が人間でその感覚がわからないからだろうか、『私』だから結婚したいのではなく、『番』だから結婚したいと言われているようで、なんとなく複雑な心境になる。
私が捻くれ過ぎているのだろうか?
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