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31話
しおりを挟む「随分と雲が多くなって来ましたね。…ひと雨来そうです」
私が馬車の窓から空を見上げると、どんよりとした雨雲が空を覆い尽くそうとしているのが確認出来た。
「そうだな…。次の休憩地点はまだ先だよな」
ハヤトは私に頷くと、外を並走している護衛に声を掛ける。
休憩場所を確認しているようだ。
私は少し暗くなり始めた窓の外を眺めながら、今の自分達の状況を振り返る。
しかし…何故こんな事に…。
今、私とハヤトはセンターザルトへ向かうべく馬車の車中に向かい合って座っていた。
センターザルトの王太子殿下の結婚式に招かれたのは、各国の国王夫妻だったのだが…何故か直前になって我が国は両陛下共に体調を崩してしまったのだ。
もちろん命に別状はなかったのだが、長旅は難しいとの事で、代わりに私とハヤトが赴く事になったのだが…。
すでに王都を離れ2日が経っていた。
山道に差し掛かる前、少し山の方に雲が掛かっていたのが気になったが、護衛から、
『この山はそんな高くないので、直ぐに越える事が出来ます。
天気が崩れる前には山を越えた向こうの麓の町へ辿り着く予定ですから、さっさと進みましょう』と言われてしまったのだ。
そして今、山道を登っている最中に、悪い予感は的中。
雨雲が空を覆い尽くし、一気に周りは暗くなってしまった。
山道で元々太陽の光が届き難かった上にこの天気だ。外は夜のように暗い。
私が不安そうにしていると、ポツポツと馬車の窓を雨粒が叩き始めた。
「やっぱり、降ってきましたね」
私が溜め息交じりに言うと、
「このまま馬車を進めるのは危険じゃないか?」
とハヤトも不安そうに呟いた。
遠くでゴロゴロと雷の音がし始めた時、
馬車がゆっくりと止まった。
コンコンと馬車の扉を叩く音が聞こえる。
「殿下、申し訳ありません。雷の音を馬が怖がっておりまして。
このままですと、暴走する可能性がありますので、ここで一旦休憩をとりたいと思います。
通り雨の可能性が高いので、雨が止むのを待った方が良いと思いますので」
と護衛から声を掛けられた。
何もない、この暗い山道で私達は足止めを余儀なくされてしまった。
「なんか…ヤバい気がするな…」
ハヤトの呟いた一言は、私の胸を言葉に出来ない不安で一杯にするのに十分だった。
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