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43話
しおりを挟む「ねぇ、マイラさん。あいつの言う事が本当なら、あいつマイラさんに気があるみたいだけど、本当にここで暮らすの?」
とチアキが私の耳元で囁いた。
小声であっても目の前に居る殿下には聞こえたようだが、殿下は何かを言いかけて口を開いて、直ぐに閉じた。
さっきからチアキにはかなり酷く罵られている。
太刀打ち出来ないと感じたのだろう。
「若干、身の危険を感じない訳ではありませんが、いざとなれば、私の方が殿下よりも強いと思うので」
と私がチアキに答えれば、
「な、何を言ってるんだ!私は男だぞ!」
と殿下は私に反論した。
「殿下こそ何を仰っているのです?剣術の稽古も女の子と遊ぶ事にかまけて疎かにしていたのは何処の誰です?体術だってそう。
私、何度も妃陛下に『フェルナンドは頼りにならないわ。でも、貴女がフェルナンドを身を呈して守るの。それが王太子妃の役目の1つです』とコンコンと言われておりました。
自分を蔑ろにする夫を命懸けで守るなど、なんと理不尽なと思いましたので、私は剣術も体術も真剣にお稽古いたしましたわ。殿下に負ける気は毛頭ありません」
と私が言えば、殿下はまた口をパクパクさせた後、何も言えずに黙り込んだ。
チアキはおかしそうに笑いながら、
「なら安心した。とにかく!マイラさんには明日、私と同じバイトを紹介するね。お兄ちゃんは…ってかこの男にバイト出来るとは思えないけど、大学には行って貰わないと困るのよ」
と殿下を見た。
殿下は、
「わかってる!さっきも聞いた。その大学とやらに行けば良いんだろ?」
と不貞腐れ気味に言った。
「この3日が土日挟んでて良かったよ。結局1日休んだだけだし。
お兄ちゃんのバイト先には私から辞めるって連絡しとく。
大学でお兄ちゃんの友達が話しかけてくると思うけど、体調悪いって言ってなるべく避けてよね。
お兄ちゃんが変な奴だって思われたくないから」
とチアキは殿下に釘を刺した。
私の言葉遣いも、殿下の言葉遣いも、ここでは変なのだそうだ。
確かにチアキのそれとは違う事ぐらい私にも分かっている。
チアキはそれから食料と飲み物を大量に買って来てくれて、殿下にはパソコンとやらの使い方をレクチャーしていた。
私はさっき教わったスマホの電源を入れる。
充電とやらが切れていたので、使えなかったのだそうだ。
テレビという物も教えて貰った。
この世界は魔法で溢れているようだ。いや…ハヤトは言っていた。それは科学だと。
便利な物がたくさんあるが、使い方が分からなければ無用の長物。
私はチアキにしつこい程に使い方を教えて貰うのだった。
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