理想のオトコ、飼ってます。

初瀬 叶

文字の大きさ
18 / 22

私の気持ち

しおりを挟む
あれから、なんとなくぎこちないまま、1週間が過ぎた。
最近、
千秋くんの笑顔が硬い。

あの男の事も聞いて来ないから、私から話をするつもりもなく…そのタイミングも失ってしまった。

喧嘩をしてるわけじゃないから、仲直りするって事も出来ない。

なんとなく、千秋くんに避けられてる気もする。

今日は私の仕事が休みだったし、千秋くんを職場に送るつもりだったけど、断られた。


仕事に行く千秋くんを見送った後、掃除と洗濯をする。

今日の夕飯は何にしようかな?

時間もあるし、千秋くんが好きなちらし寿司を作ろう!
そう思って私は買い物に行く事にした。

スーパーで買い物をしていると、ふと、前から歩いてくる2人が目に入る…

不倫野郎の長野さんと、女性が2人仲良く買い物をしていた。

私は咄嗟に商品の棚で向こうから見えない場所へ移動する。

……あの女性が誰なのか、1ミクロンも興味はない。
別居中だと噂の奥様なのか、はたまた別の女性なのか。

ただ、どちらにしろ私にやり直したいと言った言葉は嘘だということがはっきりした。

やっぱり、クソはクソだ。

あいつのせいで、こっちは千秋くんとギクシャクしてるんだ!

なんか、猛烈に腹が立ってきた。
文句の1つも言ってやりたいが、嫉妬してるとか、未練があるとか勘違いされるのも面倒なので、私はその場をそっと離れた。


3年前の私に聞きたい。どうしてあんな男が良いと思ったのか。
冷静になれば、あの男が口先だけだと気付けただろうに。
恋は盲目とは良く言ったものだ。


私はそのまま買い物を済ませ、スーパーを出る。

家について、夕飯の準備の前に、洗濯物を取り込んで畳む。

もちろん、そこには千秋くんの服も下着もある。

ふと気がついて、部屋を見回すと、千秋くんの物が増えている事に気がついた。

千秋くんの洋服。
千秋くんのお茶碗。
千秋くんのマグカップ。
千秋くんのスリッパ。
千秋くんが使う、筋トレグッズ。

こうやって、いつの間にか私の日常に千秋くんが、がっつり入り込んでいる。

きっと、この部分を含めて、今の私の生活なんだろう。

これを私は手放せる?
千秋くんが居ない生活、考えられる?
千秋くんに出会う前の独りの生活に戻れる?
答えはNOだ。

だって、私はもう千秋くんが好きだから。

こうやって、ギクシャクしてると、気疲れもするし、独りの方が楽かな?って思う事もある。
でも、それは誰しもあるだろう。

毎日、なんの問題もなくhappyなんて事は有り得ない。

私はもう一緒に居る幸せを知ってしまった。
千秋くんと離れる事はもう無理だ。


今日は、きちんと話そう。
千秋くんの気持ちを、そして私の気持ちを。
曖昧な関係は曖昧でしかなくて、やっぱり不安だ。

そう決めたら、心が軽くなった。

どんな結末になるかわからないが、自分に正直になろう。



私は夕飯の準備に取りかかる。
千秋くん、喜んでくれるかな?そう思うとちょっとニヤける。

時計を見ると、就業時間を少し過ぎてるようだ。
残業かな?って思っていたら、『帰るね』のメールが届く。

私は夕飯を食卓に準備する。

きっと、あと10分もすれば帰ってくるだろうから、お吸い物を温めるのは、もう少し後でいいかな?なんて考える。
そんな瞬間も、幸せだなって思えた。

千秋くんに、自分の気持ちを伝えたい。
そう思うと、帰りが待ち遠しい。


20分経っても、まだ帰って来ない。
コンビニでも寄ってるのかな?
でも、それなら連絡くれるだろうし。

自転車に乗ってるだろうから、電話するのも気が引ける。

…何かあったのかな?心配になってきた時に、私のスマホに知らない番号から着信が入る。




…事故?誰が?千秋くんが?病院?何で?どうして?
私はパニックになる。

とりあえず、病院の名前をメモするが手が震えて、上手く書けない。

すぐに行く事を伝え、電話を切る。

私は目の前が真っ暗になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

【完結】運命の人に出逢うまで

青井 海
恋愛
そろそろ結婚したい私。 付き合って7年になる彼は、結婚願望ゼロだった。 幸せな結婚をしたい私が奮闘する物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王女を好きだと思ったら

夏笆(なつは)
恋愛
 「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。  デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。 「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」   エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。  だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。 「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」  ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。  ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。  と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。 「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」  そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。 小説家になろうにも、掲載しています。  

誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ジュゼットは、兄から父が背負った借金の金額を聞いて絶望した。 しかも返済期日が迫っており、家族全員が危険な仕事や売られることを覚悟しなければならない。 そんな時、借金を払う代わりに仕事を依頼したいと声をかけられた。 ジュゼットは自分と家族の将来のためにその依頼を受けたが、当然口外できないようなことだった。 その仕事を終えて実家に帰るジュゼットは、もう幸せな結婚は望めないために一人で生きていく決心をしていたけれど求婚してくれる人がいたというお話です。

侯爵様、その溺愛は違います!

みおな
恋愛
 私、レティシア・ダイアンサス伯爵令嬢は現在岐路に立たされている。  何故か、王太子殿下から執着され、婚約の打診を受けそうになる。  ちなみに家族は、私よりも妹が相応しいと言ってはいるし、私的には喜んで譲ってあげたい。  が!どうにも婚約は避けられなさそうだし、婚約者のチェンジも無理の様子。  そこで私は、苦肉の策に出ることになる。

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

処理中です...